史上初、「排卵」が起きる瞬間をリアルタイムで撮影に成功!
「排卵」の瞬間をリアルタイムで撮影することに成功しました。
排卵とは、メスの体において成熟した卵子がその袋である卵胞を破って外に出てくることを指します。
これはメスの体が妊娠の準備をする上で、とても大切なプロセスです。
一方で、排卵は卵巣の奥深くで起こるため、排卵の一部始終を観察することはこれまで出来ていませんでした。
しかし独マックス・プランク研究所(MPI)は今回、メスのマウス個体から卵胞を取り出して、排卵が起きる瞬間を捉えることに史上初めて成功したのです。
その貴重な映像を見てみましょう。
研究の詳細は2024年10月16日付で科学雑誌『Nature Cell Biology』に掲載されています。
参考文献
元論文
Ex vivo imaging reveals the spatiotemporal control of ovulation
https://doi.org/10.1038/s41556-024-01524-6
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
「排卵」はどうやって起こるの?
性成熟に達した女性の体は、約25〜28日周期でやってくる「月経周期」というサイクルを繰り返しています。
排卵はその中の一つのプロセスであり、次のような順番で起こります。
まず、女性の脳から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌されると、卵巣の中で休眠していた「原始卵胞」の成長が促されます。
原始卵胞は複数個が同時に成長を始め、それぞれに「卵子」が1つずつ中に入ってます。
しかし成熟に達するのは1個の卵胞のみです。
次に、成熟した卵胞は「エストロゲン」というホルモンを分泌し、その作用で子宮内膜が増加して厚くなり、受精卵を迎えられる準備をします。
加えて、エストロゲンの作用により、今度は脳から「黄体化ホルモン(LH)」の分泌が促されます。
そして成熟卵胞は黄体化ホルモンの刺激を受けて、24〜36時間後に卵胞が破けて、中から1つの卵子が飛び出すのです。
これが排卵の瞬間です。
その後、卵巣から飛び出た卵子は卵管に入り、そこで男性の精子と遭遇して「受精卵」となると、子宮内膜に着床して妊娠が成立するという流れになります。
ところが排卵された卵子が受精しなかった場合は、準備した子宮内膜が必要なくなるので、体内から剥がれて出血を伴いながら外へと排出されます。
これが「生理」です。
生理の期間が終わると、また新たな月経周期のサイクルへと入っていきます。
女性は妊娠可能な間はほぼ一月ごとに排卵を繰り返すので、閉経する年齢に達するまでに生涯で約400〜500個の卵子を排卵していると推定されています。
月経周期や発情期などの違いはあるものの、こうした排卵のプロセスは人間を含む哺乳類で共通しています。
その一方で、研究者らはこれまで、排卵が卵巣の奥深くで限られた時間内に生じるため、実際に排卵が起こる瞬間をリアルタイムで観察できたことはありませんでした。
しかし排卵のプロセスを観察することは、妊娠メカニズムの理解を深めたり、不妊治療にも役立つ可能性があるので非常に重要です。
そこで研究チームは今回、メスのマウス個体を対象に「卵胞」を取り出して、排卵の瞬間を撮影できるかどうか検証してみました。
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