恐竜時代を終わらせた「巨大隕石」がどこから来たのか判明!
今から約6600万年前、メキシコのユカタン半島沖に直撃して恐竜時代を終わらせた「チクシュルーブ衝突体」。
この隕石が一体どこから飛んできたものなのかは、今日まで解き明かされていませんでした。
しかし今回、独ケルン大学(University of Cologne)の研究で、チクシュルーブ衝突体は木星軌道の外側で作られた小惑星であることが確実となりました。
地球に衝突する隕石のほとんどは火星と木星の間に広がる「小惑星帯(アステロイドベルト)」に起源があるので、これは非常に珍しいケースとのことです。
研究の詳細は2024年8月15日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。
参考文献
元論文
Ruthenium isotopes show the Chicxulub impactor was a carbonaceous-type asteroid
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adk4868
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
チクシュルーブ衝突体はどこから飛んできたのか?
チクシュルーブ衝突体は約6600万年前の白亜紀末期に地球へと落下しました。
当時地球を支配していた恐竜たちを含め、実に75%もの動植物種が絶滅に追いやられています。
チクシュルーブ衝突体の最初の手がかりは1970年代後半に見つかりました。
ある研究チームが白亜紀末の岩石から高濃度のイリジウムを発見したのです。
イリジウムは地球の岩石では非常に珍しいですが、宇宙を漂う小惑星にはごく一般的な元素として含まれています。
この発見から「恐竜時代は隕石の衝突によって終焉した」との説が有力視されるようになりました。
さらにその後の調査で、ユカタン半島に直径約160キロの巨大なクレーターが見つかったことで、隕石落下説は確実なものとなります。
しかし一方で、科学者たちは「チクシュルーブ衝突体がどこから飛んできたものなのか」を解明できずにいました。
これまでのところ、科学者たちの見解は「太陽系内のどこかから飛んできた小惑星」という点で大方一致しています。
特に火星と木星の間に広がる小惑星帯(アステロイドベルト)に起源があるのではないかと考えられてきました。
地球に飛来する小惑星の大半は、このアステロイドベルトからのものと判明しているからです。
また2021年には米ハーバード大学(HU)が「チクシュルーブ衝突体は小惑星ではなく、彗星の可能性もある」との説を提唱していました(Scientific Reports, 2021)。
この説によると、太陽系の外側を取り巻いているオールトの雲(※)にあった彗星が、木星の強力な重力に引っ張られて「ピンボールマシンのように」地球の方まで飛ばされたという。
(※ オールトの雲は、太陽系の外側に広がるとされる理論上の天体群で、1兆個の氷の破片が球殻状に集まった状態と考えられています。
太陽からオールトの雲までの距離は、太陽から地球までの距離の少なくとも2000倍と推定されています)
しかしこれも仮説の段階で止まっており、推測の域を出ていません。
そこで研究チームは約6600万年前の白亜紀末の地層に見られる化学的痕跡を調べることで、チクシュルーブ衝突体の起源を明らかにしようと考えました。
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