カブトガニの「青い血」が医療分野で重宝される理由とは?
カブトガニは約4億5000万年前に出現してから、その姿をほとんど変えておらず、「生きた化石」と呼ばれています。
日本では古くから瀬戸内海によく見られましたが、取り立てて役に立つわけでもなく、大きくて堅い体が漁の網を破るため、地元民にはかなり嫌われたようです。
しかし現代の医療分野では、カブトガニの血が非常に重宝されているのはご存知でしょうか?
カブトガニの血液は、赤色ではなく、淡い青色をしており、ある特殊な能力で、私たちの健康を守るのに役立っているのです。
それはどんな能力なのか?
まずは、カブトガニの血が青い理由から紐解いていきましょう。
参考文献
元論文
ライター:大石 航樹(Koki Oishi)
愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
カブトガニの血が青い理由とは?
アメリカカブトガニ(Limulus polyphemus)は、毎年春になると、何十万匹もが産卵のためにアメリカ東海岸の砂浜へと上陸します。
メスは、約5000個の小さな卵が集まってできたゴルフボール大の卵塊を砂浜に産み落とし、そこへ一緒にやってきたオスが精子を吹きかけて、受精させます。
これらの卵には腹を空かせた渡り鳥たちがよく群がりますが、一方で、製薬会社の面々は「青い血」を得るために、砂浜に上がったカブトガニを採取します。
アメリカでは、毎年およそ50万匹のカブトガニが採取され、施設内に運び、心臓付近の血管から血を抜いたのち、海に返します。
その血の色は、ご覧の通り、淡い青色です。
血が赤くないというのは、とてつもなく奇妙に感じてしまいますが、なぜカブトガニの血は青いのでしょうか?
まず、私たち人間の血には「ヘモグロビン」という赤色素たんぱく質が含まれており、これが酸素と結びつくことで、血液が赤色になります。
このヘモグロビンと酸素が結びついている状態を「オキシ型」と呼びます。
反対に、ヘモグロビンが酸素と結びついていない「デオキシ型」の場合は、黒っぽい血液になるのです。
たとえば、皮膚を擦りむいたときに出る血液は、空気中の酸素に触れるため、赤色になります。
一方で、注射器などで採血するときは、酸素と接触しにくいので、黒っぽく見えるのです。
では、問題のカブトガニですが、彼らの血中にはヘモグロビンが存在しません。
代わりにあるのが「ヘモシアニン」という、銅を含む色素たんぱく質です。
そして、ヘモシアニンは酸素と結びつかなければ「乳白色」なのですが、酸素に触れると「青色」になります。
そのため、カブトガニの血液は体内を流れているときは乳白色で、採血して外の酸素に触れると青色に変わるのです。
カブトガニの採血にはかなりの作業時間がかかりますが、得られた血液は非常な高値がつき、血液1ガロン(約3.8リットル)あたり6万ドル(約810万円、2022年7月現在)になります。
では、この青い血が一体、何の役に立つというのでしょうか?
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