「LINE Pay Visaクレジットカード」の正体
昨日、開催された「LINE CONFERENCE 2019」で決済周りの新サービスもいくつか発表された。
一番の注目は、「LINE Pay Visaクレジットカード」(以下、LINE Pay Visa)だろう。すでに春ごろからVisaブランドのクレジットカードを発行するという話は出ていたが、ようやく具体的なプロダクトがお披露目された格好だ。ただ、このカード、今の時点では母体である「LINE Pay」との関係性がよく分からない。
LINEのカードと言えば、JCBブランドのプリペイド「LINE Payカード」(以下、LINE Pay JCB)が知られている。「LINE Pay JCB」は、LINE Payのプリペイドアカウントにチャージされたバリューを決済の際に引き落としていく、いわば「出口」としてのカードだ。
メルカリが始めた「メルペイ」も目的は同じだが、資金が貯まるアカウントを備えたサービスでは、その使い先、つまり「出口」をいかに確保するかが重要になる。これが不十分だと資金の流動性が低くなり、“フン詰まり”を起こしてしまう。「LINE Pay JCB」はLINE Payに貯まったバリューを、国内だけで数百万店舗にのぼる「JCB加盟店」で使えるようにするために発行されたものだし、QUICPayでの利用(Androidのみ)も発想は同じだ。
一方、今回の「LINE Pay Visa」は与信枠を持つクレジットカードである。そして、昨日の発表では「LINE Payに登録してコード決済で使える」とされていた。
ただ、それが「プリペイドアカウントへのチャージカードとして使える」ということなのか、「QRコードでクレジットカード決済ができる」ということなのか、については説明がなかった。
前者であれば、LINE Payのチャージ元、つまり「入り口」としての役割ということになる。LINEにとってはオンアス取引により、加盟店手数料を外に支払うことなくクレジットチャージを実現できる訳だ。
後者であれば、PayPayと同様、LINE Payのコード決済が「プリペイドアカウント」と「クレジットアカウント」との二本立てになる。個人的には後者が有力だと思うが、両対応ということもありそうだ。
また、今回のカードで世間的に最もニュースバリューが高いのは「ポイント還元率3%」だろう。既存のクレジットカードだと、「リクルートカードプラス」(新規発行は終了)の2%が最高なだけに、話題性は十分。ただ、くせ者なのはこの3%還元に「初年度」という但し書きが付いているところ。要は、2年目以降も同じ還元率を維持するかどうかは保証はできない、ということだ。この辺りは、発行後のユーザー数や取扱高とそれに伴うコストを見ながら判断していくということか。
LINEは「LINE Pay JCB」でも当初、「全員に2%還元」をうたっていたが、その後、インセンティブプログラム「マイカラー」を導入し、利用頻度などに応じた還元率設定へと舵を切った。「LINE Pay Visa」も「マイカラー」との連動を発表しているので、同様の施策がとられるものと見られる。
そもそも、国際ブランドのカードで3%ものポイント還元を行えば、カードとしての収支が赤字になることは目に見えている。「LINE Pay Visa」はクレジットなので、リボ払いやキャッシングによる金利収益がある程度期待できるとは言え、今の日本の決済インフラ構造からすると3%は無理筋だ。それでもこうしたサービスを付帯したのは、やはり「LINE Pay JCB」の時と同様、いわゆる“カードビジネス”以外のところに商機を見出しているからだろう。(つづく)