クレイ・ワールド
昨シーズンのNBAになかったものがひとつあります。それはクレイ・トンプソンです。そんな訳で、The Athelticが12人のクレイのチームメート、元チームメート、コーチたちを集めて、彼らにクレイのエピソードを話してもらいました。仲良しのザザをはじめ、デヴィット・ウェストやマット・バーンズ、懐かしのマリース・スペイツやジェームズ・マイケル・マカドゥーらもクレイの話をしてくれています!あまりNBA選手が積極的に他の選手のおもしろエピソードを話すこともないので、その記事を訳しました。お楽しみください!
アンドリュー・ボーガットのクレイのエピソードを最後に加筆しています(2022, 1/11)
マット・バーンズ:ウェスタン・コンファレンス・ファイナルズで勝った後、みんなは話をしたり、食べたり飲んだりしてすごく楽しんでた。クレイはといえば、彼のロッカーで2人の9歳の子供たちに紙飛行機の作り方を教えていて、それをロッカールームで飛ばしていた。
ジャレット・ジャック:(そんなことができるのは)クレイだけだ。クレイだけだ。
スティーブ・カー:コーチに就任していちばん最初にしたことは、全員の選手に電話をしたことだった。でもクレイは私の電話に出てくれなかった。だから、ボブ(マイヤーズ)に電話して、「ボブ、クレイのことが本当に心配だ。コーチを変えたことに怒っているのかもしれない。彼は電話をかけなおしてくれないんだ」と相談したんだ。そしたらボブは笑いはじめた。彼はただ「クレイの世界へようこそ」 と言った。
マリース・スペイツ:私たちがロードトリップで街に行くと、外に1000人がいるにもかかわらず、彼はバスから降りてCVCやWalgreens(ドラッグストア)に行ってしまうんだ。
バーンズ:それがクレイの予測不可能なところだ。
ラクラン・ペンフォールド(フィジカル・パフォーマンスのトップ):彼がやりたいのは、バスケをシュートして、犬といっしょに遊ぶことだけだった。
スペイツ:彼はいつも自分の犬のことを話していた。それかバハマのことかな。
ジェリー・デグレゴリオ(アシスタントコーチ):彼を知ることは不可能で、彼を愛さないのも不可能だ。
フェスタス・エジリ:なぜならクレイはすごく、すごく… ピュアだからだ。
バーンズ:クレイはただクレイでいるだけだ。彼はまるで国宝のようだ。
ジェームズ・マイケル・マカドゥー:ショーン・リヴィングストンがいつも言っていた。「変わらないでくれ、クレイ」
ジャック:私たちがアトランタのナイトクラブに行った時のことだ。私たちはみんなクラブにいて、クレイにテキストを送った。そしたら彼は「みんなどこにいるの?」って感じだった。私は「Yo、私たちはもうクラブにいる」と言った。彼は「クール。もうすぐそっちへ向かうよ」と返してきた。それからしばらくしてクレイが来たんだけど、彼はひとりでやって来たんだ。だから私は「Yo、man、どうやってここまで来たんだ?」と聞くと、彼は「Yeah、man、バーにいたら、これからどこに行くのか聞かれたんだ。彼らも同じ場所に行くところだって言ったから、shit、私は彼らと一緒にタクシーを拾って割り勘したんだ」と言ったんだ。だから私は「彼らって誰のことだ?」と聞くと、彼は 「あっちにいるカップルのことだ」 って感じだった。彼らとは結婚している中年の白人夫婦のようだった。
スペイツ:ある遠征で私たちはマイアミにいたんだ。みんなでディナーに行って、それからみんなバラけだんだ。私たちは皆ホテルに戻ったんだけど、どうやってかクレイは自分の部屋にたんだ。彼が部屋から出てくると、目全体にアザができていた。だから私たちは「クレイ、何があったんだ?戻ったばかりだろ、なんでそうなるんだ?」と聞いた。
エジリ:彼は時々すこし間抜けになる。
スペイツ:私たちは彼を見て、「クレイ、何があったんだ? 誰かに殴られたのか?」と聞いたら、彼は「ちがうんだ、ドレッサーにつまずいて頭をぶつけちゃったんだ」と言った。
エジリ:変わらないのには良いことも悪いこともある。
バーンズ:彼はありのままの自分でいるんだ
マイク・ブラウン(アシスタントコーチ):すぐそこにあるThe Rampっていう水辺のレストランのマネージャーを知っているんだけど、クレイと話していたら、「マイク、ボートが停められる場所を知らないか?」って聞いてきたんだ。私が「The Rampのマネージャーを知ってる」って言ったら、彼は私にレストランと繋げられるか頼んできた。私は 「もちろんだ」 と言ったけど、まだ頼んでいる最中だった。
ベンジャミン・ギラー(The Rampのゼネラルマネージャー):クレイはちょっとコソコソしていた。彼はこんなに背が高くて、すごいアスレチックだ。彼はただ歩き回っていて、私たちは 「クレイ?」と聞いたら、彼は「ああ、そうだよ。僕だよ」と言った。彼は「場所を借りることについては誰と話せばいいですか? ここからゲームに行けるようになると嬉しいんだ」と言った。
ブラウン:次の練習で、クレイがやって来て「ヘイ、マイク、ありがとう!」と言ってきたから、私は「何のことだ?」と聞いた。彼は「Yeah、Yeah、ボートをそこに停めてきた」と言った。彼は無断でボートをそこに停めてきたんだ。
ジェイソン・トンプソン:私はクレイと一緒にサンノゼに行くことになっていた。私はそこまで一緒に車で行くのか、それぞれの車で付いて行くのかわからなかった。彼は「いや、あなたがどこにいるか教えてくれ。迎えに行くから一緒に行こう」と言った。それからしばらくして、彼は「Yo、着いたよ」と言った。私はその時バレットパーキングのついているマンションに住んでたんだけど、クルマがなかったんだ。だから、私は「Yo、どこにいるんだ?」と聞いた。この時、彼は2度目の契約にサインしたばかりだったと思う。私は彼がどんなクルマを運転しているのか知らなかった。彼は「Yo、ブロ、私は運転して来てないんだ、私はUberに乗っている」と言ったんだ。だから私は黒の車を探したんだけど見つからなかった。その先にプリウスが停まっていたのが見えた。私は 「それはたぶん近所の人のクルマだろう」 と思ったんだけど、彼がプリウスから頭を出して、「Yo、ブロ、行くか?」って言ったんだ。
スペイツ:彼はUber Blackとか、そんなことは気にしない。
ネイト・ロビンソン:私はクレイとブランドン・ラッシュと一緒にいたある時、私たち全員がテレパシーをしたように感じたことがある。クラブにいたんだけど、そこはとてもうるさかったので、私はクレイを見て、それからブランドン・ラッシュを見た。その時、話をしなくてもお互いの考えがわかったんだ。クラブはとても暑かった。私はクレイを見て、彼は私を見て、私たちは立ち上がった。「Aight (OK)」。私たちは立ち上がって外に出た。私たちはみんな意識が繋がっていたのを感じた。
クリス・デマーコ (アシスタントコーチ):私たちはロードで練習をして、ホテルに戻った。ニューヨークだったので彼は街を歩いて、何か食べるものを買いたいがっていた。ランチを食べに行った帰り、すれ違った記者に呼び止められて、工事の足場についてインタビューをしてもいいか聞かれたんだ。私が「いいえ、私たちはここに住んでいない」と言っている途中で、クレイは 「はい」 と答えていた。
ケヴォン・ルーニー:彼はまるで地元の市民かのようにインタビューを受けた。
デマーコ:彼はただそこに座って、それについて思慮深く答えていた。
デヴィット・ウェスト:60点をとった夜、クレイはシュートアラウンドに来なかった。
マカドゥー:寝坊だ。
ウェスト:彼はその試合の前、たった5つの言葉くらいしか発しなかった。そして出場して、シュートして、ドリブルをしなかった。
スコット・マチャド:彼ドリブルを14回しただけで60点とった。
デグレゴリオ:彼はその試合で、ボールを手にしたのが合計で90秒だった。
ウェスト:それが一番クレイジーだった。彼がしたことは、ボールをキャッチしてシュートするだけだった。彼はなんの動きもしなかった。
マカドゥー:それはショーンが言っていた「変わらないでくれ、クレイ」的な瞬間のひとつだった。
ペンフォールド:彼は何に気にしない。バスケと彼の犬以外のことは。基本的にはね。
エジリ:クレイとロッコ。ワオ。
マカドゥー:ロッコはいつも彼と一緒だった。
エジリ:私がドラフトされてクレイと遊びはじめた頃、彼はちょうどロッコを飼いだした時だった。彼はいつも犬と一緒にいたがった。彼は人と遊ぶのすらあまり好きではなかった。私が「何してる?」と聞くと、彼は 「ロッコといっしょだ」 と答えるんだ。私は犬に会うまで、ロッコっていうのは人の名前だと思っていた。私は「マジか?」って思った。
マカドゥー:彼は「ロッコをビーチに連れて行って走りまわらせた」って言うんだ。私にはラブラドールがいるので、彼がそう言うのがおかしかった。ロッコはラブラドールじゃなくてブルドッグだ。彼はぜんぜんビーチ犬じゃない。それでも彼はまだロッコを(ビーチへ)連れて行くだろう。
デグレゴリオ:彼らがクレイの最初の契約を交渉していた時のことだ。その交渉の途中で、クレイは帰らなくちゃいけないと言い出したんだ。クレイは「みんな、私は今から家に帰らなくちゃいけない。家に帰って犬にエサをやらなくちゃいけない」と言ったんだ。
ルーニー:プレーオフ中のことだ。カンファレンス・ファイナルズに行く前のシリーズだったと思う。ロッコがロッカールームに入ってきたんだ。ロッコはみんながシャワーを浴びている時にシャワールームに入ってきて、ただ歩き回っていた。
マカドゥー:ロッコが練習場にやって来る理由は何もなかった。
ルーニー:私は「プレイオフ中にロッカールームに犬を入れて、歩き回らせて、リラックスさせて、シャワーの中を歩き回ったりさせるのか?」と思った。(アンダーソン)ヴァレジャオが私に「ヘイ、NBAでこんなことはどこにも起こらない。クレイだけだ」と言ったのを覚えている。
チャールズ・ジェンキンス:クレイはただランダムにフォロースルーするんだ。私が彼の家でビデオゲームをしたり、遊んだり、音楽を聴いたりしていていると、彼はランダムにボールなしのシュートをするんだ。
スペイツ:彼が大成功しているのには理由があるんだね。
ジェンキンス:ある時、ナイトクラブの外で中に入れてくれる人を待っていたんだけど、クレイはそこでフォームシューティングをしていたんだ。
デグレゴリオ:クレイのルーキーシーズンのある試合で、モンタ・エリスはクレイがスリーを撃ち過ぎていたと思ったことがあったんだ。モンタがタイムアウト中にそのルーキーを激しく非難したのを覚えている。「お前はシュートを撃ち過ぎだ。ボールをパスしろ。お前はただのルーキーだ」って感じだった。私はクレイをずっと見ていたが、彼は怯んでいなかった。彼は全然ためらわなかった。その次のオフェンシブ・ポゼッションで、ボールがクレイまでまわって行ったんだ。そして彼はスリーを決めた。私は「この子は冷酷な殺し屋だ」と思った。
エジリ:ある試合で、残り15秒くらいで3点勝っていた時だったと思う。その時、誰かがクレイにボールをパスしたんだ。この時点では、ボールをキープするだけだよね?でもクレイは、ボールが手に触れるとすぐにシュートしたんだ。それが決まったかどうかは覚えていないけど、その後クレイがドレイモンドと話していたことは覚えている。ドレイモンドは「Yo、何してんだよ、なぜシュートしたんだ?」と言っていた。クレイは「Dog、彼らは私のシュートにお金を払っている」と返した。
デグレゴリオ:インターンがクレイのことをデクスターと呼んでいたのを覚えている。連続殺人犯の。彼が動じることはない。
エジリ:そのシーズンの最初の10試合、クレイは苦しんでいた。シュートを海にも入れることができない程にだ。シュートがすごく悪かった試合があったんだけど、その試合が終わった後、クレイはすごく怒ってアリーナから出て行ったんだ。
ジャック:私はたいていロッカールームから出る最後のひとりなんだけど、ふと見ると、クレイの服がまだロッカーにかかったままだったんだ。
ジェンキンス:ちょうど「クレイが帰って行った」と聞いて、「どうやって?」と思った。コーチが来る前には出て行っていたと思う。
ジャック:次の日、私がアリーナに行った時に、チームの備品担当者と話したんだ。彼は「信じられないことがあったんだ。私があなたにクレイがどこにいるかとか、ユニフォームのことを聞いた時のことを覚えているか?それがどうやらクレイは怒りすぎてしまって、なんとジャージーを着たまま家に帰ったみたいなんだ」と言うんだ。
エジリ:ジャージーや他のすべてを着たままね。
ジャック:で、知っておいて欲しいんだけど、それはクレイがまだ入ったばかりの時のことだった。その時は同じビルにたくさんの連中が住んでたんだ。私は彼らに「みんな、家に帰った時に、クレイを見たか?」と聞くと、彼らは「Man、クレイはゲームで着たジャージー、ゲームのショーツ、ゲームシューズのままエレベーターに乗っていたよ」と言うんだ。
ジョー・ボイラン(アシスタントコーチ):私は「それはすばらしい。彼がそんなに気にしているのは良いことだ」と思ったのを覚えている。
マカドゥー:もし私たちのチームに、前に他のチームでプレーしたことのある人がいれば、クレイはいつも「彼らはあなたが欲しくなかった!」と言っていた。
ブラウン:キャバリアーズと対戦する前… 「彼らはあなたを欲しがっていなかった、マイク・B!」と言うんだ。
マカドゥー:本当に毎回だ。みんなが笑っていた。
カー:クレイは下調べもしている。彼はすべての人のすべてのチームとのつながりを知っている。ある時、私たちがデンバーにいて、スカウティング・レポートのおさらいを終えた後、クレイが「彼らはあなたが欲しくなかった、マイク・ブラウン!」と言ったんだ。マイクは、90年半ばから90年代後半にかけて、ナゲッツでバーニー・ビッカースタッフの下でビデオ・コーディネーターをしていたんだ。マイクは、「待ってくれ、なんだ?どうしてそれを知ってるんだ?」と言っていた。彼はゲームノートまで見ていると思う。
ザザ・パチュリア:飛行機の中でカードで遊ぶんだけど、私は彼が負けた時の反応をいつも楽しんでいた。彼が私に負けた金を払うために小切手を書かなければならないというクールな瞬間があった。…だから彼は特別なんだ。クレイ・トンプソンが小切手を書くなんて誰が想像できる?彼は自分の小切手帳を取り出して、それを私の目の前で書いたんだ。
エジリ:先日、彼は貿易の歴史のような会話に熱中していた。「ああ、日本とドイツでは…」というような感じだった。
バーンズ:そのランダムさが彼を素晴らしいものにしている。
エジリ:彼は歴史をまくしたてた。私は「Dude、何だって!? なぜそんなことを知ってる?」と思った。
デグレゴリオ:それが彼の美しさだ。彼は自分の好きなものを理解し、自分が何者であるかを理解し、それに動じることがない。
カー:クレイは、人やチーム、彼のまわりも世界を本当に、本用に大切にしている。
エジリ:それがクレイだ。変わらないでくれ。
話しが変わりますが、これはクレイのベイエリアの新しい家の写真です。今までツィッターで紹介する機会がなかったのでここで紹介します。この家からチェイスセンター(The Ramp)までボートで行っているようです。
ボートにワイズマンを乗せているクレイ。
たまにカヤックでも練習に行っていたようです。
クレイ・ワールドはいかがでしたでしょうか。なぜクレイがゾーンに入りやすいのかちょっとだけわかったような気がします。これからもずっと変わらずにいて欲しいですね。
アンドリュー・ボーガットのクレイエピソード
2012~2016シーズンと2019シーズンにクレイとチームメイトだったアンドリュー・ボーガットのクレイのリオデジャネイロ・オリンピックでのエピソードです。
ボーガット:「キャリアを通して知った中で、彼がいちばんゆるいオールスターだ。彼は時々バカなことも楽しむいつでも普通のヤツだ。彼はスポーツカーなんかのNBAライフにあまり囚われたりはしない」
「まだ2016年のオリンピックのことを覚えている。私たちはみんな選手村に泊まっていたんだ。でも知っての通り、USA(男子バスケチーム)は選手村に滞在するには大物すぎる。彼らはクルーズ船か何かに泊まっていたんだ。トーナメント中のある日、練習から帰っている時にバスを降りて私たちの地区へ歩いてたんだ。そしたらクレイを見たんだ。私はバスに乗っていて、チームUSAのギアを着て、ヘッドフォンをつけたクレイがひとりで歩いているのを見たんだ」
「だから私はバスを降りて、”クレイ、何してるんだ?”と聞いて挨拶をした。彼は”選手村を見に来たかっただけなんだよ”と言った。彼はひとりだけだった。護衛も、他の選手もいなかった。そしたら彼は”どこへ行くんだ?”と聞いてきたから、私は”オーストラリアの地区へ行くんだ”と答えた。彼は”行ってもいいか?”と聞いたので、私は”うん、だいじょうぶだよ”と答えた。
「彼は私たちとやってきて、数人の選手たちとハングアウトした。彼はアーロン・ベインズとブロック・モタムを知っていたので、彼らに挨拶をした。それから数時間後、私は彼は帰ったんだと思っていたんだ。それでディナーか何かするために下へ降りて行ったら、彼がオーストラリアの陸上代表の誰かと卓球をしていたんだ」
「それがまさにクレイだ。彼はただそんなにスーパースターじゃないんだ、だから私は彼が好きなんだ。彼はとても普通で衝動的なだけだ。彼は”私はこれをしたい、あれをする。バカか何かに見えようと気にしない”って感じだ。彼といっしょにいるのはとても楽しいよ」
(2022年、1/11加筆しました)
参考サイト:The randomness of Klay Thompson: ‘It’s impossible to know him and not love him/Tall tales of Klay Thompson — his special bond, and adventures, with Warriors centers
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