原付免許を取る
とうとう原付免許を取ることにしました。申し込みました。すごい。
電車の通ってない地域で暮らし始めたからです。今まで運転免許というのは自分に属していないもので、親とか親戚が「れいなが運転免許を取ったら、自分は運転を辞めて、乗せてもらう。この地域に住んで、こういう仕事をしてもらって、実家で毎日こんなことをしてもらう」と子供の頃から繰り返し本気で言われてきたから拒否していたのです。車の中は、いつも誰かが怒鳴っていて、怖いことが起きるし、臭いし、狭いし、酔うし、げっぷや痰の音ばかりで、運転免許について考えるたび気力が削げていました。金切声、疲れ果てた人材派遣の車移動、急停車。自分みたいな境遇で運転免許を取ったけど、後年、免許証を捨てて引きこもってる人の話も聞いたし、納得してから動きたかった。
実家から遠く離れたこの地域で、今後も長く来てもいいんだよ、と言われる仕事に就き、和やかに過ごせる時間が増え、楽しい車内の思い出が出来ました。その現場で来年やりたいと思った仕事が、緊急時を考慮すれば運転できなきゃ心もとないものだった。でも自動車はちょっとどうしても嫌だった。じゃあ原付とれば?と仕事仲間に言われて、それもありなのか、と思いました。仕事が終わり、同じ地域で次の現場に移動し、断崖絶壁へ遊びに連れていってもらった時、しょうがないから運転してくれた方が、僻地の農作業用に、小学生で車の運転を始めた話をしてくれた。あるお婆さんからは、若いころ警察署長に原付貸して!と言ったら、無免許だったけど「事故すんなよー」と笑って貸してもらえた話など。私が子供の頃は、スポーツクラブの親で乗せ合う時、他の親子が私を嫌っていることをよく知っていた。時には2時間くらい縮こまっていた。他のチームメイト達は、一通りはしゃいだら、いびきをかいて寝ていた。私は鼻をすすりながら、運転する大人と特に話も続かず、お腹にガスを溜めながら、外を見ていた。車の中は最悪な場所だったのに、30歳近くなって、青い海を見ながらノンビリ乗ってる思い出が重なってきた。話を聞いてみると、意外と何人もが、飲酒運転で、運転免許取り消しになっていた。それですっかり飲酒を辞めてた人もいた。地域柄、も確かにあるんだけど。一緒に共同生活してる人は、同じ現場で他の人の車のライトに当てて割り、廃車にするからいいよーと言われたけど、結果弁償していた。交通ルールとか標識、よく分かんないから、信号がない地域しか運転しないという人もいた。飲酒運転で捕まって引退した元芸能人も、元気にトラック運転していた。ここでは皆ゆるやかに失敗していた。私も、もし失敗したら罪は償って、また道路交通や運転のことを身に着けて、少し慣れたら大型免許とか取ったらいいじゃないかと、自然に思えるようになったのです。
原付の学科試験に向けて、周囲のアドバイスに従って教習本を買ったけど、正解だった。合格不合格だけじゃなくて、色んなことを学べる。YouTubeで模擬試験の動画を丸暗記して一夜漬けで受かった、なんてコメントを沢山見たけど、私は運転マニアの身内も居ないし、英才教育も受けてないし、サーキットに出れる運転センスもない。だけど道路に出たいから、判断の基礎が欲しいから、1から書いてくれてる本を泥臭く読んで備えようと思う。