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日本人の遺伝子の8割を占める「渡来人」の遺伝的ルーツを解明!

「私たち日本人はどこから来たのか?」

そんな遺伝的ルーツの謎について、新たな事実が明らかになりました。

これまでの説によると、現代日本人は在来の「縄文人」と朝鮮半島から来た「渡来人」の混血によって誕生したとされています。

しかし、この渡来人とは何者なのか? という遺伝的ルーツはよくわかっていませんでした。

そんな中、東京大学が山口県の土井ヶ浜遺跡で見つかった弥生時代の人骨を遺伝的に解析。

その結果、渡来人は弥生時代に朝鮮半島から入ってきた「東アジア系」と「北東シベリア系」の遺伝子を合わせ持つ集団であることが判明したのです。

これは遺伝的に見ると、現代の韓国人に近いようです。

研究の詳細は2024年10月15日付で科学雑誌『Journal of Human Genetics』に掲載されました。


参考文献

元論文
Genetic analysis of a Yayoi individual from the Doigahama site provides insights into the origins of immigrants to the Japanese Archipelago
https://www.nature.com/articles/s10038-024-01295-w#Abs1


ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。


渡来人はいつどこから入ってきたのか?

現代日本人(※)の遺伝的な形成過程にはいくつかの説があります。

(※ ここで現代日本人とまとめていますが、遺伝的にまた別の特殊なルーツを持つアイヌ沖縄の方々は除きます)

その中でも特に、著名な人類学者であった埴原和郎(はにはら・かずろう、1927〜2004)の提唱した「二重構造モデル」が研究者たちに広く受け入れられてきました。

これは「旧石器時代の後期(※)に日本列島に流入した集団の子孫である『縄文人』と、弥生時代から古墳時代(※)にかけて日本列島に入ってきた『渡来人』との混血によって現代の日本人が生まれた」という説です。

(※ 旧石器時代の後期は約1万2000年前で、弥生時代は紀元前10世紀〜紀元後3世紀頃、古墳時代は3〜7世紀頃です)

現代日本人はどのように誕生したのか? / Credit: canva

二重構造モデルは元々、古代日本人の頭骨の形態分析にもとづいて提唱されたものですが、これまでの遺伝子研究により、実際に現代日本人が縄文人と渡来人の混血集団の子孫であることが科学的に支持されています。

それらの遺伝子研究によると、現代日本人の核ゲノム(※)の成分は、

・縄文人に由来する成分(縄文系成分)

・東アジア系集団に特徴的な成分(東アジア系成分)

・北東シベリア系集団に特徴的な成分(北東シベリア系成分)

の3つに大別されることがわかっています。

(※ 核ゲノム:常染色体と性染色体の全遺伝情報のこと。ヒトの染色体は1つの細胞に46本あり、うち44本が常染色体で、2本が性染色体。

常染色体はタンパク質合成などの情報を持つ染色体で、性染色体は男女の性別の情報を持つ染色体です)

現代日本人の遺伝子を見ると、縄文人の遺伝子の割合はわずかに2割、残りの8割は東アジア系と北東シベリア系が占めています。

しかしこれら8割の成分を現代日本人がどのように獲得したのか、すなわち「渡来人がいつどこからきたのか」が具体的にわかっていなかったのです。

そこでチームは、山口県にある土井ヶ浜遺跡で見つかった弥生時代人の遺骨を調べてみました。


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