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記事「ジャ・モラントの18ヶ月間の転落」まとめ

ESPNのバクスター・ホームズがインスタで銃のようなものを振り回して25試合出場停止処分を受けたジャ・モラントの素行を追った記事を出しました。これまでワシントンポストやニューヨークポストのモラントの一連の暴行事件容疑や銃を記事を取り上げて来た弊サイトとしても、これを見逃すわけにはいきません。モラント復帰直前に暗い話で申し訳ありませんが、興味のある方はご覧ください。

チームソースは「彼は最初のオールスターゲームに行った。そしてそれから強欲が彼を支配した」と言った。

グリズリーズまわりの複数のソースは、モラントが2022年に初のオールスター選出された後、素行悪化の兆しが現れはじめ、それが常習的になると心配していたそうです。その数は報道されているだけでも10ヶ月で7回で、その中には警察沙汰や裁判沙汰になったものもあります。

何があったかはワシントンポスト紙の取材まとめ記事をご覧ください。こちらもかなりの取材をして被害者が実名でインタビューを受けたりしています。

ただ、モラントがNBA入りした時は、誰も彼がそんな風になるとは思っていなかったようです。

NBA入りしたモラント

モラントが4年前の2019年で2位指名でNBA入りした時、誰も彼がこのような問題児になるとは思っていなかったそうです。その年のロッタリーチームのスカウトでモラントをスカウティングしたベテランスカウトも、モラントの素行不良は「ゼロ」で、完全にコーチャブルなチームメイトで無邪気だったと言っています。またあるベテランスカウトもモラントの事を隅々まで調査したそうですが、彼の事を悪く言う人いなかったと言っています。「良いファミリーだ。ワークエシックがあり、謙虚だ。すべての条件をクリアしていた」。

高校と大学のコーチも、モラントは酒のタバコも吸わず、オフコートで何も問題を起こさなかったそうです。チームまわりもワークエシックとウェイトルームとフィルムのコミットメントで評価されていて、リーダーで、ジムラットで、名声にも動じないと言われていたそうです。

モラントと良く関わりがあるメンフィスのビジネスオーナーも、モラントはハンブルで、話しやすく、常識的で度を越さないと評しています。他のモラントと良く会うメンフィスのビジネスパーソンも、彼はとても謙虚で礼儀正しく、「もしよければあそこのテーブルを使っていいですか?」と聞くような感じだったそうです。

ところが、パンデミックで短縮したルーキーシーズンはじめに問題を起こし始める前兆があったようです。当時モラントは未成年だったにも関わらず、試合前の夜でも父と一緒にあまり評判が良くない店やストリップクラブに飲みに行くようになりました。本来ならば父がコート上でのパフォーマンスを落とすであろう息子の夜遊びを止めなければいけませんが、父も一緒になって遊んでいたようでは問題が悪化するのもうなづけます。

そして2021-22シーズン(オールスターに選出されたシーズン)になると、グリズリーズが試合のために他の街に移動すると、モラントのバンがいつもチームホテルでモラントの事を待っていて、プライベートジェットで連れてきた友人と家族と一緒に出かけていくようになったそうです。チームソースによると、それが常習的になり、モラントが二日酔いで現れる事も、翌日のチームイベントに遅刻する事も珍しい事ではなくなったとの事。グリズリーズのソースによると、チームはモラントに対して規律がなく、彼はやりたいことはなんでもできると思っていて、「私の意見では、特別扱いは制御不能だった。常にそうだった。まちがいなくそれは見て見ぬ振りをされた」と話しています。

それでもモラントはコート上では38勝だったチームを56勝へと導き、毎晩と言っていいほどソーシャルメディアを沸かすようなアクロバティックなダンクを決め、モラントは初のオールスターに選ばれました。グリズリーズとしては史上2人目のスターターの快挙でした。そしてモラントはシーズン終了後にMIPを受賞しました。

MIP受賞2週間後、モラントは5年$194Mのスーパーマックス契約延長にサイン。

そのあたりでメンフィスの中に、モラントが変わった事に気付いた人たちがいました。モラントが良く行く店のオーナーは、「彼は尊敬するナイスガイから、いつも誰かにつっかかる子供のようになった」と話しています。「スタッフや警備員を自分の思い通りにしたがった。やり過ぎだ。いろいろあって全部は言えないが、ただ態度が悪化したんだ。まず、彼は親友と一緒に来ると言っていた。そうしたら、彼はアントラージュと来はじめた。気づいたら、彼は口にプラチナのグリルをつけていた。次に、彼は自分が好きな場所に車を停めさせてくれないと駐車場の警備員につっかった」

また別のビジネスオーナーは、想像できるほぼすべてのNBAの有名選手を迎えるような店を持っていますが、モラントと彼のアントラージュの態度がすごく悪いので、スタッフがはじめてモラントたちが店に来るのを「嫌った」と明かしています。その店のオーナーは、モラントと彼の取り巻きが自分の共同経営者と口論になり、その経営者の妻を侮辱したため、お互いの命を脅迫しはじめるくらいに状況が悪化したのを見たと言っています。

団は何をしたのか

モラントがスーパーマックス契約延長にサインしてから素行悪化が加速して行きます。前述したようないざこざはまだ小さなもので、中には全国紙で取り上げられた事件も出てきました。

  • 警備員脅迫容疑:モールの警備員を脅迫した容疑→店員脅迫容疑も追加。

  • 少年暴行容疑:ピックアップ中に友人と一緒に少年を殴る。訴えられ裁判に。

  • 高校生脅迫容疑:妹の通っている高校生に家族と仲間で詰め寄り、仲間が高校生を脅迫。

これらの素行問題に関しては、グリズリーズはモラントに厳しく言えなかったそうです。モラントはオールNBAレベルでプレーしていますし、チームも勝っていました。モラントの事をメンフィスのエルビス以来のビッグスターだと言う人もいるくらいです。スモールマーケットのグリズリーズがそんなスーパースターと摩擦を起こしたくないのも理解できます。

しかし、このままでは問題解決になりません。モラントは反面教師としてスティーヴ・フランシスとアレン・アイヴァーソンの話を聞かされましたが、そのメッセージはモラントには届かなかったそうです。

そんな中、ペイサーズとモラントの友人のデヴォンテ・パックが試合中と試合後にもめて、モラントと一緒にモラントの送迎車から銃でペイサーズを狙った疑惑があがり、NBAが調査した事もありました。何があったかこちらでまとめていますので、詳細はこちらからお願いします。結局はモラントの乗っていた車に車内カメラなどなく、証拠不十分として罰則は何もありませんでした。

グリズリーズはこのままではいけないと思ったのか、GMのザック・クレイマンはようやくモラントと話をする事にしました。ペイサーズ事件の数日後、グリズリーズのGMのザック・クレイマンとヘッドコーチのタイラー・ジェンキンスはホテルでジャ・モラントとミーティングをしたそうです。そのミーティングで、グリズリーズのふたりはモラントに、彼の行動をすごく心配していると伝えました。そして、それがどうチームに影響を与えたか、モラントがどうチームを導いていけばいいのかなどを話したそうです。しかし、当時その23歳の彼はGMとヘッドコーチの言葉に興味を示さずに無関心だったようです。そのスーパースターは自分の行動の間違いを認めようとせず、ミーティングははじまった時と同じように居心地が悪いもので終わってしまったそうです。

モラントのエージェントは、モラントとグリズリーズはその年を通していくつかミーティングをしたと明かしましたが、グリズリーズに対してモラントが否定的だったというレポートは正しくないと反論しています。

そのミーティングの時のモラントの反応から、球団はそれが続くだけではなく、悪化していくと思ったそうです。

チームソース:「スーパースターを持てば、悪魔との契約だ。それにサインしたら、すべてがついて来る」

銃問題と出場停止処分

そのミーティングの数週間後、モラントがインスタライブで銃らしきものを見せて大問題になりました。

その日の2日前、グリズリーズはヒューストンからデンバーに移動しました。モラントはデンバーに着いた後に、例によって友人と一緒に遊びに出かけました。ふたりの護衛も一緒だったそうです。クラブに着いた時刻は3/1の1:30amだったそうです。そして、3/3にナゲッツに負けた後、モラントはまたそのクラブに行きました。そこで何があったかはわかりませんが、札束が床が見えないほど部屋中にばらまかれていて、ストリッパーがモラントにまたがっている写真が流出しています。そして、3:19amにインスタライブをはじめ、明らかに銃とみえるものを振り回し、7amには大きな問題になっていました。モラントはエージェントとどうやってその危機を乗り切るかを電話で相談したそうです。

その数時間後、モラントはSNSアカウントを停止し、声明でチーム、コミュニティー、ファンたちへ謝罪をし、チームと一緒にロスへは行かずに、フロリダのカウンセリング施設に向かい、そこで11日間過ごしました。NBAは8試合の出場停止処分を発表しましたが、その時点でモラントは6試合をすでに欠場していたので実質2試合の軽い出場停止処分になります。グリズリーズは、モラントがチームから離れている間は出場停止処分を課したとは言っていませんでした。相変わらず、まだチームはモラントに気を使っているのがわかります。

モラントはこの10週間後、また同じ問題を起こしました。モラントは友人のパックのインスタライブでまた銃のようなものをもってライブストリーミングしてしまいました。GMとのミーティングで話の内容に無関心だったというのが思い起こされます。何の反省もしていません。

これでモラントが起こした騒動は3ヶ月で2回、10ヶ月で7回になります。グリズリーズはモラントの無期限の活動停止処分を発表し、NBAはモラントに25試合の出場停止処分を課します。これでモラントはサラリーから$7.7Mを失う事になりました。

そして、そのようになったのはいつも一緒にいる父親の教育のせいだとも言われ始めました。息子といっしょになってクラブで遊んでいたようなので、批判を受けるのは仕方ありません。この記事によると、「ティーは息子が指名された1週間後にメンフィスに引っ越し、息子のスーパースターの座に上り詰めた戦利品を楽しんだ。クラブでVIPイベントやパーティーを開いたり。チームソースによると、ティーの存在と相次ぐ問題が球団内の人たちを失望させた」そうです。

また、ジャとティーが行っていた店のオーナーは、ティーに「良く聞くんだ、私は長い事見てきている。私は(人生の)サイクルを見てきている。だから彼が口にそれらのシット(グリルの事)をはめて、首のまわりにガッデムなチェインをつけて、ラッパーになりたがりはじめた時、私は彼の父に、『あなたの息子はバスケットボール・プレーヤーよりもラッパーになりたがっている。これはひどい事になる』と言った」と忠告しましたが、それも無視されたそうです。

チームソース:「ティーはこのすべての中心的な原動力だ。彼はNBAに行けなかったが、これは彼がNBAスーパースターのように生きられるチャンスだった。はじめからそれが問題だった」

(ティー・モラントとアッシャー)

このように、球団内からモランントの父の名前が出てくるという事は、意外とモラントの父に不満を持っている人たちがいたという事でしょう。または、こう言った内容を書いてもらって、ティーの動きを牽制する目的もあるのかもしれません。いずれにせよ、今までリークがなかった球団から、このようなモラントのネガな事が出てくると言う事は、実は球団内にかなりの不満が溜まっていたと言っていいでしょう。

先日、出場停止処分を受けてからはじめてメディアの前に出てきたモラントは、これまでの事を振り返って、「私は自分の行動以外で誰も私を信じてくれない。だから私はその質問に言葉で答えても、おそらく誰にとっても意味をなさない」と話しています。こういう場での発言はPRチームが動いているので、どこまで本当なのかはわかりませんが、本当に行動で変わった事を見せる必要があります。ロードでの夜遊びも、店員やサービスに携わる人への高圧的な態度も、銃で遊ぶ事もやめる事ができるのでしょうか。

現在(12/18)グリズリーズは6勝18敗で、プレーインまで7ゲーム差です。ESPNのBPIでは、グリズリーズがプレーオフに行ける確率は0%です。はたしてモラントはグリズリーズをプレーオフまで導く事ができるのでしょうか。




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