「魚の前に鏡を置いた結果…」自分よりデカい奴に喧嘩を売らなくなる
以前の研究で、ホンソメワケベラは鏡に映った自分の姿を見て「これは私だ!」と認識できることわかっていました。
さらに大阪公立大学は今回、ホンソメワケベラが鏡に映った自分の体格を基準に、それより大きなホンソメワケベラには攻撃しない判断を取ることを発見したのです。
これはホンソメワケベラがヒトと同じように、鏡に映った像を何らかの目的を達成するための「道具」として利用できることを意味します。
魚の自己意識は予想以上に、私たちヒトのレベルに近いようです。
研究の詳細は2024年9月11日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。
参考文献
元論文
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
ホンソメワケベラは「鏡の中の自分」が理解できる
私たちは自分の顔を直接見ることはできません。
そこで鏡に映った自分の姿を見て、髪型を整えたり、メイク直しをしたりしています。
つまり、私たちヒトは鏡に映っている像を「これは私だ」と自己認識し、自らの外見の情報(髪型が崩れているとか、目にゴミが入っているとか)を得るための道具として鏡像を使うことができるのです。
ヒト以外でも鏡に映る像を自分であると認識できる種はいます。
それはチンパンジーやゾウ、イルカ、カラスといったお馴染みの賢い動物たちです。
加えて2019年には「ホンソメワケベラ(学名:Labroides dimidiatus)」も鏡に映る自分がわかることが特定されました(大阪市立大学, 2019)。
ホンソメワケベラはスズキ目に属する小魚で、体長は12センチほど。
彼らは一般に、大きな魚の口の中に入って寄生虫を取り除いてくれる「掃除屋」として知られています。
ホンソメワケベラが鏡に映る自分を理解するプロセスは、チンパンジーやゾウなどの他の動物たちと一緒でした。
彼らはまず、鏡に映った自分の姿を同じ種の別個体とみなし、攻撃行動を繰り返します。
しかし、しばらくすると鏡の前で像の観察を繰り返したり、自分の体を調べたりし始めて、「これは自分だ!」と認識できるようになるのです。
このときの実験では、ホンソメワケベラの喉にマークをつけ、それを鏡で確認したホンソメワケベラが砂や石に喉をこすりつけてマークを落とそうとしたことから、鏡像を自分だと理解していることがわかりました。
さらに研究チームは、ホンソメワケベラが鏡像を単に自分だと認識するだけでなく、より複雑な認知行動を遂行するための「道具」として使えないかどうかを検証することにしました。
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