スーパーリーグと独占禁止法〜制裁は独占禁止法に反するか?〜
スーパーリーグ参加選手は、国内リーグや国際大会などへの出場、各国の代表メンバー入り等禁止される可能性があるということをUEFAが発表しました。
CLやELを開催するUEFAが、他連盟が開催する大会に出場する選手に対してこのような強い制裁を行うことは、独占禁止法違反にならないの?と思い、少しリサーチしてみました。
(プロじゃないので間違いがあるかもしれない点はお許しください🥺
なんならプロの方からの訂正お待ちしております。)
〇今回の制裁のどこらへんが独占禁止法※1にあたりそうなの?
独占禁止法の目的は、ざっくりいえば、資本主義経済において、競争を促進させたり、消費者利益を図ったりすることです。
サッカーチームじゃないインテル社は、パソコンメーカーのうちの8割くらいとの間で、自社以外のCPUを使わないことを条件として割戻金を与えるなどの手法を用いることで、自社のCPUのシェア率をぐぐっとアップさせたことがありましたが、独占禁止法違反にあたるとされました。
これは、競争相手(他CPUメーカー)を排除しようとすることに問題があります。
今回の制裁が行われるとすれば、選手としては不利益が大きいとしてスーパーリーグの参加をやめる人(別チームへの異動?)もいそうな気がします。そうだとすれば、非公認大会を排除し、かつ、選手たちの自由な大会参加による利益獲得を阻害することになるため、独占禁止法違反になりそうです。
〇実際にスポーツ界で認められた独占禁止法違反
過去にスピードスケートにおいて、独占禁止法違反が認められたことがあります。
国際スケート連盟は、(以下、ISU)の公認を受けていないスピードスケート大会に参加した選手に対して、最悪な場合には主要な国際スピードスケート大会からの永久追放を行う可能性がありました。
これは以下のような理由から、独占禁止法違反が認められました。
このような制裁は、競争を制限し、ISUが選手や競合大会の団体に損害を与え、そして自らが商業的利益を得ることを可能にしている。スケート選手たちは、独立系の大会主催者にサービスを提供することができず、そのことによって、公認大会によって得られる収入の他に収入を得る機会が奪われている可能性がある。
また、独立団体はトップ選手を呼び込むことができず、革新的なスピードスケート大会の発展を制限し、アイススケートファンが他の大会を支持する機会を奪っている。※2
〇今回の制裁は結局独占禁止法違反になるの?
上記の例をみると、今回の制裁も同じような感じがあります。
ただ、ISUの事件とは異なる点もいくつかあります。※3
・ISUは、非公認の大会の目的がスポーツの高潔性や選手の健康面などの観点から正当なものであったとしても、一律に禁止していたことから、もっぱら制裁が利益目的であることが認定されていたこと。
⇔今回は、スーパーリーグの目的が設立チームらの金銭的利益にあり、ヨーロッパにおけるサッカー界の成長や、連帯を著しく害するものであるなどとして、大会に正当性が認められないからこそ、制裁を行うというUEFA側からの主張が考えられます。つまり、利益目的の制裁ではないということです。
・ISU公式大会への出場が制限されれば、選手は生計に支障が生じ得る状態があったこと。
⇔スーパーリーグ参加選手・チームは、スーパーリーグから利益を得られるため、仮に制裁が行われたとしても、その生計に支障が生じないと考えられています。
⇒これらの点を考慮すれば、今回の制裁は独占禁止法違反が認められない可能性が高いと考えられます。
〇まとめ
結局あれやこれやと書きましたが、独禁法違反は認められないという結論になりそうです。ということで、仮にこのままCL VS SL の状況が生じた場合には、SLに参加する選手に対して、上記制裁が加えられたとしても、文句を言えない状況になってしまいそうです。
また、経済的側面が大きくなっている昨今の状況の中での今回の件というのは、UEFA・FIFAと国家の関係や、サッカー界に対する国家的介入についての問題も表面化させるようなものであると考えられます。
【追記】イギリスでは、スーパーリーグが独占禁止法に違反する可能性があるとして介入を示唆したようです。
一ファンとしては、(綺麗事ではあるかもしれませんが)UEFAに対する問題点を交渉によって解消することで、今後も選手たちが様々なチームとの戦いで切磋琢磨していく中でのパフォーマンスを観られればいいなと思っています。
セリエAでのインテルの試合を引き続き観られてW杯でアッズーリとして活躍するバレッラ達を応援できますように…🙏🏻
ー注釈ー
※1実際には、EU競争法など別の名がそれぞれありますが、今回は文章全体で、独占禁止法として記載しています。
※2 公正取引委員会より必要部分抜粋
https://www.jftc.go.jp/kokusai/kaigaiugoki/eu/2018eu/201801eu.html
※3 オランダにおいて国際法やEU法等の研究を行うTMC Asser InstituutのSenior Researcherである、Antoine Duval氏(Twitter:@Ant1Duval)のツイートを参考にしています。