コーヒーミルを組立てる
コーヒーミルを分解するの続編です
組立検討
どのような構造にすれば、継続的かつ簡易的に分解できるかを考える。
取り外せる方法となれば、やはりネジ。インサートナットでもいいが、見えない部分であれば木ねじで十分。
今回分解時に苦労したタッカー部分については、全て木ねじに変更する。該当するのは、上蓋と上内蓋の固定、上蓋組立セットと木部本体の固定である。
上蓋と上内蓋の固定
まず、鋳物の外歯を、上内蓋の上側から押し込んでカシメる。鋳物の外歯の外周にはカシメ用の突起が出ている。上内蓋の上面から鋳物外歯の上部が出ない様に押し込んだら(赤矢印)、上内蓋と上蓋を木ねじで留める(黄矢印)。
接着してしまうと鋳物の外歯を取り外せなくなるので、小型の木ネジ4本程度で上内蓋の下側から留める。上内蓋t12、上蓋t10なので20mm程度の小型木ネジでOK。ここで組み立てたものを"上蓋組立セット"とする。
木部本体との固定方法
残った木部本体と上の上蓋セットの組み立ては、横からのタッカーが打たれていた(間違いなく正規の組立工程もこうだろう)部分から、木ねじで留めれば問題ないだろう。外側になるのでネジ頭は皿。相手が構造用合板だと締結時に割れる可能性もあるので、ここは単板でいく。木部本体の壁厚がt9なので、先の20mmの木ねじを共用できる。M3x20(黒)の手持ちがあるので使用する。
鋳物部分の洗浄
基本的にはコーヒーかすと酸化油だと思うので、アルカリ性の重曹の出番。鋳物やスチール品なので、スチールウールでごしごしいく。
重曹液に1時間ほど浸したところ、漬けていた重曹液は真っ茶に。これまでこびりついていた珈琲粉から抽出されたものだろうか?それとも落ちてはいけない保護塗膜?
そのまま乾燥させるために放置していたら、1時間程度の放置だったが、鋳物部品に錆が浮いてきていた。重曹液かスチールウールの原因かわからないが、とりあえず錆をぬぐって、アマニ油を塗布しておいた。ちょっといい感じの鈍い光沢が出てきた。
破損部分の再生と本体の加工
上内蓋を内作する。既に杉材の単板t12があるので、それを切り出して使用する。もともとの上内蓋も合板だったが、断面方向からのねじ止めに、合板はあまり適さないし。
自作した上内蓋がこちら。Φ44の抜き穴は、ホールソーを持っていなかったので、適当な穴(トリマのビットが十分通る穴)を開け、トリマーを用いて抜いた。
外形が2mmほど小さくなってしまい(きれいにしようとカンナと紙やすりやりすぎた)、またトリマーが上手くかからず、ちょっといびつな内円に…。そしてここで、失念していたことが…。この蓋にかしめる外刃は、外径がテーパ形状になっていて、ぴったり寸法だとグラグラしてしまった…。ああっ、内円はテーパーつけんのか。
ということで、悪かったところを改善して再度作り直し。
あわせて、側面に、本体木部との固定時に下穴が必要。更に、板厚が増えたため、鋳物本体との共締め長さが4mm長くなり、ネジ頭を4mmほど埋める必要があり、追加の座繰り加工が必要になる。
木部の清掃(研磨)
31年物の木部表面。いっそのこと完全にきれいにしよう。と思ったが、折角のKalitaロゴを消すのも…。ということで、メラミンスポンジで表面のニスを全剥ぎする程度にする。
そのままだと湿度でカビたりするかもしれないので、蜜蝋を塗布して保護膜を形成する。
以前よりも少し明るくなった気がするが、塗装を完全に落としたわけではないので、ムラやくすみみが見て取れる。まぁ、いいか。
鋳物歯の刃研ぎ…
最近の話として、ステンレス歯の方が切れがいいという話がある。鋳物は切るのではなく、すりつぶしているのだと。であれば、鋳物の歯を研いで、ステンレス歯のような切れ味に近づけることができないのか?
もちろん同じになんてならないのはわかってる。でも、31年も連れ添った相棒をこのまま引退させたくはない。いくらいい物とは言っても、小型ハンドミルの両手とも固定されない動きは、ちょっと優雅さにも欠ける。
ということで、鋳物歯を軽く研いでみようか…。いや、ちょっと待って。
ミル刃の回転方向とミル刃の方向が、刃が立っている方向ではないぞ!!下の記事の考察に譲るとして、
あれ? 研いでも関係なくないか?これ。いずれの刃形状にしろ、単に粉砕しているだけじゃん! ということで研磨は止め。下手に刃先を潰して、綺麗な円周を崩す方がイヤだし。
組立
上内蓋の追加工
まずは、上内蓋についての追加工から。ボルト長に合わせるため、4mm程度の座繰りを入れる。保有しているボルト頭は<10mmなので、Φ10で良いが、ワッシャーがより大きい為それ以上のドリル径が必要だが、ドリルがΦ10の次がΦ16となるため、ワッシャーを手持ちのΦ10に交換して対応する。
次に、木部本体に組み込み(テープ合わせ)、残っているタッカー痕に合わせて、Φ2.5の下穴ドリルで下穴をあけておく。終わったら上内蓋はをり出す。
木部本体の追加工
先ほどのタッカー痕に明けた下穴に合わせ、Φ3.5のドリルで貫通穴をあけておく。
上内蓋と外刃の組立(外刃ユニット)
上内蓋の上側(先ほど座繰り加工をした反対側)から外刃を押し込み、双方がツライチになるようにカシメる。今回はちょっときつかったので、玄翁を使って叩いて押し込んでいる。
ツライチになっているので、外刃の並行度は問題ないと思うが、一応確認し問題なかった。
鋳物本体と上蓋と外刃ユニットの合体(上部ユニット)
ネジと袋ナットで、鋳物本体と上蓋と外刃ユニットを結合する。上内蓋の座繰りが多少汚かろうと、ここで締めこんでしまえば問題ない。どうせ見えないし。
製品では、上内蓋から上蓋に対してホッチキスタッカーが打ち込まれていた。私は木ねじで固定しようかとも思ったが、このネジ2本で何の問題もなさそうなので、木ねじ固定は止めた。分解楽になるし。
上部ユニットと木部本体の組立
上部ユニットと木部本体を、左右から木ねじΦ3.2 L20 計4本で組み付ける。
さて、最後に内刃を組み付けてから…。
あっ、内刃先に入れないと入らないんだった…。
簡単着脱のための木ねじ構造が、組立て2分でその威力を発揮した。分解して、内刃を入れてから再度組立。
最終組立
鋳物上部のカバーや可動蓋、調整部やハンドルを組み付ければ完成。
あっ、ハンドルの握り木部に蜜蝋漬けんの忘れてる…。
あと、鋳物本体の前後が逆になってて、蓋が後ろ側に開くようになってしまってる・・・。長年の習慣で、使用中に違和感があって気が付いてしまった…。
ちょっと挽精度の考察
このミルの粉粒精度の設定は、ネジピッチが1.25mmで、設定分解能が6-Step/360°なので、垂直方向に208um。もしゼロ設定が密着していたとすれば、7-step(1周+1-step)で、1.4560mmでTIME MORE C3の18クリックと同じになるはず。
参考までに、保有しているTIME MORE C3は、ネジピッチが1.00mmで12-step/360°なので、垂直方向に80.3um。現在設定している18クリックだと1.4454mm。
でも、組立て実際に7-stepで挽いてみると、どう見ても細挽。最終的な組立における軸精度や、個別部品の精度が異なるから、単純な数値の積み上げではだめですねぇ。でも、クラッシックミルのゆったりとして優雅な挽味が、やはり私は好きですねぇ。