プラセボの逆!偽薬なのに具合が悪くなる「ノセボ効果」がコロナワクチンきっかけに注目される
「病は気から」といわれるように、私たちの体調は気の持ちようで左右されることがあります。
よく知られているのは「プラセボ効果」でしょう。
これは、実際には薬効のない偽薬を「よく効くから飲んで」といわれて服用すると、本当に病状が回復する現象を指します。
では、その”悪魔の双子”と呼ばれる「ノセボ効果(Nocebo effect)」というものがあるのをご存知でしょうか?
これはプラセボ効果とは真逆、つまりは何の害もない偽薬を飲むとなぜか有害な症状が出てしまう現象をいいます。
実はノセボ効果は最近になってようやく注目され始めた概念です。
そのきっかけとなったのは、コロナパンデミックにおけるワクチン接種でした。
参考文献
元論文
Frequency of Adverse Events in the Placebo Arms of COVID-19 Vaccine Trials
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.43955
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
プラセボ効果には「悪魔の双子」がいた
研究者たちは長い間、患者による「治療への期待値」とその後につづく「治療結果」の間に深い関連性があることに気づいていました。
その最たる例が一般にもよく知られている「プラセボ効果」です。
具体的には、何の薬効成分も含まない偽物の薬(プラセボ)を治療薬と称して患者に飲ませることで、本当に病状の改善が生じる効果をいいます。
特に主治医から「これは本当によく効く薬ですから」と言われるほど、プラセボ効果は高くなることがわかっています。
これは患者自身が「この薬を飲めば、病気が治るんだ」という思い込みや安心感を抱くことで、治療への期待値が高まり、患者本人の自然治癒力が上がるためです。
では、プラセボ効果のようなポジティブな作用があるのであれば、その逆のネガティブな作用もあって不思議ではないでしょう。
実際にこの作用は「ノセボ効果(Nocebo effect)」という言葉で知られています。
しかしノセボ効果については、学術的な研究がほとんど進んでおらず、決定的な医学論文も出ていません。
そんな中、スウェーデン・ウプサラ大学(Uppsala University)の医学研究者であるシャーロット・ブリーズ(Charlotte Blease)氏は今月19日に、自身の新刊『The Nocebo Effect: When Words Make You Sick(=ノセボ効果:言葉があなたを病気にするとき)』を出版しました。
ブリーズ氏によれば、「ノセボ効果が学術書で取り上げられるのは今回が初めて」といいます。
では、プラセボ効果の”悪魔の双子”と称される「ノセボ効果」とは、どのように注目され始めたのでしょうか?
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