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奇妙な5-on-0プレーとマヴスの抗議について
3/23のウォリアーズ対マーヴェリックス戦で5人対0人のプレーがありました。これがそのプレーです。
ウォリアーズのインバウンドプレーの場面ですが、ここで見てもわかるようにプレーがはじまった時にマーヴェリックスの選手たちはひとりも見当たりませんでした。彼らはコートの反対側にいたからです。ウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーも今までにこのようなプレーには関わった事がないと言っている程の珍しいプレーです。ひょっとしたらこの先もう見れないかもしれないような貴重で奇妙なプレーだと思います。
何があったかと言うと:
ルーズボールがラインの外に出て、審判がウォリアーズのボールだとはっきりとジェスチャーした。
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このデッドボールで、自動的にタイムアウトを取ってなかったマブスのタイムアウトになったので、審判はそのままマブスの方に向けてタイムアウトのためのジェスチャーをとった。
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マヴスはそれをマヴスボールになったと誤解。いちばん近くにいたルーニーも混乱して一瞬審判に反論。審判はそれは誤解だとルーニーに伝えた。マブスのクリスチャン・ウッドも審判に話しかけていたように見える。
タイムアウト後、ウォリアーズのボールで試合が再開。マブスは自分ボールだと勘違いしてコートの逆サイドにいたため、ゼロディフェンス。
ウォリアーズは今シーズン最も簡単な得点をし、リードを90-87と広げた。
なぜマブスはフロアの逆サイドにいたのか。
問題はなぜマヴスの選手たちはコートの逆サイドにいたのかです。
理由はいろいろありそうですが、そのいちばん大きな理由は、彼らが審判の2度目のタイムアウトのジェスチャーをマブスボールだと間違ってしまったためのようです。マヴスのヘッドコーチのジェイソン・キッドは試合後、「審判は私たちのベンチを指していたが、それはタイムアウトのシグナルだった。でもその前のプレーで混乱があった。なぜなら彼は(まず)ウォリアーズを指して、それからそれをタイムアウトに変えて私たちを指した」
マーク・キューバンはこの一連のシークエンスで審判をツィッターで猛批判しました。キューバンの主張はこうです:「3Qの残り1:54で何があったかと不思議に思っている人たちに、何があったか説明させてくれ。審判はマブスのボールだと判定した。(会場の)アナウンサーもそうアナウンスした。それからタイムアウトがあった。タイムアウト中、審判は判定を変えて私たちに伝えなかった。それから私たちが自分たちのボールだと思ってラインアップしたのを見て、彼はボールをウォリアーズに与えた。私たちには一言もなかった。彼らは簡単な得点をした。2点差の試合でそれは大事なのでクレイジーだ。このノンコールのミスははNBAの歴史で最悪の審判判定かもしれない。彼らがやる事はただ私たちに伝えればいいだけなのに、彼らはそれをしなかった」
For those wondering about the play with 1:54 to go on the 3rd, let me explain what happened. The ref called Mavs ball . The announcer announced it. Then there was a timeout . During the time out the official changed the call and never told us. Then when they saw us line up as…
— Mark Cuban (@mcuban) March 23, 2023
そしてキューバンは続けてツィート:「インバウンドで2審判があっちサイドにたった2人しかいなかくて、私たちは2人しかハーフコートにいなかった。他の審判も明らかにそれは私たちのボールだったと思っていた」
Only two refs were on that side of the court and we had 2 guys at half court going to in bound. The other ref obviously thought it was our ball as well. https://t.co/NSTsj5CWKY pic.twitter.com/cStupauXiV
— Mark Cuban (@mcuban) March 23, 2023
このキューバンの主張にに対してクルーチーフのショーン・ライトが反論し、最初のジェスチャーはウォリアーズのボールを意味し、「二つ目のジェスチャーがあったが、それはマヴスの義務的タイムアウトへのものだった」と説明しています。
キューバンはマブスがタイムアウトを取るシグナルを出していなかったので勘違いしてしまったのかもしれません。
なぜ審判はあの場面でマヴスが取っていないタイムアウトを取ったのでしょうか?
それは「マンデトリー・タイムアウト」のルールがあるためです。日本語に訳すと、義務的タイムアウトやタイムアウト義務のような意味合いになると思います。NBAのルールには、チームは各クォーターごとに特定の時間までにタイムアウトを取らなくてはいけないという決まり(義務)があり、このデットボールではそれがマヴスに適応されています。
NBAルール No.5 - Section VI - タイムアウト義務/チーム
c. 各ピリオドで2回の義務的タイムアウトがなければいけない。
もしどちらのチームもクォーターの6:59前にタイムアウトを取らなかった場合、オフィシャルスコアラー(公式記録員)が最初のデッドボールでホームチームのためにタイムアウトを取る義務がある。もし2:59前に次のタイムアウトが取られなければ、オフィシャルスコアラーが前回とは違うチームのためにタイムアウトを取る義務がある。
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この試合ではウォリアーズが3Qの残り6:53で意図的にタイムアウトをとっていたので、この残り1:59でのデッドボールの場面では、自動的にマブスへの義務的タイムアウトが発生しました。ここまでキッドはマブスが8-4ランと勢いづいたので、意図的に2:59前にタイムアウトを取っていなかったものと思われます。
スティーヴ・カーも審判からの説明がなくてもそのタイムアウトがマブスのものだったとわかっていたと言っていたので、キッドも含めマヴスのアシスタントコーチ陣もその事はわかっていたと思われます。また、クリスチャン・ウッドもウォリアーズのボールになった事に対して審判に話しに行っていたようなので、ウッドも審判の言っていた事は理解していたと思われます。
しかし、マヴスは自分たちのボールだと信じていました。
仮にマヴスのコーチ陣全員がタイムアウトのコールを自分たちへのボールだと勘違いしてしまったとしましょう。会場アナウンサーが勘違いしてしまったのもあり得る話だと思います。しかし、ボールをアドバンスできるのは4Qのラスト2分とOTのラスト2分だけなのにも関わらず、自陣のベースラインを割ったボールのインバウンドプレーをなぜアドバンスしてしまったのかがわかりません。ここがみなさん頭を捻ったところだったと思います。
なぜコーチたちや選手全員が3Qにボールをアドバンスしようとしていたのか?それとも試合を遅らせようとしてボールを取りに行かなかったのでしょうか?インバウンダーがボールをもらって出しに行くのを忘れてしまった可能性も考えられます。でももしそうであればキューバンはあのように反応はしないと思います。
カーも、もしマブスが審判のコールが間違っていると思っていたのであれば、なぜインバウンドをしにボールを取りに来ずに向こう側にいたのか不思議がっていました。
これは、マヴスのコーチや選手全員がルールを忘れたか、それを4Qだと勘違いしていたとしか思えません。そんな事ってあるのでしょうか?本当に本当に謎です。
まだ話は終わりません。キッドは「見ればわかるがコートは別々にわかれていた。私たちはこっちのサイドにいてウォリアーズは逆のサイドにいて、審判もベースラインにたので、マイケル・スミス(審判)も私たちのボールだと思ったんだと思う。もし混乱があったなら、笛を吹いてリスタートさせるのは簡単だ」と言っていました。
まさかの審判の中にもそれがマヴスボールでボールをアドバンスしてOKだと思っていた人がいたそうです。これでさらにマヴスが混乱してしまったのは間違いないでしょう。
NBAはこのような問題がおこらないようにルールや規定でゲームシステムを構築していてましたが、このプレーだけはすべてが間違った方向に進んでしまい、ありえない結果につながってしまいました。
審判のタイムアウトのジェスチャーをこちらボールのジェスチャーと勘違い。
会場アナウンサーも勘違い。通常はアナウンサーが間違っていた場合、オフィシャルスコアラーがそれを修正する事になっているが、今回は審判が修正しなかった。(アナウンサーは間違っていないという情報もあり)
タイムアウト明けに審判のマイケル・スミスも勘違いで逆サイドにいた。それで混乱が助長された。
ボールのアドバンスのルールをチーム全員が忘れていたか、それが4Qだと勘違いしていたか、インバウンダーがボールを取りに行くのを忘れた。
審判もマブスの様子がおかしいのは見ているはずだが、マヴスには何も話しかけなかった。
これだけのミスが一度に積み上がるのはシステム上ほぼ不可能です。言うなれば、バスケ版のブラックスワンが起きてしまったと言えます。
マヴスは正式にNBAに抗議へ
最終的にマヴスは127-125と2点差で試合に敗れてしまいました。The Athleticのシャムズによると、キューバンはNBAに抗議を正式に提出するそうです。
抗議について:
試合終了後48時間以内に提出
抗議フィーとして$10Kを支払う。これは抗議が成立すれば返金される
チームは証拠を5日以内に提出する
コミッショナーは証拠を受け取った5日後に決定する
しかしキューバンが抗議を成立させる可能性は限りなく低そうです。ESPNによると、これまで抗議に成功したのはNBA史上たった6回しかなく、この41年では1度のみだそうです。
抗議が成立しにくい理由は、それが「審判の誤審ではなく、審判がルールを間違えた時」にしか成立しないためです。たとえば、ファウルの回数を間違って選手を退場にしてしまったようなルールを間違って運用してしまったケースがそれに当てはまります。これは実際にあった話で、2007年のヒート対ホークス戦のオーバータイム残り52秒でヒートが112-111で負けていた時に、審判がまだ5ファウルだったシャックを6ファウルだと勘違いし、シャックを退場にしてしまいました。ヒートが正式に抗議をして、52秒からの再試合にこぎつけています。その再試合は次のヒート対ホークス戦の試合前にプレーしたそうです。ヒートは点が取れず、試合は114-111で負けています。そのきっかけとなったシャックはサンズにトレードされてしまって再試合前に参加できませんでした。
今回のマヴスのケースでは、審判がルールを間違って試合を判定した事にはなっていないので、抗議が受け入れられるのは厳しいでしょう。
また、そのミスがどう試合結果につながるかも関係あるようです。
2019年にはロケッツ対スパーズ戦でのロケッツの抗議で、審判は4Q残り7:50にあったハーデンのダンクを得点に加えないミスをしました。しかし、NBAはロケッツの抗議を、それを克服できる時間は十分にあったとして抗議を退けています。
この場合も同様に3Qに起きているため、同じような結論になりそうです。
しかし、万が一NBAがマヴスの抗議を受け入れた場合はどうなるのでしょうか。考えられるのは、3Qの残りと4Qのやり直しです。この試合にはウォリアーズとマーヴェリックスのタイブレイカーがかかっていて、今はウォリアーズがタイブレーカーを勝ち取っています。そのため、マヴスとウォリアーズは1.5ゲーム差ですが、実質2.5ゲーム差になっています。もしこれがやり直しになれば、4位~11位までたった2.5ゲーム差しかない激戦のウェストのプレーイン順位やプレーオフのマッチアップにも影響するのは間違いないでしょう。(*順位は3/24時点)
実はキューバンは2020年にもホークス戦でのジョン・コリンズのプットバックがゴールアテンディングだったのか得点だったのかで揉めた時も抗議をしています。その時も今回のようにNBA審判を公に批判していました。コミッショナーのアダム・シルヴァーは、誤審があったのは認めましたがマヴスの抗議を無効にし、キューバンに対して「NBAの審判判定に関して有害な行為と公に批判をした」として$500,000の罰金を課しています。
このように、今回の抗議で唯一確実なのは、キューバンへの罰金だと思われます。