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タランチュラが毛フサフサな理由「巣の掃除に来たアリに齧られないため」だった

タランチュラは大きな体を覆うモッサリとした剛毛が特徴的です。

なぜ彼らはこんなに毛がボーボーなのか、これまで確かな答えは得られていませんでした。

しかし今回、フィンランド・トゥルク大学(University of Turku)の最新研究により、「タランチュラの剛毛は掃除屋のアリに齧られないための防護シールドである」との新説が浮上しました。

加えて、研究チームはタランチュラが一般に抱かれやすい凶暴なイメージとは違って、カエルなどの異種と仲良く共生していたことを明らかにしています。

研究の詳細は2024年8月6日付で科学雑誌『Journal of Natural History』に掲載されました。


参考文献

元論文
An extensive review of mutualistic and similar ecological associations involving tarantulas (Araneae: Theraphosidae), with a new hypothesis on the evolution of their hirsuteness
https://doi.org/10.1080/00222933.2024.2382404


ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。


タランチュラの剛毛は「防護シールド」だった

「タランチュラ」とはオオツチグモ科に属するクモの一般的な名称であり、南米や熱帯アジア、オーストラリアなど世界に広く分布しています。

タランチュラの外見で強く目を引くのは、なんといっても全身にみっちりと生えそろった剛毛でしょう。

研究チームは今回、タランチュラと異種生物が野生下でどんな関係性を持っているかを理解すべく、過去の科学文献を見直すとともに、フィールドワークやSNSを利用した情報収集を行いました。

その中でタランチュラが剛毛である理由の新たな説が浮上したのです。

それが「タランチュラの剛毛は掃除屋のアリから身を守る防護シールドである」というものでした。

Credit: canva, ナゾロジー編集部

これまでの調査で、地上性のタランチュラの巣穴には「グンタイアリ」という獰猛な捕食性のアリがたびたび出入りしていることが知られていました。

研究主任のアリレザ・ザマニ(Alireza Zamani)氏によると、タランチュラとグンタイアリの関係性はずっと不可解だったといいます。

というのも、グンタイアリはあらゆる獲物に集団で襲いかかる獰猛な習性の持ち主であり、そのターゲットとしてはクモも例外ではありません。

ところがザマニ氏によると「グンタイアリはタランチュラの大人も子供も無視し、タランチュラが食べ残した残骸だけを集めて去っていく傾向があった」のです。

これは巣穴を清潔に保つことにも有益であるため、タランチュラにとってグンタイアリは便利な掃除屋となっていました。

Credit: canva, ナゾロジー編集部

グンタイアリは大柄なクモもバンバン捕食するため、この行動は実に不可思議だったとザマニ氏は話します。

流石のグンタイアリもタランチュラには怖気付いているということなのでしょうか?

しかしチームが観察を続けてみると、グンタイアリの中にはわずかながらタランチュラに噛み付いて攻撃を仕掛けている個体もいました。

ところがそのとき、タランチュラの全身が硬い剛毛で守られていたため、アリは皮膚に噛み付くことができず、あきらめて帰っていったのです。

この観察からザマニ氏らは「タランチュラの剛毛は掃除係のグンタイアリに齧られないために発達したのではないか」との新説に至ったのです。

つまり、グンタイアリは「タランチュラが怖いから攻撃しない」または「残飯を提供してくれる共生関係があるから攻撃しない」のではなく、「毛が邪魔で食べれないから残飯だけ頂いて帰ろう」と考えている可能性を示唆しています。

Credit: canva, ナゾロジー編集部

実際にタランチュラは大人だけでなく、子供も毛が生えていますし、さらには卵嚢(らんのう)までも毛で覆われていることがわかっています。

そのためにグンタイアリはタランチュラを敵に回すのではなく、共生相手として友好的に暮らすことを選んだのでしょう。

(※ タランチュラの子供たちの実際の画像はこちらから。かなり刺激的ですので、虫が苦手な方は閲覧をお控えください)

しかし、地上性のタランチュラが剛毛で身を守る一方で、樹上性のタランチュラはまた別の面白い方法を取っていました。


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