古本を買う
新刊を買う、と決めていたのは、アーティストにお金を使うことで、ぼそぼそ絵を売っていた私にもいつか、お金が入ってくると思ってたからだった。
いつか変わる、いつか変わる、と思って過ごしてきた。
今になって振り返ったら、私はずっと低所得層で、年金の払えない年もしばしばあって、煮え切らなくて、今後もきっと、基本はそうだろう。
自閉症の感覚過敏と、アレルギーのような状態と、大きすぎる骨格で、下着や身の回り品を、ふつうの人の何倍も試してきたと思う。試す、というのは、買っては捨てるということだ。そんなことに気とお金を取られてきた。そういうことばっかりだ。
ずっと発達障害グレーゾーンと仮定して、生活してきたけど、全然グレーゾーンじゃない。感覚過敏も計算にいれれば、生活や仕事を発達障害に振り回されてるぶんが、自分でかばいきれない。立て直せない。
行政が定めてるとおり、半年後に障がい者手帳を申請することにした。先日初診だったから、来年になってからだ。
障がい者手帳は、私が取っていいものじゃないと思ってきたけど、先日久しぶりに再会して親しくなった人が、発達障害ではない理由でだが、障がい者手帳を持っていた。生まれたときから、ずっとそうだと言う。
毎日一緒に働いていたし、そういえば、他の人達に、雑談のなかで説明してる場面を見たこともある。ちゃんと印象に残ってなかった。
一緒にでかけたら、私が同行者として、無料になった場面があれこれあった。身体的な特徴で、気づいてることはあったが、それが障碍だと思わなかった。そのかたは、障がいのために、できない動作もあった。出かけてる中で、私がスピードを落として、待ってる場面も、ちょくちょくあった。
そのかたは、ずっと、手帳と一緒に、できないことを手放して生活してきたのだ。生まれてからずっと。
私はそのかたに、何で古本ばっかり買うんだよ、と言ったことがあった。
当時の職場で、「私たち給料悪くないだろ、私の身内は本を書いて生活してるんだ、そういう仕事の人は、我々が新刊を買わなきゃ収入にならないんだよ」と強めに言った。
そのかたは思うことがあるようだったが、そのとき、何も言わなかった。
私は今は、正式に診断がおりた障がい者だ。
私の障がいは、努力でカバーできる程度を超えていると思う。
「正しく」お金を使おうと努めてきて、かなりの金額を放出した。
お金の管理ができない。衝動的に行動、買い物をしてしまうのも、発達障害の症状だと知った。簿記の勉強が、分からな過ぎて、この1ヵ月、気が付けば新刊を何冊も買っていた。定額読み放題だけでも5、6冊。図書館で借りたのも5、6冊。
いっしょうけんめい読んだからいいけど、きっと、本の色彩とか、細かいところに感覚過敏がはたらいているのだろう。
着れる下着を山ほど買った私は、簿記の本を山ほど買っていた。
先日、今年の年金が払えない申請をしてきたところなのだけど。
Amazonで、他の資格に必要な本を検索した。
右下に、古本という項目があった。私は、そこに出てきた1冊の購入をクリックした。
100円ショップで買わない、ファストファッション店で買わない、それがひいては労働者を守るし、環境を守るという。それを信じて、自分の素行を良くしていこうと、自然環境に沿って行動しようと思ってきた。
だけど自分という自然をいちばんに考えて振り返ったら、自分は、自分が思ったようには行動できず、他の人より気を取られ、足を取られていた。
何と、健常な人の多いことよ。
負けなかったつもりだけど、もう十分、負け続けてきた。
それを認められるようになっただけでも、
障がいの診断が下りて良かった。
今後私は、100円ショップに、古本屋に、格安スーパーに、どんどん助けてもらう。
例え、いい給料の仕事に就いても、そこを私の基準にしよう。
衝動的に買ってしまったり、感覚過敏で何倍もものが必要になったりするのなら。
それで、人並みの生活を送る。