結局「ティターニアに似たもの」って誰だったのという話
・はじめに
よるとりです。
TYPE-MOONエース明日発売!!!助けてくれ!!!!(挨拶)
今回はついにこの話です。
LB6、第30節。最後の最後にオベロンがひとりごちた言葉。
「オベロンのティターニアとは、結局なんだったのか」
「ティターニアに似たものとは、結局誰だったのか」
LB6の難問(?)であるこの話に踏み込みたいと思います。
今回の記事は、結局のところ12日に答え合わせがくるかもしれないので、自分の考えを壁打ちのようにまとめる内容になります。
個人的な心残りはオベロンの「きみ」表記に関する答えに至れなかったことです。ここはまあ、多分来年出るFGOマテリアルに答えが出ると思いますので。
また、この記事の後半部分で主に上記の記事で書いた内容を多分に含みます。一度お目通しいただければ読みやすくなるかなと思いますので、よろしければ。
そして、引用を含めるとそこそこ長くなりそうな記事なので先に結論を書いておきますと、この記事で結論づける答えは「ティターニアに似たものとは、アルトリア・キャスター」です。その結論に向けて論拠などをつらつら書いていきます。
・ティターニアについて
ティターニア。ご存知、夏の夜の夢においてオベロンの妃とされた創作の妖精。
この項ではLB6内で触れられた記述について一つ一つ振り返っていきたいと思います。
・第一の言及
まず、一番はじめに彼女の名前が出たのは第2節。ソールズベリーの街に行く直前のやりとりの中。
ここの部分では、シェイクスピア作の戯曲「夏の夜の夢」のあらすじを踏まえながらオベロンとシェイクスピアという汎人類史の妖精について語られます。要点は2点。
オベロンは、「夏の夜の夢」の戯曲によって有名になった英霊である。しかし、もとを辿れば古妖精オベロンという伝承があったのでサーヴァントとして存在することができる
それに対してティターニアは、シェイクスピアが作った架空の妖精
・第二の言及
そして次の引用箇所。
秋の森、ウェールズの夜。
ここでの要点は3点。
オベロンはモルガンを倒すという目的以外に、ティターニアと出会いたいという願いがある
しかし、ティターニアは架空の存在であるため、存在しない。「ありえない目的」である
オベロンはここで「物語の中でしか許されない存在だった」と言い含める
・第三の言及
次に確認するべき箇所は、チョコエンパイアエディンバラ。マヴマッチの前夜にこっそりお忍びで様子を見に来た時の会話の中。
ここでの要点は2点。
藤丸は、ティターニアはアルトリアではないの?と聞き、オベロンはそれに対して「どうかな」と答えを濁している
ティターニアは、都合のいい物語の中でもその場限りの舞台装置。誰も「彼女の幸せ」を考えず、忘れ去られてしまう存在であるため、「本当に存在してはいけない」という認識を吐露する。
・第四の言及
次の言及は、モルガンを打ち倒す前の決戦前夜(Ⅱ)。
ここの言及での要点は1点。
オベロンは存在しないと理解していながらもティターニアを探していた。それは夜空の星が手に入らないようなものだと比喩する。
・言及内容まとめ
終幕である第30節を除き、その他の部分でティターニアに関する記述を引用、部分部分の要点のまとめです。
オベロンは、「夏の夜の夢」の戯曲によって有名になった英霊である。しかし、もとを辿れば古妖精オベロンという伝承があったのでサーヴァントとして存在することができる
それに対してティターニアは、シェイクスピアが作った架空の妖精
オベロンはモルガンを倒すという目的以外に、ティターニアと出会いたいという願いがある
しかし、ティターニアは架空の存在であるため、存在しない。「ありえない目的」である
オベロンはここで「物語の中でしか許されない存在だった」と言い含める
藤丸は、ティターニアはアルトリアではないの?と聞き、オベロンはそれに対して「どうかな」と答えを濁している
ティターニアは、都合のいい物語の中でもその場限りの舞台装置。誰も「彼女の幸せ」を考えず、忘れ去られてしまう存在であるため、「本当に存在してはいけない」という認識を吐露する。
オベロンは存在しないと理解していながらもティターニアを探していた。それは夜空の星が手に入らないようなものだと比喩する。
少し数が多いので、更にこれをあとに必要な部分を要約します。
これでだいぶスッキリしたかと思います。
ここまで要項をスリムにすると、オベロンの語るティターニアについては「物語の中にだけ存在する、架空のティターニア」と「それらを受けたオベロンの所感」の2軸から語られているのがわかりやすくなりました。
ティターニアは実在しない。しかし、彼にとって「ティターニアはこういう存在だ」という認識は存在する。
よってその認識が近しいものが「ティターニアに似たもの」たりうる。
それではこれらの前提条件を踏まえて、「ティターニアに似たもの」について踏み込んでいきたいと思います。
・目的のために生み出された「楽園の妖精」のあり方
一部、このnoteと重複するところがありますがご割愛ください。
アルトリア・キャスター。
「楽園の妖精」として星の内海から重要な役割を託された彼女の使命は、表向きは「巡礼の旅」を終え、鐘を鳴らし、ブリテンを正しく導き、救うこと。
しかしながらその実態は、彼女の命と引き換えに聖剣を作り、外敵と戦う藤丸たちにそれを託すこと。それが使命でした。
第二部冒頭。汎人類史は地球の表面ごと漂白され、聖剣の概念は失われました。
当然ながら、汎人類史のアーサー王、「アルトリア•ペンドラゴン」という聖剣の王がいたことも同時に失われてしまったのです。
聖剣を復活させるために星の内海は「楽園の妖精」を派遣して、聖剣を作ることに。しかしその方法は、楽園の妖精の集めた情報を元に聖剣を鋳造するというもの。
しかしはじめに派遣された楽園の妖精、ヴィヴィアンはその使命を捨ててモルガンとしてブリテンに君臨しました。
そうして2番目の楽園の妖精として生み出されたアルトリア•キャスター。その名前の由来は「唱えるもの」。作中彼女は、度々この呼び名で呼ばれていました。
アルトリアという王の名前を唱えるためにこの名前と共にブリテンへ流れ着きました。
それはつまり「汎人類史のアルトリアの存在証明をするために、アルトリア・キャスターは生まれ落ちて命を散らす定め」だったわけです。
ブリテンを正しく終わらせること。
汎人類史のために聖剣を造ること。
汎人類史のアルトリアの存在証明をすること。
アルトリア・キャスターはこれらの目的のために、都合よく使い捨てるために作られた物語のような存在でした。
それは奇しくも、ブリテンを存続させるという大義のために生み出された汎人類史のアルトリア・ペンドラゴンのように。
誰もアルトリア・キャスターの幸福なんて考えず、都合だけを押し付けて、使い捨てたら忘れ去られるような存在。
おそらくですが、オベロンは終末装置ヴォーティガーン側の知識として「楽園の妖精」がどういった存在だったのか、アルトリア・キャスター以上に理解していたようにいくつかの描写があります。
オベロンがマーリンとしてアルトリア・キャスターに魔術を授けたことは最早ここでは知ってて当然のこととして扱いますが、その最中のこんな話とか。
このマーリンの教えなんかは、真意として「楽園の妖精」を利用する意図があったかとは思います。しかしながら「無名の王」とそのものずばりの単語が出ているあたり、かなりこの「楽園の妖精・アルトリア・キャスター」を理解した上で、哀れみか、慰めから出てきたものかもしれません。
・「都合のいい存在」を消費して前に進む汎人類史の絶対的ルール
藪から棒にですが、みなさん「妖精國の妖精は、移住させることができる」という話覚えてますか? ダ・ヴィンチちゃんが話してくれて、バーゲストがアドニスを移住させてやりたいと話したあれです。
最終的に叶いませんでしたが、今回は他の異聞帯とは違い「移住という手段をもちいて異聞帯の住人を救うことができる」異聞帯でした。
もっと理想的な話をするなら、モルガンが「はいどうぞ」と、ことを構えなければ、鐘を鳴らして、妖精を移住させて終えることすらできました。
(陥穽の伝播を止めるという目的はあったものの、これは本当に最後の最後の虫竜のものだったので、別に妖精國自体の問題ではなかった)
しかしながら、アルトリア・キャスターだけは別。
彼女は聖剣を作り、藤丸に渡さなければ汎人類史と異星の神との戦いに勝ち目はない。
(本編では結果的に、HFのイリヤのように村正が肩代わりをしてくれたけど)
そんな存在を生み出してしまう汎人類史の、というより、地球という惑星のルール。
オベロンが怒りを覚えていたのは、そんな途方も無い大きな枠でした。
妖精王オベロン時、オベロン・ヴォーティガーン時、同じ話をしている珍しいシーン。
藤丸立香とマシュ、そしてカルデアは身を粉にして漂白された汎人類史を取り戻すために戦っている。しかし、それらは世界が元通りになったあと、ただの報告書になる。どれだけ頑張っても、いつかは忘れ去られる。それが「続いていく」ということ。
それはもっと大きな事象で捉えるなら、時間を一本の木としたとき、より多くの実をつける可能性に満ちた枝を「編纂事象」として残し、あまり実をつける可能性が少ないと思しき枝を「剪定事象」として裁ち落とすように。
「いるもの」「いらないもの」、上と下、優と劣。
空想と現実。
それらのルールごと消し去ろうとしたのが、ことの顛末だったわけです。
ティターニアを生み出した世界に対して、終末装置であるオベロンが与えられるのは滅びだけ。
オベロン•ヴォーディガーンができるのは、それらを作り出した世界と共に滅んでやること。
まあ、結局それは達成されなかったわけですが。
・「ティターニアに似たもの」のゆくえ
私の説明が下手くそでなければ、オベロンがティターニアと定義するものに最も近かったものがアルトリア・キャスターであることが伝わったかと思います。伝わらなかったら精進します。
すごく乱暴に表すと
ティターニア=都合よくできた物語の舞台装置≒アルトリア・キャスター
という感じですね。
役目を終え、消費され、消え果てた後、アルトリア・キャスターは疾走して世界と契約し、聖剣の守護者となったアルトリア。
アルトリアが振るう聖剣で奈落へと落ちていったオベロン・ヴォーティガーン。
ここでもずばり、ティターニア=生贄のよう、と形容されています。
さらにダメ押しな話になりますが、もし「それを認める事は、できなかった」という記述は、一度「そうではないのか?」という提示があって、それを認めなかった時に発生する状況の文章です。
もし、提示がない場合は「出会っていたとしても、気付くことはなかった」といった文章になるのではないでしょうか?
LB6は非常に練り上げられたプロットとテキストをしており、これだけ膨大なボリュームなのに捨てる場所がありません。逆説的に言えば、「ティターニアって、アルトリアじゃないの?」という問いかけも必要だから描かれているわけです。
それらは、結論として「ティターニアに似たものはアルトリア・キャスターである」という答えに結びつくのではないかなぁと思います。
・おわりに
今回は結構取り上げた話の中でもなかなかのところに足を突っ込む必要があるので不安でしたが、とりあえずは読めるもののカタチにしておいて12日の答え合わせを待ちたいと思います。っていうか数時間後なんだよなぁ……
もう少し輝ける星というものについて突っ込んで書きたいところがあったのですが、字数も膨れ上がっているのでまた今度にします!
ここまでお読みいただきありがとうございました。