政治家とカルト宗教について現場レベルの実体験談とその影響力の話。維新と真光系列。
0.まえがき
安倍氏が亡くなられてから、色々な方が事件や背景に言及していらっしゃいますが、こと政治と宗教という話になったときに、あまり現場レベルの具体的な話が出ていないなと感じました。
暗殺を前にして瑣末事といえばそうなのですが、やはり土台となる話であまりにもふんわりとしたイメージですと議論が飛躍するのではないかと考えています。
そこで、5年ほど政治に関わった実体験と、信頼できる同僚に直接聞いた話を書きたいと思います。
逆に言うと所詮は数名の体験と証言に過ぎません。
他の政党や他の地域、他の政治家と関わった人からは「うちはぜんぜん違うよ」というのはあると思います。
しかし、それを恐れるあまり一般論に終始すると誰の参考にならないでしょうから、政党や宗教の具体例はある程度出します。各議員の名前は出しませんが、属性的なものは出しますので、気になったら調べてください。
焦らすつもりはないので、先に出すと維新と真光系列です。
(真光系列は基本的には神道系ですが、宗教的にはかなり無節操で、神道系のみならずキリスト教系まで数多くの分派があります。昔から内紛が非常に多く、ここまで分派が広がったともいえます。ここでは「真光系列」との表現で統一します。この原稿中で「真光系列」と何度も出てきますが、それらは同じところかもしれないし、別のところかもしれません)
次の構成で話を進めます。
1.「政治活動・選挙運動とカルト宗教の結びつきは必要悪」について
世間で盛んに言われていますが、現場にいないと、カルト宗教が入ってきても問題視されない、本当の意味での切実さをなかなかイメージしにくいと思います。
具体的にどう必要だったのかを実体験を元に書いていきます。
ボリューム的にはメインとなります。めちゃくちゃ長いのですが、ここの共有がないと議論がいつまで経っても噛み合わないのではないかと思っています。とはいえ、長すぎると思われたら、1.1.0までは読んでいただいて、後は読み飛ばしていただいて結構です。
2.「選挙『結果』へのカルト宗教の影響力」について
実際にカルト宗教が選挙結果に影響を与えることはできるのか、その影響力の大きさはどのくらいなのか、について維新の現職国会議員を例に書いていきます。
ただし、この話の最終時点では既に政治の世界を離れており、信頼できる元同僚に聞いた話になります。その話を元に数字や記事を拾っていくと、なるほどとなりましたのでそのまとめとなります。
個人的には一番怖いところです。
3.政治家と結びついたカルト宗教の選挙『以外』の実体験について
カルト宗教とかなりの関わりを持ってしまった政治家が運営するある事業において、そのカルト宗教絡みでの体験談を書きます。その事業は本来持つ公共性を最悪の形でかなぐり捨てたものでしたが、宗教によってゆがめられた部分のみに焦点を合わせます。
宗教以外の部分も質量ともにこの比ではないのですが、それだけでこの原稿を超えてしまい、私の力量に余るため今回は何も書きません。
個人の体験としては一番憤りを感じているところです。
4.おわりに
素人の乱筆乱文ではありますが、どうぞお付き合い下さい。
1.「政治活動・選挙運動とカルト宗教の結びつきは必要悪」について
今回の事件について、政治とカルト宗教の結びつきが「必要悪」なる言動をよく見ます。そして私個人としても「カルト宗教が政治活動・選挙運動に必要とまでは言わないが、現実問題として解の一つではある」という印象でした。
なぜなら政治活動・選挙運動が素人の個人にとって非常に難しく、更にほとんどリワードがなく、逆に非常にリスクが高いからです。
このたった1行のために実体験として膨大な文章を書きます(飽きたら読み飛ばして下さい)。政治活動・選挙運動に関わった結論としては「仕事としてもやるものじゃないし、ましてやボランティアなど論外」というものでした。
今後、膨大な例を挙げますので、混乱しないために予め分けておりますと、
①仕事として、つまり政治活動や選挙運動の中核メンバーとして働く側の問題(少人数)
②ボランティアとして、つまり中核メンバーの用意した政治活動や選挙運動のメニューに従って動く側の問題(多人数)
この二つの問題があります。
巷で言われている必要悪の問題として、カルト宗教が信者を政治家の秘書に送り込んでいる、というのは①の問題。選挙運動をするのに人が足りずカルト宗教の力を借りなければならない、というのは②の問題となります。
①については、プロとしての知識経験が必要であるにも関わらず、政治の世界には教育の仕組みがなく、組織に経験知が蓄積せず、更に雇用が不安定であるため、人材が育ちにくいことによる問題です。
②については、現行制度が報酬の発生しないボランティアであることを求めているにも関わらず、統制のとれた組織でないと余りにリスクが高くなりすぎることによる問題です。
これらは政治家個人の資質によるところも大きいですが、それ以上に制度に由来する構造的な問題が大きいと感じました。
そしてこのいずれもが、カルト宗教が侵食する絶好の足掛かりとなります。
ここでは、私が経験した政治活動・選挙運動でこの問題にかかわる諸々を具体的に挙げていきます。そうすることでカルト宗教の関与が必要悪とまで言われる現状をお分かりいただけるのではないでしょうか。
1.0.政治活動・選挙運動がどのくらい難しく、危険か
まず、政治活動・選挙運動と書いたのにも意味があります。政治といえば選挙ですが、政治活動と選挙運動では全く意味合いが違います。この業界において意味合いが違うことでしくじると、前科がつきます。
初歩の初歩ですが、これは多くの選挙違反に関わってきます。
私は政治の業界にバイトから関わり結果的に5年ほどいる羽目になったのですが、その短期間、少しでも籍が同じだった同僚もわずか10名程度にも関わらず内2名が前科者になったほどです。警察の事情聴取で何日も拘束された人も数多く、選挙から少し距離があった私自身も事情聴取を受けました。
他の業界ではありえないでしょう。
後述しますが、報酬も非常に厳しく、選挙前でも政治の世界で労働の対価というのは限りなく低く、選挙中、ほとんどの人は様々な規制と曖昧な運用からほとんど無償労働を強いられます(そしてそれを悪用して、本来有償であるべきものをタダ働きさせようとする候補者もいます)。
いざ選挙期間に入れば何かと関わる人が増えますが、無報酬の人々はどうしても統制が取れません。統制の取れない大人数で様々な危険が潜む現場にいると何が起こるかは火を見るより明らかでしょう。
つまり、組織の統率が効き、ほとんど報酬なく働け、個人のリスクを問題にしない集団しか選挙活動が出来ません。
そういうのこそ政治団体の役割では?と思われるでしょう。
しかし、労組をはじめ一般的な政治団体は縮小の一途を辿っており、医師や会計士などの政治団体は金はあってもマンパワーがありません。何より一般的な政治団体を構成する普通に働いている一市民は、好き好んで特に報酬もなく、リスクだけが高い選挙の現場に来たがらなくなってきています。
結果、高齢化などの問題はあれど、結果的に宗教団体が選挙では押し上げられる形になっています。
正直なところ、数としてはカルト宗教のほとんどは票数として大きな政党に大きな影響を与えるには十分な数とは言えません。しかし組織に蓄積する経験知、組織の統制と構成員の無報酬やリスクへの許容度が完全に飛びぬけています。①と②の問題を同時に解決できてしまっています。
ここからは更に具体的に選挙準備から選挙中、選挙後にどのような人々がどのようなことをし、どのような難しさ・リスクがあるかという話をします。
特に必要ない場面で「そのためカルト宗教が」とはいちいち書きませんが、どれだけ宗教団体というものが選挙に強いかということが分かると思います。
また何をどこまで書くべきかと悩んだ結果、教育も支援もなかった当時に自分が一番困っていたこと、つまり業務の引継ぎメモを書くように極力全ての項目を列挙していこうと思います。
繰り返しますが、非常に長いですので、飽きたら次章まで読み飛ばしてください。
1.1.「政治家=議員」でもない
政治家と聞くと例えば亡くなられた安倍晋三さんや、テレビによく出演している蓮舫さん、枝野さん、松井さん、志位さんなどなど、議員バッジをつけた偉い人のイメージが浮かぶでしょうが、ああいう方々は業界では本当に超絶大スターで一般的な政治家ではありません。
テレビに出れない国会議員、地方議員。それでもまだ相当上です。まだ議員でない候補者もいます。先の選挙で皆さんの地域のポスター掲示板にずらーっと並んだ顔ぶれの中で実際に当選したのは多くても東京選挙区の6名。殆どは1~2名。東京選挙区であれば、あとの約30名は落選です。
さらにいえば、あそこにポスターを貼った時点で、候補者争いに勝ち抜いたエリートとも言えます。候補者の候補者も無数にいます。
ただし、候補者の選考基準というのは悲しくなるほど低レベルな基準であることもあります。
「企業からお金をひっぱってくるのがうまいから」などはまだマシな方で
信じられないかもしれませんが、捨て選挙区などでは本当に「XXの愛人だから」で能力はもちろんその土地のことを何ひとつも知らない候補者に公認が下りてしまったりもしていました。(少なくとも傍からはそのように見える状態でした)
よく、党勢がある政党からボロボロと新人の失言が飛び出すのはこのあたりの事情です。捨て選挙区のはずが比例復活などで当選してしまうことがあるのです。
そういった当選の仕方をした議員が、マスコミのインタビューに地元民なら絶対にあり得ないと分かる政策を披露して記者どころか支持者やスタッフからも呆れられる…というようなことも起きます。だいたいこういうのは「XXの愛人だから」みたいな選考された人です。
なお、維新の国会議員は選挙直後から「党本部の許可なくマスコミの取材を受けることはまかりならぬ」という趣旨の通達が出ていたくらいです。議員というのは有権者から主権を依託された存在なのに、そのくらい党は新人議員を信頼しておらず、ならば、なぜ取材も受けられない程度の能力しかない人を公認しているのか?と疑問なくらいでした。
私は候補者選定の現場を見ていたわけではないので、あまり迂闊なことは言えませんが、それでも地方選挙などではそれなりに話が入ってはきました。経歴や見識などが評価されて候補者に選ばれました云々は維新ではあまり見ませんでした。誰かのお気に入り、自己資金力があるか、どれだけ周りに嫌われていないか、などが大きかった印象です。それはそれで大事な指標でもあります。特に自己資金なく選挙をしようというのは、周囲の人生を狂わせかねないほど無謀です。
今、維新からの出馬する新人は、だいたい維新塾という養成機関か何か実態がよくわからないセミナーを受けるのですが、そこでは政策立案メソッドや選挙に係わる法規制や活動のやり方よりも、維新スピリッツなるものの伝承が最重要視されるそうです。しかし実際に維新スピリッツについて現場で何か具体的に聞いたということはありません。それくらいふわっとした何かです。
もちろん、お題目がある事自体は悪いことではありませんが、問題はそういう養成機関があるにも関わらず、政治家になってから役立ててもらわなければいけない政策や法の理論や具体事例はもちろん、選挙に関する法規制や対応策なども教育できているとは言い難く、毎度選挙違反で検挙されていますし、検挙されなくてもダメな事例をいつも見ます。
これは私がたまたま見ていた維新だけに限ったことではなく、他の政党でも大なり小なりそうでしょう。候補者を系統立てて教育する仕組みがなく、候補者としての質が担保されていません。
1.2.政治家の事務所で働く人
まず政治家本人がいます。
秘書がいます。いないこともあります。
事務員がいます。いないこともあります。
以上です。
冗談みたいな話ですが、議員でない、まして候補者にも内定していない政治家はそんなもので、秘書の一人、事務員の一人もいれば大したものです。本人のみというのも珍しくありません。
基本的に無職ですので人を雇うのはなかなか難しいです。もちろん、以前に当選したことがあり、後援会が機能していて、党でも役職があればもう少し余裕がありますが、それでもそこにプラスアルファがせいぜいです。(逆に言えば候補者にもなってないのに人が多いとそれはそれで何らか理由があります)
さすがに国政にでようというような人だと自分一人では本気を疑われますので、秘書は雇います。
ただ、秘書というのは将来的に地方議員なりの候補者として推薦することを前提で、金銭的な待遇的には非常に低いものとなります。月20万残業「代」なし、のような非人道的なものも珍しくありません。当然残業時間は無限大にあります。コンプライアンスなどという言葉は一切ありません。パワハラ・セクハラへの抑止力自体が候補者の理性・プライド以外に存在しません。
当然離職率も非常に高いです。つまり、知識や経験が組織に蓄積しません。
見事当選し国会議員となったとしても、公設秘書は3名です。政策秘書は資格試験がありますが、他2名はありません。政策秘書も試験免除要件がかなり多い資格です。
つまり、専門分野をもつ人材としての質が担保されたものではありません。
そもそも政治業界は構造的に組織に知識経験が蓄積しにくいのです。選挙では何かといえば前科がつき、見事当選したところで参議院ですらわずか6年。その間に秘書や事務員として勤め続ける保証もない…。転職して、あるいは落選して他の政治家の秘書になっても、零細企業ですのでこれまでのやり方がガラパゴスで役に立ちません。政治家本人もそこで働く人々もとにかく雇用が安定しないのです。
選挙というのは当選以外は目標達成率99%でもアウトです。一般企業なら、目標達成はできなかったもののまずまず優秀な成績でしょうが、政治事務所だと事務所ごと失職の危機です。もちろん惜敗率30%と99%では次も候補者になれる確率に天と地の差がありますが、先立つ物が確保できないと同じことです。100%以外は死です。特殊すぎる業界故に、転職できる保証もありません。
ですから、よほどのことがない限りは選挙では必死にやりますし、グレーゾーンについてはムチャもします。特に選挙前には労働環境という意味では、月300時間勤務だと「めちゃ楽だな」レベルで労働基準法は完全に無視されています。月400時間勤務を超えた際、ベテラン政治団体職員から「君もいい仕事をしようと思ったら、近くで数ヶ月ホテルをとって通勤時間を0にするくらいのことはしないといけないよ」と真面目な顔で言われた程度には価値観が狂っています。
業界全体がこうなので、政治家が労働者のことを考えていない、という非難はそもそも響くことのない宿命となります。なんせ労組も政治業界なのですから…。
労働環境以外も酷いもので、後述しますグレーゾーンは全て踏みに行くような方針の人も多いです。なんなら完全ブラックでも踏みに行きます。そういう価値観になってしまうのです。
「秘書は前科がついて一人前」のような狂った価値観が蔓延しておりより、スキルアップや制度改革にインセンティブが働きません。生存した(つまり当選した)政治家にとって、選挙の地雷原はもはや自分を守る参入障壁であり、前科がついた秘書は政治家の弱みを握ったようなものだからです。結果、非常にアナログで非合理に最適化してしまい、人材としても他の職業への転職が非常に難しくなります。
この状況下で票につながる活動を、カルト宗教だから被害者のことを考え云々という常識的な理性で抑制するのは難しいです。
この状況なので、トップである政治家の能力が不足していると事務所は機能不全に陥りやすいです。
しわ寄せは下へ下へといきますが、組織自体が小さすぎるので、バッファがなく次の選挙での落選率と逮捕者を出す確率がダイレクトに上がります。
どうにも政治家というと権力者のイメージが強いでしょうが、大半は赤字零細企業のワンマン社長の方がイメージにあっているような気がします。
1.3.選挙でないときなにをしているか
端的に言えば「顔を売る」こと全般となります。
ポスター貼りや、講演会とか街頭演説、多くは他人のイベントや選挙の手伝いなど真面目に活動している人は、政治関係のない地域の集まりにも顔を出します。
別にそこで支持者が増える訳ではありませんが、いざ街頭演説とかしてるときに、見たことある人だと聞いてもらえる確率があがります。人だかりが人を呼ぶところは大きいので、最初の人がいるといないでえらい違いです。正直、知らない人の街頭演説なんか誰も聞かないでしょう。
身内の手伝いも、顔を売っているのが内部か外部かというだけで同じ話です。いざ選挙となっても知らない人の応援は本腰を入れなてくれないでしょう。
ここできちんと経験を積んでいくのが候補者やそれを目指す秘書たちの一応正規ルートということになるでしょうか(教育制度などは公的にはほとんどありません)。しかしあくまでお手伝いですので、まだ気楽なものです。地元の議員のお手伝いならその過程で後援会員を得ることも可能でしょう。
このあたりがいわゆる前述した政治活動ということになります。
しかし、後援会を組織するという牧歌的なこの時点でも危ない話が少しずつ出てきます。例えば戸別訪問と個別訪問です。
戸別訪問は明確に公職選挙法第138条で禁止されています。が、個別訪問は禁止されていません(グレー)
詳しい解説は専門家に任せるとして、戸別訪問は訪問して投票を促す行為、個別訪問は訪問して後援会への加入や政治への意見を求める行為です。
こう書いただけでも曖昧な感じがするでしょうが、本当に曖昧です。
選挙期間前に「次の選挙はXXに投票して下さい」などの言動は明確にダメなのですが、投票依頼ではなく「応援して下さい」や「よろしく」でグレーになったり、しかしそれでも完全に白でもなく、人間関係によって変わります。そこをわかってる人でないと非常に危ない行為です。公職選挙法違反に問われ、前科がつき公民権を停止されるなどのペナルティーがあります。
通常ですと、個別訪問など普段の活動の中で徐々に後援会を組織することになります。政策なり人柄なりに賛同している人たちの集まりなので、活動の基盤となります。まともな後援会がない候補者は、やはりあまりよい政治家ではありません。
ある国政選挙で地元の後援会人数0という候補者の選挙をしましたが、惨々たるものでした。当然の結果として、その選挙区では前回その党が議席を取っていたのに落選しましたが、党勢いかんによっては、比例復活でそれでも当選してしまうことがあります。(その候補者はそれを見越してまともに活動していなかったのですが)
そして選挙前の時点ですでにカルト宗教は忍び寄っています。
それは別にカルト宗教が候補者を狙い撃ちしているというわけでもありません(してるところもあるとは思いますが)。候補者の方から寄っていくのです。
候補者が色々なところに顔を売る先に宗教もあるのです。後述する通り、選挙では絶大な力を発揮しますので、協力を得られるなら得たいところです。
しかし、いまだ先生ではなく候補者の時点、特に前回落選している候補者に世間の風当たりは辛いです。
肩書が「元」や「前」XX議員などですと、候補者自身がコンプレックスの塊になっていますので、誰と会っても勝手に劣等感を刺激されて、相当メンタルをやられるようです。
そんな人達にカルト宗教は特に優しい。結果、刺さってしまうらしく、活動のためという大義名分もたち、「またあそこか」と思うくらい入り浸るようになります。(行き先を偽っている事が多いが領収書の住所を入力しているとだいたい分かる。例えば、東京に行くという予定表になっているが、カルト宗教の道場がある都道府県の領収書が出てくるなど)
また、ああいう組織はご奉仕とかの名目で労働の対価という概念がないので、ポスター貼りでも何でもそれはもう愛想よく何でも無料で手伝ってくれます。組織のマネジメント能力や個人的なカリスマ性などがない、ダメな候補者ほど依存体質になっていきます。さらに、何かにつけて異様なまでに褒めてもらえるので精神的にも依存していきます。さすが本業で鍛えただけあるな、という印象でした。
これは一般人の被害者が騙されていく過程と同じく、構造的な問題だと思います。
1.4.1選挙で何をしているか(①中核メンバー編)
まず公認を得るところから大変なのですが、これは前述のように本当に下らない理由で決まることもあれば、ごくごく党内政治で決まることもあり、本論とずれます。なにより私自身直接見聞きしたわけではないので詳しくは書きません。
見事公認を得られて「さあ立候補するぞ」となったところからです。
立候補するために書類を山のように出します。正確には立候補の届け出は公示日1日だけなのですが、当然事前審査や選挙公報の原稿等、役所とは毎日死ぬほどやり取りをしています。
お役所のものなので関連書類も含め複雑怪奇で事務能力、というより調査能力がないと、まともにできないこともしばしば。出し直しも非常に多く、折れない心とダメならほかをあたる行動力も必要になります。
しかし、個人的にひどいと思うのが、それだけ事細かにたくさんの書類をだすものの、形式はもう本当にうるさいのですが、肝心の内容は何も調査されないことです。
たまに居住実体云々で選挙後に揉めていますが、自分が関わった例では
「風呂もシャワーもなく10人座れば満杯くらいの1部屋しかない事務所に、家庭持ちの40と50のオッサン(赤の他人)が同居していることになっており、そこに住んでるので二人共その地域から立候補します」
で普通に書類審査が通ったことです。
携帯契約するときですらある公共料金の領収書出せとか居住実態の調査が一ミリもない…。当然二人共そこに住んでないどころか他県に住んでいました。そもそもその事務所は商業ビルであって住宅ではないなど、一切何も指摘されませんでした。
さて、選挙を始める前に先立つものがなければいけません。
当然選挙収支報告書で報告の義務がありますので、表向きの選挙運動には、まあまあ透明に見えるお金を使います。政党や後援会を含む政治団体からの寄付が主なものになります。よく選挙啓発ポスターで寄付の禁止というものがありますが、政治家からの寄付も、政治家への寄付も原則としては禁止されており、政治団体の寄付など限定的なものだけが例外とされています。
選挙に使う資金を寄付するために、政党支部や個人の後援会など様々な政治団体間の寄付が錯綜することになりますが、政治団体間の寄付にも年間の金額規制など様々な制約があり、その党その党でやり方も違い、完全に理解するのはなかなか難しい。これもよく報道でやり玉に挙げられています。
もちろんそれで足りない分は自己資金から入れ込むのですが、この自己資金のために借金をするようなケースもありますが、借入先は非公開でもよいなど、プライバシーといえばプライバシーですがなんとも微妙なところです。なお、自分名義で借り入れ、その資金を自身の後援会や政党支部などに寄付し、そこから選挙資金としてさらに寄付する、などもあります。こうなると結果的には実際に選挙で使われているお金の出所が限りなく不透明なものになります。
このようなわけですので、政治資金の収支報告は頻繁に不備や記載漏れ指摘され、よく見るとちょくちょく小さく新聞記事になっています。
さあ資金が調いました。
選挙に入る前には選挙事務所の契約もしないといけませんが、普通の不動産屋ではややこしい使用目的のは貸してくれないことも多いので、ちょっとヤバい感じの業者が関わることもあります。
たまたま熱心な支持者やその辺こだわらない人が適切な物件持ってて貸してくれれば良いのですが、まあそんな都合良くはいきません。
こういう業者やオーナーとのやり取りはまあまあ怖く、日本語以外のやりとりもあったりします。
さて事務所がきまりました。
街宣車でマイクを取るウグイスさんやドライバーや各運動員に報酬を払うものも事前に届け出なければいけません。
ここで登録していない人や、届け出を超えた金額を払うと即選挙違反となります。
でもそんなもの選挙前に確定するわけもなく、恐らくそうだろうというあたりを広めにとって決め打ちで届け出るしかありません。
しかし人の予定などイレギュラーなものです。予定外の人が来て予定外の出費があった場合、訂正届けを出し忘れるとアウトです。
さあ選挙…ではもちろんありません。
配るチラシは?ポスターは?選挙広報の原稿は?街宣車は?街宣車の飾りは?選挙事務所の外壁デザインは?推薦はがきの手配は?名簿は?宿泊がある場合の宿の確保は?
このどれもが法律の細かい制限が多く、フォントが少し大きい程度で違反になります。街宣車の改造も規制が非常に厳しい。
このへんになると選挙歴10回20回の歴戦の秘書でも各選挙で微妙に違う規制を覚えきれる訳では無いので業者の方が強くなります。
しかし、業者任せだともし業者が間違っていたときにエラいことになるため、自分でも調べながらやらなければ怖いです。なお、このへん扱う業者は選挙のたびに高級外車を買い替えるほど儲かるようです。
余談ですが、選挙にジャニーズの公演が重なるとその地域から宿が消えます。
さあ今度こそようやく選挙。
しかし、まだ一般にイメージする「街頭演説して、チラシ配って、投票を訴えて…」の選挙運動には届きません。
演説の場所などは基本的に他党の候補者などとも調整し、バッティングや無意味な争い・混乱が起きないように調整しなければなりません。もし乱闘でも起ころうものなら全国の嗤いものです。
その都道府県の党の事務方が頼りになる集団なら、選挙入ってからはある程度楽です。
どういう日程でどこの事務所と協力して何をやるというのを決めてくれる、または決める場を作ってくれていますので、打ち合わせつつこなしていけば間違いはありません。党の偉い人が応援演説に来るときなどもちゃんと音頭取ってくれます。
そして維新はここがとにかく弱かった。
中心部でもあまりいい話は聞きませんでしたが、大阪を少しでも離れるともう無法地帯でした。都道府県の党選対事務所に選挙中なのに人がいることがまれ、などありえない事態が頻繁に起こるのです。
ここが頼りないと自分たちで調整しなければいけませんが、前述の通り各政治家の事務所というのは組織の体をなしていないことも多く、ちゃんと権限ある人と打ち合わせできることすら稀です。
この状態ですと、党の偉い人が応援演説に来る…など揉めるだけ揉めて現地でもグダグダでロクなことはありません。
そしてこのような無法地帯になると選挙違反が忍び寄ってきます。
これまでは、事務所のメンバーや応援に来た他の事務所の秘書など中核メンバーで行う仕事です。(前述の①にあたります)
1.4.2選挙で何をしているか(②ボランティア編)
次はもうすこし多くの人が関わる実働的なところ、ようやく一般に選挙運動とイメージされるところを見てみましょう。(前述の②にあたります)
まず、選挙運動にどのようなものがあるかを列挙します。
街頭演説 …説明不要。実力がとことん出る。
箱物 …会場を借りて行う演説会。熱心な人や動員で人が入るので、ここで盛況だからと勘違いしがち。街頭演説ガラガラでここだけ盛況だと落ちる印象。
ビラ配り …説明不要。ただしポスティングは禁止。だがよく見る。
桃太郎(練り歩き) …商店街とか練り歩いて握手していく。禁止されている気勢を上げる行為もよく見る。
選挙カー周回 …みんな大嫌いなアレ。
推薦はがき送付 …税金で出せるので大人気。正直2重の意味で迷惑。名簿の出どころで揉めるNo1
電話作戦 …みんな大嫌いなアレ。名簿の出どころで揉めるNo1タイ
ポスター貼り …信じがたいことにあの掲示板のポスターは当日自分たちで張りに行っている。選挙区が広いと一日で終わらず、貼ってないところから苦情が出る。剥がされたり落書きされたりするたびに貼り直しに行く。
SNS …最近解禁されたけどすごく微妙。
この辺は一人や少数ではできません。例えば参議院選挙などでは10万20万枚のビラを配ることができます。配るのも大変ですが、配る前にビラには証紙を貼らないといけません。肝心の証紙は公示日にようやくもらえます。つまり選挙期間1日目です。みんな手分けして大忙しで証紙を貼ります。選挙だからこんな馬鹿なことを真面目にやっていますが、選挙以外でこんなことをやってたらただの炎上プロジェクトです。
期間が限られる中、労力的な意味で大変で、こうしたところでこそ、政治に関心を持つ市民ボランティアが活躍するのがあるべき選挙の姿…と、そのようなイメージをお持ちの方も多いでしょう。
運動それぞれに注意事項はあり、もちろん逸脱すると選挙違反になりますが、実際、これらは①の仕事に比べれば、比較的難易度の低い活動です。ここまで準備がたどり着いた時点で先は見えていると言っていい。
これらの内、更に難易度の低いものをボランティアの人々にやってもらうことになります。誤解を恐れずに言えば、気持ちよく選挙運動というコンテンツを楽しんで充実感を得て頂くためです。証紙貼り&候補者が演説している周辺で自分で証紙を貼ったビラを配るというのは充実感を得られる鉄板のコース。
後述しますが、支持を呼びかける電話をかける通称「電話作戦」などは作業ボリュームもさることながら、怒鳴られたりつらい思いをすることが多く、そこそこの練度がある人でないと厳しい。
逆に事務所の電話番なら簡単では?と思うでしょうが、「応援してます!」などという電話はほとんどなく、選挙カーがうるさい、選挙カーが迷惑な場所に止まっている、事故を起こした、演説内容が気に入らないなど、ひっきりなしにトラブルの対応(要は平謝り)に追われます。
また、先程の電話作戦や推薦はがきを送付するために集めた名簿には、死人や選挙権のない外国人や暴力団関係者、それこそ聞いたこともないカルト集団(名前が知られていないだけで無数にあります)など、めちゃくちゃややこしい先が混じっており、これも酷いクレームの電話となり電話番に襲いかかります(2~3時間怒鳴られっぱなりなどザラです)。ここでの受け答えを間違えた結果、事務所に抗議の訪問(ほとんど襲撃)もありえます。というか、ありました。
(なお、名簿問題はあとを引くことが多く、怪しげな筋から提供された名簿をつかったことで後々強請まがいのことをされている人もいました)
こういうのは任せられません。どうしようもないときは任せることもありますが、フォローが欠かせません。逆に言えば、後援会などに単純に人間としてのスペックが高い方がいらっしゃってこのあたりを卒なくこなしてくださると非常に楽。こういったきちんとした人が後援会に入ってくれるくらい普段からきちんと活動しているとカルト宗教に頼らなくても良くなってくるのですが、言うは易し行うは難しです。
前述の鉄板コースである、「証紙貼り&街頭演説でのビラくばり」にしても現地トラブルというのは必ず発生するため、中核メンバーである事情をよく分かった人を引率に割かなければなりません。
しかし、その「事情をよく分かった人」が貴重なのです。秘書にしても経験が少ないと「事情をよく分かった人」とはいえません。
この実行部隊として業界団体やら労組やらの政治団体が人員を割いてくれるとベストでした。組織として経験が受け継がれており、組織の人間として統制も効いている。リーダーもいる。しかしこれらはどんどん力が衰えてきています。
素人のボランティアの何が困ると言って、集団としての統率がとれないことです。選挙そのものが修羅場みたいなものですから、感情的な対立や喧嘩はどうしても起こります。政治団体に所属しているなら、組織の理論で収まりもしますが、ボランティアはどこにも所属していません。自分たちの後援会でも初めての選挙などであれば下手をすればそのまま空中分解もあり得ます。もちろん、候補者に責任感と能力があり、もめ事が起きても統率力を発揮するような人ならよいでしょうし、そのようにあってほしいものです。(つまりそれは稀です)
そこで浮上してくるのがカルト宗教…というわけです。
候補者や秘書や他事務所や党と中核メンバー全てがダメで労組その他政治団体にもまともな支持者がいないと、中核にもカルト宗教が入ってこざるをえません。別に宗教だから悪いと言っているのではなく、かつて破壊活動を繰り返したような極左・極右団体が選挙で見え隠れするのも同様の事情です。
また逆に世間一般ではあまりよく思われていないでしょうが、維新とはまた別の党で、部落解放同盟の方と一緒になったこともありました。その現場で横行していたセクハラに対して「おっちゃんは解放同盟の看板背負って手伝いに来てる以上、こういうのは見て見ぬふりでけへんのや」と解決に尽力していたりもしました。
その団体ならではの性質は良い方向にも悪い方向にも影響を及ぼしますので、私個人としては、選挙運動の時点で何かの団体が入ってくること自体には大きな問題があるとは考えていません。問題はその団体の意図と、悪い影響を排除しようとする候補者の覚悟です。
悪意を隠し持った団体に対して、喉から手が出るほどほしい選挙協力を断ってまで毅然とした対応が取れるか。悪意に気づかないふりをして受け入れ、ずぶずぶに侵食されてしまうか。こればかりは外からは見えません。
1.5.選挙で何をさせないようにしているか
選挙というのは目隠しされた集団を連れて地雷原を歩く行為に似ています。
選挙に絡んで報酬を払うことができるのは、選挙従事者として、車上運動員(ウグイスさん。1日15,000円)選挙事務員(1日10,000円)。(運転手の費用は公費から出ます)
他には手話通訳などもいるがこれは一般的でないので割愛。またこれらは人数制限もあり、数は選挙によって異なります。
(制度の趣旨として資本力のあるところが金にモノを言わせた選挙ができないようにするためです。実態にあってるかどうかは別問題)
他に労務者という完全単純作業をする人がいてこれも同様に報酬出せます。お茶くみ専門とか電話取次専門とかですが、これは事前届出が必要ありません。
(まあ、通常そんな人員を事務所に入れる余裕はありませんが…。逆に金をばらまきたいとすると正規の方法ではここしかありません。正直無意味だとは思いますが)
そして重要なのが、実際にチラシを配ったり支持を訴えたりする人たちは選挙運動員となって一切の報酬は支払うことが出来ません。100%選挙違反となります。
例外はウグイスさんくらい。選挙事務員は金はもらえるが支持を訴えることは出来ません。
なお、もともとその候補者の事務所で雇っていた秘書とか事務員とかは定義で言えば選挙運動員や事務員になるはずですが、これが報酬もらったから、一日1万円こえたからと検挙されたことはないらしいです。
実際この人たちは一日15時間数ヶ月休日0とかで選挙前後は月300~500時間働くので、この制限が適切とは到底思えません。
しかしこういう規制と実態の乖離を放置していて、何かあったら「いや選挙違反だから」で前科つけることもできてしまうのが大変よろしくないと思います。
更にそもそもまともなウグイスさんが1日15,000円で来てくれるわけがないという問題もあります。
1日15,000円だったらまあまあもらえてるのでは?と思うでしょうが、ウグイスさんが声を出せるのは8:00-20:00。単純にそれだけで12時間労働です。拘束時間はもっと長いし、一人だと確実にどっかで体を壊します。
12時間延々と街宣車に乗って、違反となる文言を避けながら、支持もしてない政党の名前も知らない候補者の内容のない文章を淀みなく読み続け、交通状況や場所によって文言も変えて短時間で心をつかんでいくプロ。
野球の試合で考えてみれば、リリーフカーに乗りながら選手の呼び出しに加えてアナウンサーの実況も兼ねて延々と喋り続けるのを一日3~4試合続けるようなもの。そして、仕事が安定的にあるわけではない。たまの選挙で超重労働をして一日15,000円で生計が立てられるわけがないのです。
実際はどこの選挙でも、まともにやってるところなら15,000円ではありません。もっと払っています。
やり方は色々で、選挙終わってからこっそり現金で渡したり、後日別の異様に割の良い仕事を斡旋したりなどですが、その辺はウグイスの会社も心得たものです。
逆に言うと心得ていないところだと、政治家がアレだとアレなやり方をしてもそれを止められず案の定捕まっています。(元自衛官の候補者が選挙違反で捕まっていましたが、ああいう感じになります)
なお無償で地方議員とかで覚えがある人が乗ってくれたりしますが…。まあこればかりはその人のスキル次第ですが、やはりプロはすごいなと思います。
(なお、ウグイスさんの休憩中などに浮かれたボランティアの素人を喋らせると大変なことに…。でもなぜかやりたがるんですね)
そして繰り返しますが、ウグイスさんや運転手以外は無報酬です。
炎天下(参議院選挙はだいたい夏です)で朝6時から準備して8:00-20:00まで頑張っても0円。現地では支持しない人から暴言の1つや2つは必ず浴びせかけられ、明日どころか今日のスケジュールすら見えない中で走り回ります。
先ほどさらっと流した電話作戦にしても、大きな選挙区だと選挙期間中10名20名が延々と一日中名簿にそってローラーで電話していきます。
ノルマ的なものも自然発生しますし電話口で怒鳴られることもしばしば。普通にテレアポのバイトをすれば比較的高給をえられますが、選挙だと同じことをしても0円です。
そして、0円で行う仕事というのはやはり無責任になりがちです。そうでなければ歪んだ正義感を育んでいくようなこともありました。そして内部でトラブルになり…というパターンはお約束。
労組その他政治団体の人というのは「それでもこの活動がまわりまわって自分たちの利益になる」という思いがありますし、大なり小なり政治団体職員としての報酬もありますので規律は守られますが、前述の通りどんどん力は落ちています。
そして…カルト宗教が…という流れは先ほどの通り。
まだここまでは、まだ理屈としてはマシな部類の話です。
ここからは一見下らないことばかりですが、ひたすらにリスクの話となります。
例えば選挙の際は運動員や労務者へお弁当を出せます。
衆議院選挙。普段10人ですが、その日は協力者が多くて16人いました。お疲れさまと全員にお弁当を出します。はい、選挙違反。
ならば、自分は我慢してお弁当は制限の15食に。毎日同じので飽きたという声があり、今日だけは味噌汁付きカツ重ご膳1020円。はい、選挙違反。
じゃあみんなで食材持ち寄って炊き出し。寄付の届け出しました?してない?はい、当然選挙違反。
XX先生からうなぎの差し入れです!はい選挙違反。(時期も時期だしありがたいけどやめて)
XX先生からカップ麺の差し入れです!フリーズドライの味噌汁での差し入れです!(なんだかんだ一番ありがたいけど)はい選挙違反。
じゃあ外で自分の金で食べましょう。二人で王将へ。唐揚げ一皿頼んで分ける。消費税込み501円?じゃあワリカンで俺251円出すね。残り250円出して。はい、運動員買収。
連日激務の人が帰ってから休憩中に食べてもらうお菓子を用意した。ポテチ150円…OK。カステラ250円…OK。いちごのショートケーキ480円……うーんやめてほしいけどOK。モンブラン510円。はい選挙違反。
そんなしょうもない…と思ったかもしれませんが、こんなのばかりです。
選挙運動関わってる人数名でご飯食べに行ったらまあまあの確率で警察が尾行しています。このへん問題視するかどうかは警察の胸先三寸です。(リーク次第)
もっとしょうもないこともたくさん。
例えば、夏場の選挙は暑くて大変だから熱中症の問題もあるし、使い捨てのウエットテッシュを買いたいと現場から申し出がありました。
ここで現場がボトル式のものを買ったなら恐らく問題ありませんが、一袋10枚x3袋くらい入ってる100円均の小分けされたタイプを買ってたら注意はしないといけません。
個人のものに出来てしまうなら買収に「使える」からです。チラシと一緒にその小袋渡してたら本当にそうなります。もちろん運動員が持って帰ってもアウト。
以前チラシ兼ウチワ問題なんかあったのもそのギリギリを攻めた結果です。
連日ニュースやワイドショーでガンガンやられてたのが、この「しょうもないこと」のなれの果てなのです。
まだまだ続きます。
選挙活動が佳境を迎えて、練り歩きの行列に親友を誘いました。快諾してくれ一日一緒に汗を流し、別れてからlineで「忙しいのにわざわざありがとう!また今度サイゼリアで打ち上げしよう!ビールおごるね」
はい、運動員の買収約束で有罪。証拠もバッチリ残ってるしもう確定で前科者。罰金50万(報酬は0なのにね)。公民権停止。しばらく投票できません。学生さんなら就職でも大きなハンデとなるでしょう。
よく高校生が選挙の何かをしようとして学校に止められてけしからん、みたいな話がありますが、これは学校側に同情します。
可愛い学生を前科者量産マシーンにつながるベルトコンベアに放り込むようなものだからです。特にSNSとかで迂闊なことでも証拠が残ることが多くて有罪に持ち込みやすく、選挙制度が時代とあっていません。
選挙はある種、重機を使う危険な工事現場のようなもので、本来なら資格を持ってないと現場に入れないという性質のものなのが現状です。
「自分は何も知らずに好き勝手やってたが無事だった」という例はもちろんあるでしょう。それは生存性バイアスというものです。
良心ある人々が気づかないところで間違いを犯さないよう必死に考え抜いた結果、そして単純な運です。
こうした細々とした「しょうもないこと」を「選挙運動に関わっている人全員」に守らせて(当然めちゃくちゃ嫌がられる)、選挙違反を出さずに選挙を乗り切るというお仕事を通常業務の傍らしている人たちがいるのです。(往々にしてその努力を候補者自らがぶち壊したりもしますが…)
更にしょうもなく、更に重要なお仕事があります。内部不平分子の管理です。
選挙が近くなると「1人秘書、1人事務員」という通常では豪華な事務所でも当然人が足りないので、候補者も秘書や事務員をふやそうとします。どこからともなく自薦他薦で秘書が湧いてきます。
これがもう地獄中の地獄です。
候補者本人が各所の選挙手伝いで深く知り合い、人となりをきちんと見極めているのならまだましですが(ただ、政治家の人を見る目というのは何の根拠もありません)、ここまでどこの事務所にも属していなかったり、選挙直前でどこも人が必要な時期に他の事務所を追い出される人のまともである確率は非常に低いです。また、「元」「前」XX議員であることも多く、態度が過度に卑屈であってもプライドが山のように高い人が多いです。だいたいコミュニケーション能力か実務能力に致命的な欠点があります。
結果、だいたい他の人と大揉めに揉めます。
他の人も極限状態ですから、仕事のできない人、まともに意思疎通が図れない人、無意味にプライドの高い人への当たりはきつくなりがちで、逆恨みされることが非常に多いです。
当然こんな人を連れてきた候補者へのヘイトも溜まります。組織自体が求心力を失っていき無法地帯化が加速します。
ただでさえ危険な選挙で内部紛争を起こすとどうなるかといえば、警察へ選挙違反のリークが横行します。なんせわざと間違えれば選挙違反などいくらでも作れますし、ウグイス等の報酬は違反が前提のようなものですし、選挙運動員は何もわかってない人が多いので、証拠さえ押さえれば容易に有罪に持っていけます。
極力、違反をしない、させない。怪しい人から資料や情報を守り、さりげなく牽制をする。不平分子化しそうな人のメンタルのケア…
恐ろしいことに、これは党、候補者、秘書、事務員その誰の役目でもありません。(おかしな話ですが)
その場にいて月300時間400時間500時間勤務という激務の中、正気を保っている人の役目…。アルバイトで入ったあなたの役割かもしれません。冗談抜きで。
酷い話が続くのですが、今まで列挙したようなことは、同じことをしていても警察によって逮捕されたり逮捕されなかったりします。
「当選したら逮捕されない、落選したら逮捕される」とよく言いますが、その傾向はあるものの、当選しても運動員は立件され忘れられた頃に略式起訴で有罪はついてる、とかもあります。
有罪までいかなくても何日も勾留される程度なら無数と言えます。
最終日の日曜日、選挙事務所を当選を見守る会場に模様替えしている最中に使っているPCは「どこかへ失くしてしまう」のが当たり前の現場…。関西の選挙なのに開票日にPCは横浜にある、などはザラです。
選挙は祭りだ、と公言する人を維新でよく見ましたが、個人的には全く賛成できません。
1.6.選挙後何をしているか
さて、選挙終わってお疲れ様。
しかし事務方の人は収支報告であと数週間ほどはさらに忙しい…。
「領収書の住所表記は1丁目1番1号ですが、収支報告は1-1-1ですね。訂正してください」コインパーキングの領収書とか最近はマシになったけど、領収書としてイマイチなのも多く、嫌がらせのような指摘がネチネチと…。(前述の居住実態とか他に見るところあるのでは…?)
さらに下手したら選挙中は存在していたけど選挙後は潰れていたとかザラでこれもまたうんうんと唸る。
個人の経費精算もあらかじめ方針だててやらないと基準がブレて買収に近づいてしまうこともあります。
そしてこれもまた酷いのですが、選挙収支報告書は裏帳簿などがないか、意図的な記載漏れがないかなどの実態の調査はされません。ただ寄付や経費の領収書などと収支報告書の整合性があっていれば、せいぜい通帳残高と収支報告書の辻褄があっていれば、その記載外でどのような金銭のやり取りがあったかなどは一切問われません。例えば寄付として100万もらっても、先方でも収支報告に載せない、こちらでも収支報告に載せない、で整合性がとれてしまいます。
もっとも、これらは調査のしようがない、というのもあるでしょう。裏帳簿を見つけて…といっても、政治家の事務所というのは裏帳簿すらまともに作れないほど処理能力のレベルが低いことも多いです。なんせ人が定着せず育っていないので。
事務所を引っ越す際に、キャビネットの奥から50万100万と誰も知らない何の記載もない現金が出てくるなどはザラです。「政治資金パーティーで直接現金を受け取ったときのものかなぁ?」などと心当たりはいくらでもあります。
ここは警察がある程度の確証をつかんで踏み込んで調査するごくごく一部以外は野放しです。先程のウグイス問題を考えても立証がかなり難しいのは想像できると思います。
この問題は選挙に限らず通常の政治団体の収支報告書でも同じです。企業献金禁止などを謳う維新も大好きな政治資金パーティーでは、実際は収支報告に記載された金以外の金が大いに飛び交っています。1人1万円の資金パーティーで受付手伝いに行ったら参加予定者に「XX株式会社様20名」の記載、で実際来たのは1名。持ってきたお金は50名分、などザラです。政治資金パーテイーは20万円以下なら氏名住所の公表が不要なので、記録は20万までにして、残りの30万は自由に使えるお金になるわけです。「きちんとした」事務所なら裏帳簿に書いたりもしてるのでしょうかね。なお、これは複数の資金パーティーで同様のことをしていると思われるのは見ました。そもそもこのへんは警察どころかマスコミも含めてみんな知っているのに誰も本気で改善しようとしない。とはいえ、たまにではありますが定期的に記事になっているので、なんとかしようと努力している人たちがいるのは理解します。
収支報告書には特定の資格を持った税理士による政治資金監査もありますが、基本的に政治家がお客さんでほぼ無意味です。事務所の現地調査自体もやってません。前述の資金パーティーを始め活動内容の実態調査もありません。基本ヒアリングのみですが、ヒアリングでもやってるだけマシです(ヒアリングすべき項目がない、と1/3程度はヒアリングすら行っていない)。そもそも会計責任者が名前だけ貸していて実務をしていないことも多く、また何も知識経験を持たないものが適切な指導もなく会計責任者として実務を行っていることがよくあります。これらは私の経験や感覚だけではなく、総務による「政治資金監査に関するアンケート」集計結果でも税理士より指摘があります。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000576326.pdf
やってるのはただ膨大な領収書と収支報告書の辻褄と、良くて銀行残高確認だけです。現金も確認したりはしません(なので現金が飛び交い記録のない現金が手に入りやすい資金パーティーなどが重宝される)。当たり前ですが、政治家のように当選者の定員が決まっているような業界では、監査に不適合を出す=自分の失注でしかないので、費用を監査対象が負担する監査制度自体がそもそも機能するはずがないのです。そもそも収支報告書はプライバシーの問題もあり、人件費周りがほぼ公開されず、身内や勤務実態のない者の人件費や、政治家が運営する営利事業の従業員の給与が後援会から出ているなどもあります。それらを精査する仕組みは一切ありません(そもそも雇用保険や社会保険などが適切に処理されていないことも多い)。かと思えば1円以上の領収書の全数調査を求められており、一般的な会計原則からいえば無意味な行為に多くの労力が割かれています。はっきりいえば、みんなで労力と金をドブに捨ててやってる感を出すための儀式です。
もっとも、選挙運動費用収支報告書に関して言えば、ある意味警察が監査してくれているともいえますので、多少は監査の実態があります。選挙違反で挙げられていますので。逆に言えば選挙以外ではそれがないのです。
収支報告周りが終わったら、ほとぼりが冷めた頃に、ウグイスさんたちへ追加の報酬を何らかの手段で渡したりというお仕事も残っています(あまりに話が長くて忘れていたのではないでしょうか)。ウグイスさんに限らず、様々な業者と後処理が残っています。適法なものも残念ながらそうでないものも。
1.7.必要悪
これまで長々と書いたリスクの話、候補者本人も含む中核メンバー(①の話)でも、ボランティア(②の話)でもそうですが、カルト宗教の特徴である
・組織に安定的な身分があり、知識経験が組織に蓄積される
・指示系統が存在し、秩序だって行動できる
・各個人が無償労働をいとわない
・各個人が前科をいとわない
で殆どが解決してしまいます。価値観が狂っている者同士うまくいく、というのは嫌味すぎるでしょうか。
政治団体というものがどんどん力を失っている今、カルト宗教は相対的に存在感を増していっています。人間の価値観や技術がどんどん変わっていっているのに、選挙制度や法規制が変わらないのですから、当然です。しかし、ここが変わらない限りは、どれだけ騒がれようともカルト宗教は姿を隠して選挙に入ってきます。
中核メンバーについても、比較的組織がしっかりしている自民党でも秘書が統一教会の人間だったという話があるくらいで、教育システムや身分保障がないという構造的な問題でしょう。
「あの先生の周りにはそれらしい人はいなかったよ」と思っていても、あなたが一番信頼していた仕事のできる公設秘書がカルト宗教から派遣された信者であったり(通常の政治事務所に経験や知識が蓄積しにくい以上、不思議なことではありません)、一般の運動員が知らないマンションの一室でひたすら電話作戦をしている集団がカルト宗教だった、などというのは珍しくもありません。カルト宗教を隠して選挙運動をするメソッドもどんどん進化しているようです。
(実際、カルト宗教が行う電話作戦の携帯電話を手配したこともありますが、非常に熱心かつまじめで、システマティックに経験値の高い仕事をする…。そして表の選挙事務所にいる人の大半は存在すら知りませんでした。少なくとも知らないフリはしていました)
逆に考えてみましょう。2022年の選挙でも2019年の選挙でも、表現の自由を訴えて何十万票もとった議員さんたちがいました。理想的な選挙に見えるかもしれません。
仮にこの人たちの支持者が「表現規制を進めるカルト宗教などに選挙を支配されてはならない」と続々と中核メンバーやボランティアに参加したとします。
選挙違反の嵐でその議員さんごと消えてしまいかねないのは、想像に難くないかと思います。
しかし人数にしても票数にしてもその足元にもおよばないであろう小さなカルト宗教ですら、実際に日本の選挙の一翼を非常に安定的に担っています。
(なお、野党はカルト宗教関わりない、は嘘なので…)
選挙でその候補者が落選しても彼らは失職せず、経験と知識が組織に積み上がります。無報酬でどれだけリスクの高い活動をしても文句の一つも言わず、仮に有罪になったところで、徳を積み、法敵と戦ったと勲章になるだけです。
2.「選挙『結果』へのカルト宗教の影響力」について
2.1.政治活動・選挙運動の影響の薄さ
1は政治活動・選挙運動中の話でした。では、カルト宗教には選挙結果を左右する力はあるのでしょうか。
まず最初に、1で長々と書いた政治活動・選挙運動の効果というのは非常に測定しにくいです。そもそも一発勝負ですので、電話作戦をやったパターンとやらなかったパターンで票数の変化を見る…というような実証ができません。活動に違いのある複数の候補の票数から…と言っても同じ選挙区同じ政党同じ知名度…などの適切な条件はなかなか揃いません。そうなると取り合えずやれることは全部やるしかないのです。なので、散々逆効果だと言われている選挙カーも今だ元気に周回しています。
あれだけ頑張ってか、と思われるかもしれませんが、実際問題、選挙は風によるところが大きく、立派な候補者が一生懸命に活動しても所属政党に大逆風が吹いていれば、落ちるときは落ちます。政権交代が起こったときの自民党や近年の旧民主系はそんなかんじだったでしょう。
どんなによろしくない候補者でまともに活動していなくても、逆の状況なら通ります。近年の維新はまさにこんな感じです。
ただ、個人的な感想としては選挙以前にどれだけその地域で真面目に活動していたかはそれなりに影響しているような気はします。
やはり組織票ではないその候補者ファンの固定票が上増しされている感はあります。
しかしその程度の効果ならばカルト宗教がいくら選挙活動をサポートしたと言っても政治家個人や政党の所属議員、ましてや政党自体に影響を与えることはできないのでは?との意見もあると思います。
私自身もそう考えていましたが、現場を離れてからある選挙を眺めていて、地味ながら衝撃的な結果があり、未だ現場に残る同僚に話を聞いたところ、そうとも言い切れないという思いを持ちました。
2.2.参議院全国比例での票数の考え方とまさかの結果
ここからは具体的な話になります。
まず前提として、参議院選挙の比例代表では、まず全国の投票結果から党としての議席数がきまります。
比例代表の投票では党名ではなく個人名を書くこともでき、この個人名の投票数で同じ党内での争いとなります。
この制度のため、自民では個人票を6万票とったが落選し、維新では個人票3万票で当選した、が普通にあります。
2019年の参議院選挙で維新から比例代表で立候補した現職のA議員がいました。
A議員は現職で地元の都道府県では顔役でしたが、控えめな表現で言えばあまり人望がなく、その都道府県では地方議員が分裂するような形で内紛ばかりしていました。明らかに内部関係者の暴露アカウントができたりと色々騒動がありました。
(ここは個人の印象もありますので、これが真実だの事実だのというつもりはありません)
A議員は2013年の選挙で同じく比例で当選していましたが、その際は3万票をすこし超えてる程度の得票でしかなく、ぎりぎりでの当選でした。
このボーダーラインの前後5000票程度に7名もの候補者がおり内3名が当選、4名が落選です。このあたりは次の選挙で結果がひっくり返ってもなんら不思議がない範囲です。
なお、A議員は2007年、別の政党から同じく比例で当選しています。この際は7万票程度を獲得していました。
ざっくりと6年で45%程度に減ったわけですが、得票自体は党も変わっていますので、あまり意味はありません。
A議員の都道府県別の得票数を見ると、地元票は2007年の選挙では3万票程度、2013年の選挙では1万票程度と1/3になっています。
逆に大阪の得票を見ると、2007年は6000票程度、2013年は4500票程度と、得票全体に占める割合はあまり減っていません。
もっとも実際の活動をよく見られている地元の票が激減していることがわかります。
もう少し言えば、地元の地方議員たちが応援してくれなくなったのです。
地方議員は無所属も多くあまり目立ちませんが、実際に活動するのはこの人達です。この人達の熱心さが地元の得票に直結します。
そして評判で言えば二回目当選以降の方が悪かった。実際にその都道府県の維新は組織としてガタガタでした。
比例・全国区とはいいますが、実際は地元の票をどれだけ固められるか、というところが非常に大きいのです。産業別などでの支援があったり、TVによく出ていて知名度がある、あるいは先程の表現の自由など特定の政策で非常に名が売れているなどでない限り、選挙区とやることはさほど変わりません。非常にざっくりといえば、地元票はその議員をよくする人の評判、地元以外票は知名度と組織票と言えるでしょう。
だいたい政治団体は事前に応援する候補者と「応援するから当選したら当団体の推進する法案の成立に力を尽くすこと」のような政策協定を結びます。これは公表されることも多いですし、だいたい選挙事務所に為書き(下記画像参照)が貼ってあるので、どこが誰を応援しているかはわかります。
あの労組が何票もってる、あの政治団体が何票もってるなどは過去の例からもおおむね分かります。
A議員については、特に目立ってどこの政治団体から新たに支援を取り付けたなども聞こえてこず、地元の評判も思わしくない、という状況で、維新の党勢拡大にも関わらず、あまり票を伸ばさないことが予想されていました。
3~4万票がせいぜいで、維新の2019年の当落ボーダーと言われていた4~5万票には届かないだろうと。
ただ、昔ながらのドブ板選挙もきちんとする人ですので、底は固く、ギリ当選はありえるかなぁ?くらいの感触でした。
ところがです。
2019年、A議員の得票はなんと8万票を超えました。1位の非常に有名な(悪名高い?)候補者を除けばダントツです。しかし、地元では2万票にも届かず、割合で言えばこれまでで一番低いくらいです。
大阪が一番多く、しかしそれでも2万票余。他ではどこがということはなく、全国まんべんなく増えています。
遠くの地方で参議院の全国比例で個人名を書いてくれることなど組織票以外ではまずありえません。
実際、有名人以外では、みなさんがお住まいの地方から遠く離れた地域の比例候補者の名前などそもそもご存知ないでしょう。
大阪の得票もおかしいです。維新の党勢が強くなっているとは言え、十分強かった2013年(都構想1回目が2015年です)が4500票。
実際、2019年に大阪の選挙区で立候補した候補者は同姓の比例区候補者Bを連れ「選挙区も比例区もB」という比例区の候補者としては破格、これで落ちたらどれだけ人望がないのか、というレベルの超高待遇で選挙活動を展開しましたが、それですら5万票弱(B候補者の得票の80%超)です。比例区で個人名を書いてもらうのがいかに難しいかということです。
私はこのとき、すでに政治の世界を離れていましたが、元同僚からA議員について連絡が入りました。
それによると「A議員の奥様が水面下で全国の真光系列の一派を回って投票支援を漕ぎつけたらしい」とのことでした。それが推定で3~5万票だと。
実際にことの真偽は分かりませんが、数字としてはしっくりきます。
またA議員が真光系列の式典で非常に高待遇の重要人物として紹介され、真光系列から選挙応援を公言されていたことは確認しています。
日本は個人の投票の秘密が厳に守られていますので、その応援がどこまでの組織的な投票なのか、選挙運動の支援にとどまるのかは誰にも分かりません。少なくとも誰が誰に入れたという証明は理論的にできません。ここにも統制の効く組織の強さがあります。
2.3.カルト宗教の維新候補者たちへの影響力
しかしこの話が出た以上、維新の比例候補者たちへのインパクトは想像するにあまりあります。
先程話に出したB候補は、維新の比例候補として最大級の支援、つまり維新が最強の力を持つ大阪で、同じ姓の候補者が投票を呼びかける(大阪の選挙区で維新が獲得した票数は100万を優に超えます)という最強最大の支援を受けて5万票ないのです。
総得票でも6万程度。それを遥かに上回る8万票です。
意地の悪い言い方をすると、A議員もB議員も独力で当選する力はありません。維新が総力を上げて厚遇したB議員、そしてそれを上回る票を真光系列の分派の一つがA議員に与えたということなのです。
B議員のように姓が同じ、などは誰でも使える手ではありません。仮に違う姓でしたら結果はかなり違ったでしょう。
参考までに大阪選挙区がBと違う姓の候補だった2016年の参議院選挙ではBの大阪での得票は3万足らずで落選し、選挙違反で秘書が逮捕されるという大失態。本来ならそこまでの人です。
しかしA議員の手は誰にでも使えます。
真光系列にとってA議員以上に「役に立つ」議員になることを約束すればよいのです。
当落線状にひしめく数多くの候補者たちは「あと5000票」を喉から手が出るほどという表現では生ぬるいほどに欲しています。
仮に本人が真光系列にシンパシーを抱いていなくても、他の候補者の真光系列票を削らないと絶対に1枠減ってしまう、ということを意識せざるを得ません。
この状況で、真光系列の維新への影響力はどこまで正確に図れるものでしょうか?A議員は真光系列の支援を受けていることは外部にもある程度分かります。
しかし、当落線上のライバルが隠れてわずが5000票の支援を受けていない、と誰に分かるでしょうか。
誰しも「わからないもの」が怖いです。選挙運動も効果は正直不明ですが「わからない」からこそ必死でやらなければなりません。
なお、2022年の参議院選挙でも維新の上位当選者は真光系列を行脚していると有名な方でした。
真光系列にしてみても、例えば自民や旧民主で票を投入してもあまり影響力をふるえないでしょう(旧民主はかなり票が減ってきたのでそうでもなくなってきているかもしれませんが)。しかし、維新ですと毎回比例上位当選者を作ることができます。しかも維新は大阪ですと、完全な与党です。
例えば2022年の参議院選挙において、自民党の比例では当選の最低得票は118,710票。惜しくもぎりぎり落選は118,222票。わずか500票足らずの差です。それでも維新A議員の得票をはるかに上回っています。
参議院だけでなく衆議院にも比例制度があり、惜敗率によって復活当選があります。この例のように、全国でわずか数万票、いや数千票ですら当落を左右できるこの制度も非常にカルト票と親和性が高い。
恐らく選挙が近づけば当落線上の維新の比例候補者は真光で頭が一杯になることでしょう。なんせ、自分がどれだけ精力的に地元をめぐり支持を訴えても、仮に大阪で維新の全面バックアップを受けたとしても5万。増加数だけ見ればわずか2万です。しかし真光系列だけでその票数以上に上乗せされる…(この数字は真光系列といっても数多い分派の一つにすぎません)。ましてや他の候補者がその支援を受けてしまうと貴重な当選枠が一つ減ってしまう…。
最近、維新内部では旧統一教会から支援を受けていないかの自己申告アンケート調査があったようですが、果たして旧統一教会だけでいいのでしょうか?当然、維新はすでに真光系列の支援を受けて当選している議員をある程度把握できているはずですが、維新の中では真光系列は「良いカルト宗教」という扱いなのでしょうか。
なお、真光系列もA議員を逃すつもりはないように見えます。
3.政治家と結びついたカルト宗教の選挙『以外』の実体験について
ここからは完全に私の体験なので、感情もそれなりに入れて書きます。
3.1.政治家の「事業」は政治と分離できない
1章で散々述べましたが、政治家は身分が不安定です。あえてあまり書きませんでしたが、やはりお金の問題は非常に厳しいく、元々の富裕層や事業をしている人が立候補していることが多いです。ただの金持ち程度では継続的な支出加えて選挙で大きな支出が増えることから中々持ちこたえることはできません。やはり何等か事業収入があることが多いです。
立候補前から会社を経営しているとかであれば落選しても元の鞘に戻るだけですが、政治家になってから事業を始めたケース、特に落選中、立候補準備をしているのに、いつの間にか事業を始めていたケースは如何なものかと考えています。
企業の生存率には色々な計算方法があり、企業規模も様々なのですが、2006年版中小企業白書での個人事業主の生存率は5年後25%程度しかありません。当たり前ですが、立候補準備の片手間にやれるようなものではないのです。
本論とずれますので、この件の詳細は流しますが、私はB議員の元で働いていました。当時B議員は候補者だったこともあり、政治関係だけでなく、Bが(自分の金をほとんど出さずに何故か)所有する診療所でも勤務していました。
Bから「選挙で支援してくれるので、入信する必要はないから単なる数合わせのため真光系列の講習会に参加してほしい」旨の要請を受け、業務多忙の中、有給を使い3日もの講習を受けに行きました。
体裁としては診療所と政治は無関係ということになっていましたが、このように大なり小なり不可分な要素が残ってしまいます(今の私なら絶対にしませんが)。診療所の仕事が終わったのちに、診療所で政治用のビラを作成するなどのことは日常茶飯事でした。もちろん残業代は出ません。
政治家からの参加だったので、あろうことか「識者席」(他にはマスコミ席もあったような…)に座らされるというコントを演じながらも、おとなしく講習を受けていました。
しかし、2日目の最後に「講習の最後に儀式があり、御神宝を授与され信者と認められる」と現地で知らされるというとんでもないペテンにかけられていました。
2日目の夜、Bへ電話し真光系列に入信するのは良心に悖るので3日目は絶対に出ないと強硬に主張しましたが、Bは
「宗教なんかいくつも入ってあたり前。私は真光系列では高位の組手(手かざしという宗教医療行為を行う指導者のようなもの)だ。私が一声かければ家族が勧誘されるなどはない」
などと滅茶苦茶なことを言っておりました。(ひと声かけなければ家族まで…?)
しかし、100歩譲ってまともな宗教ならその考えもありかもしれませんが(不信心だとは思います)、この真光系列が非常に悪質なカルト宗教で恐ろしい教義をもっていることは、この2日で嫌というほどわかっていたのです。私としては絶対に受け入れられるものではありませんでした。
結局、3日目参加はするが、儀式の後に御神宝は返却し入信はしない、というところに落とされましたが、ひょっとしたら信者数にはいられているかもしれず、いまだに納得いっておりません。
なお、私が切り抜けられたのはあくまで真光系列にとって政治家という「お客様」の人間だったのと、Bも事業や選挙の内情を知ってる人間と揉めるとまずい、という奇跡的な状況が重なったためであり、自分が何か優れていたとかでは断じてありません。
少々の勇気は出しましたが、後述するようにカルト宗教は非常に洗練された洗脳プログラムを持っており結局のところ、相手が本気を出さなかったためで、完全に運です。
「カルト宗教は強い意志があれば切り抜けられる」とか「カルト宗教を撃退した武勇伝」などというものはあまり真に受けないほうがいいでしょう。
3.2.真光系列の教義が「事業」へ影響する
さて、私はカルトと断じていますが、その講習会だけでもそれなりの理由があります。
その講習は初級編でマイルドに作ってあったのですが、そこからでもそのカルトぶりと用意周到ぶりが半端なく感じ取れました。
そして実際にその結果として不幸になっている人を見てしまったからでもあります。
3日も講習を受けましたので、多くの話がありますが、ごく一部だけ例をあげましょう。
彼らは胃がんというものの原因は50%が先祖の祟りで残りが薬害だと主張しています。教団幹部は薬を飲めば胃がんになる、とはっきり言いきりました。
しかし、口でははっきり言うのですが、資料やテキストの該当ページはそこだけ空白になっています。
このような表記です。
講習を受ける者が講師の指示を受け自分で書き込むのです。
100P近いテキストで同じようなことが繰り返し書かれていて、一番コラム的な読み物として体裁の整ったところには、散々胃がんは先祖の祟りだ薬害だと脅し文句が続いた後に、「治療は周りの意見や医師の意見をよく聞きましょう」と書いてあります。
もちろん、先祖の祟りやら戒告現象やらというのは明らかに集金要素です。そして薬害云々は医療(=科学や世間)から切り離し、孤立させる要素です。ともにカルトの特徴とも言えるものです。その決定的な証拠を文書で残さず、「信者が勝手にやった」と統一教会と同じ言い訳をするためのもので、「初級編」のまだ洗脳が弱い人用のテキストには、裁判回避の予防線が十重二十重というわけですね。
その「周りの人」は当然教団の幹部です。
このコロナ禍で思い知った人も多いでしょうが、医師と言っても本当にピンからキリまでです。医師免許は更新制度ではないため、一回取ってしまえばその質は担保されません。例えば医師がオルグを受け真光系列の信者となって過激な無薬治療を推進しても「医師の意見」です。
当然、熱心な信者はそういった診療所に案内されます。例えば教団が支援している政治家が運営する診療所などもそうでしょう。
しかしBの診療所はそもそも宗教とは関係なかったので(別のよろしくない関係はありましたが)、何も知らない雇われ院長先生がいるだけでした。信者がやってきても現場は困惑するだけです。
「こちらの院長先生は高位の組み手だとB先生に聞いたので、手かざしで病気を治してほしい」とか
「こちらの院長先生は高位の組み手だとB先生に聞いたので、お清めをして欲しい」とか。
当然、院長先生もスタッフも、手かざしやお清めが何のことなのかも分からないし、組手が何のことなのかもわかりません。
もちろん、そんな治療?を保険診療で行えば、後ろに手が回りますから、よほどの酷い医師でない限りは医学的な治療を行う診療所で手かざしやお清めはしないでしょう。そんな危険な行為を何も知らない院長先生に押し付けていたのです。
さらには見るからに重病といった患者さんが
「ここならば薬を減らして治療できるとB先生に聞いたので、他の病院で出された薬を減らしてほしい」
と涙ながらに訴えられるということがありました。
その患者さんの検査結果は「薬を減らすどころか、このままだと本当に死にますよ…」という非常に悪いものでした…。
しかし「中級編」や「上級編」でどのような洗脳、どのような恫喝を受けたのか、どれだけ院長が必死に説得しても「薬を飲むと胃がんになるから、薬をやめれば病気が治るから、薬を減らしてくれ」の一点張り。
彼らは「物分かりがいい」医者を求めて遠くない死まで彷徨い歩くのでしょうか…。
そしてしばらくのち、教団幹部の方がやってきて、胃カメラ飲んで山盛り薬もらって帰るというやるせないシーンを見せつけられました。
私はBがその診療所を始める以前に車で移動中にぽろりとこぼした言葉が未だに忘れられません。
「かかりつけ医がいれば、何かあっても司法解剖しなくていいんですよ」
この言葉の真偽はともかく、意図が分かったのはその患者さんがいらした後に、真光系列の講習を受けたときでした。
あの患者さんは用意周到に錬られた洗脳プログラムの結実なのでしょう。そこに医師でもある政治家が患者の命などどうでもいいと選挙のためにべっとりとくっついている…。
名誉のために、院長先生はすべて粘り強く断り、Bにも抗議しました。真光系列もこれはダメだと踏んだのか、途中からはぱったりと来なくなりました。そのような理不尽を他にも色々と経て、あるきっかけで辞められました。それ以降、その診療所の院長は短期間で交代を繰り返しています。その内「物わかりの良い医師」が院長に就任するのでしょうか。
なお講習のメモはその会場のだれよりも熱心にとっており、テキストはあまりに気持ち悪くて捨てましたが、ノートは残っています。
真光系列の診察関係もスタッフミーティングの記録やBへの報告メールなどが残っています。
(なぜか自分の金をほとんど出さずに)の部分も詳細な記録があります。なおこれは宗教関係ではなく問題の質が異なる上ボリュームも凄まじいものになるため、ここではあえて触れません。
3.3.選挙の常識との結合が価値観を狂わせる
ノートを見返していますが、宗教用語のセンスが最近のJアノンなんかと非常によく似ていてびっくりしました。
もちろん、今問題になっている旧統一教会のように、その教祖の「贖い(アガナヒ)なくして明な魂(アカナヒ)にはなれんよ」などというフレーズで脅迫的集金スキームがあるのも当然です。
また表向きは「真光系列以外含めてキリスト教も仏教も神道も全ての宗教は実は同じことを言っていて正しい。全て認める」というような一見物わかりが良いような事を言っています。しかし、「悪魔によりその教えは歪められている。例えば神道で高天原を『タカマガハラ』と読むのは、『禍(マガ)』を挿入されているため人々が地獄に落ちるように悪魔が仕向けている」というように、荒唐無稽な陰謀論を信者へ教え込んでいます。
これには実は意味があり、真光信者がキリスト教などに潜入し、内部からオルグを図るときの理論(?)武装となります。
真光系列は先程の胃がんの話や手かざしなどの疑似医療などからも分かるように、派生元としてはニューエイジやスピリチュアルの影響もあるようです。実際、分派のいくつかが自然食品を入り口にして活動しているのは確認しています。
なお、この辺りの奇妙な親和性については、最近読んだ『あなたを陰謀論者にする言葉』(雨宮 純 (著)フォレスト出版)をお勧めしたいです。
真光系列に政治的な付き合いから入信儀式は行った人々に話を聞くと、集金関係は(少くとも初期の頃は)プレッシャーこそあるものの他のカルト宗教ほどには苛烈ではないとの意見がありました。ただ、先程の件のように医学的な治療を嫌悪しており、手かざしで何でも治るという擬似医療行為への信奉が凄まじいとのことでした。後天的な事故や病気などの理由で医学的治療を続けている人などへ「そんなものは手かざしで治るから医者に行っちゃダメ!」と何度も繰り返される、というような話をよく聞きました。
前述した通り、Bは選挙運動の協力(1でいうところの②)という意味では相当な支援を受けていましたが、票的な意味では真光系列の影響をAほどは受けていません。(と、思われます。得票そのものが少なすぎる)
Bは伝統宗教だけでなく、真光系列などの直球のカルト宗教や、GLAなどのビジネス系カルト宗教はもちろん、スピリチュアル系の占い師のような人物にも節操なく傾倒していましたので、精神的な支配力という意味でもさほどではないかもしれません。(もっともBの傾倒ぶりは周りが引くくらいには相当なもので、人事は占い師にすべてお伺いを立て、事あるごとにカルト宗教や占い師を維新内部の議員へ広めていましたが…)
しかしAもBも現職の国会議員です。真光系列やその他のカルト宗教、スピリチュアル系占い師などの影響力はシャワーのように地方議員や候補者たちへ浸透していくのでしょうか。
実際、B議員の秘書は今でも真光系列の「講習」という名の入信儀式を受けさせられており、(私の例があったからかもしれませんが)御神宝を文字通り肌身離さず身につけているか、後日教団幹部が確認しに来るほどの熱の入れようとのことでした。
※御神宝は水に濡れないよう専用のフィルムでくるみ、ペンダント状にしてシャツの下に隠している。日常生活の全てで外すことは許されず、もし外さざるをえないときや水に濡れたときは教団幹部に連絡して指示を仰がなければならない
そして議員秘書には将来的に政治家を志そうとしている人が多いです。この悪夢のような教育の結果がどうなるか、ため息しか漏れません。
カルト宗教だろうが信仰自体は自由ですし、1章でみたように政治家とカルト宗教が結びつくのに必要悪な部分もあるのでしょう。前述の通り、政治活動・選挙運動の効果の測定は難しく、逆説的にやれることはすべてやらなければなりません。まともなところの支援が取り付けられなかった場合、残るはカルト宗教しかないのも事実です。
しかし、今までの話で分かる通り、Bは医師であることを売りにしておりました。しかし、医師で政治家という立場でありながら、政治活動・選挙運動の助けになるからと、「薬を飲むと胃がんになる」などと信者を脅迫し洗脳するようなカルト宗教と結託し、政治どころか医療まで歪めようとしたのです。票を回してもらっていたのかは分かりませんが、A議員との票数の比較からすると、そこまでしてなお真光系列からは下に見られていたのでしょう。
仮に実際にそんな被害があるとは思いもよらなかったとしても、院長から抗議があった際に「医療人としてそんなところとは手を切る」と宣言したのであればまだ尊敬できるものだったでしょう。宗教以外の問題についても真摯な理由からやっていると善意に解釈できたでしょう。
しかし、入信儀式であることを隠して私に真光系列の講習を受けさせたのは、その院長の抗議の後の話です。B議員にとってはカルト宗教により苦しんだり、今まさに命の危険まであるような人々のことなど、取るに足らない瑣末事だったのでしょうか。
実際、カルト宗教の教義自体を「他の人が信じるのは自由」と許容できたとしても、実際に前述の患者さんの診察にあたったのであれば、ほとんどの人は考えを変えるでしょう。院長先生にしてもBの政治的な理由があることを承知してからも宗教の疑似治療に手を貸すことは絶対にありませんでした。
しかし、頭の片方に選挙のことがあるBは、いとも簡単にその価値観が狂っていました。Bは医師でしたのでこのように直接的な生死の問題に宗教が関わり分かりやすくなっていますが、医療と関係なくとも、カルト宗教によって不幸になっていく人々を、選挙のため見て見ぬふりをしている価値観の狂った政治家は少なからず存在しているのではないでしょうか。
1章で見たように、この業界自体が価値観を狂わせる要素に満ち満ちています。旧統一教会との関係を「何が問題かわからない」と公言し非難を浴びた議員がいましたが、業界の数多い狂った価値観の一つとして、本当に何が問題かわからなくなっているのだと思います。
現実問題としてこのような表に出ない悪夢が全国で発生しているのではないかと思うとやるせない気持ちになります。
院長先生が頑張ってくださったお陰もあり、「何かあっても司法解剖しなくていい」ような事態はありませんでしたが、もっと物わかりのよい医者がいた場合、どのような「何か」があったのか。考えたくもありません。
繰り返しになりますが、維新の中では真光系列は「良いカルト宗教」という扱いなのでしょうか。旧統一教会だけのしかも単なる自己申告のアンケートなどという無意味なパフォーマンスだけでお茶を濁していいのでしょうか。
なお、B議員はイベルメクチン関係で非常に有名になった医師と長年活動を共にし反ワクチン映画を…といえば概ねのイメージがつくかもしれません。
カルト宗教の信者に実際会ってみると「いい人だった」という感想を持つ人が多いです。その医師もとあるテレビ番組で異様な持ち上げられ方をして「いい人」のイメージを広められていました(流石に各所から異論は出ていたようですが)。B議員も同様、関係が浅い人には「いい人」との印象をあたえることが多かったようです。やはりこういったことに共通性はあるのでしょうか。その医師はyoutbeなどもしているのですが、濃い陰謀論に毒され、周囲もそれに染まった何と呼んでいいのかわからない程の異様な環境になっていました。価値観が狂っている者同士うまくいく、というのは嫌味すぎるでしょうか。
4.おわりに
冒頭にも書いた通り、ここまでの記録は、個人の経験と信頼できる周囲の話をまとめたものです。
ことカルト宗教について、実際に見聞きしたこと、今になってわかる事後での数字の裏付けなどを元に、一つの記録をしたにすぎません。私自身はカルト宗教について特別の知見を持つわけでもなく、もう政治の世界から足を洗って(本当にその表現がしっくりきます)数年経ちます。また、この業界で特別長いキャリアがあるわけでもなく、当然専門に教育を受けたわけでもありません。支援のない現場で業務に追われつつ必死に調べたり役所とのやりとりをしながらの体験談を記憶とメモを頼りに書いたものですので、そもそも間違いだ、というところも当然あるでしょう。正直、すこし時間が開いているので不正確な記憶もあるかと思います。また、3章を書くかどうかはかなり悩みましたが、やはり切り離せない問題だと判断しました。単純に仕事として考えても「いくつものカルト宗教に入信するのが当然」などというのは絶対的に価値観が狂っているとしか言いようがなく、政治であれ事業であれ端々に狂った結果が現れているように思えます。
これが正しい、これが実態だというつもりはありません。また、維新が特別にひどい政党だ、A議員やB議員が特別にひどい政治家だ、というつもりもありません。良くも悪くも現行の選挙制度や社会そのものの歪みであるという部分が大きいように思います。
自民や維新に旧統一教会の問題が集中しているようにみえるのは、その2つが国政・大阪で圧倒的な与党だからです。もし政権交代があれば現在の野党に侵食するのは目に見えています。そして彼らは非常に洗練された手法を持っています。
また維新が掲げる諸政策から候補者たちが表の道から資金調達をするのが難しく、これに拍車をかける結果になっているとも感じます。(この辺りは今回の話とずれるので具体例は割愛しますが)
与野党あるいは一部メディアすらも今回の問題を統一教会だけに限定しようとしているように思えます。私は統一協会を規制するのであれば、真光系列その他同じような問題を抱えたカルト宗教、極左・極右など過激派団体も同様にすべきだと思います。それが与野党どちらにダメージが大きいかは想像もつきません。
いずれにせよ、その評価は個人個人に委ねるとしても、長年にわたり安定的に政権を運営し、世界的にも影響力の強かった安部氏が、(今のところは)カルト宗教に絡んで公衆の面前で暗殺されるという悲劇があったというのに、この問題が数多いカルト宗教の一つである統一教会にのみ矮小化され、また単なる政争の具とされて、制度や仕組みとしての問題が解決する道筋すら見えないのは余りにも残念です。
実際にカルト宗教の影響を政治からなくすというのは、あまりにもハードルが高く、数も半端ではありません。カルトの定義、そもそも規制してよいのか、というところからの話を避けて通れないでしょう。悪質なカルト宗教ほど法的な問題をすり抜ける対策を十重二十重に張り巡らせています。半端な対策ではかえって彼らを利するだけに終わるでしょう。
私個人の意見としては、政治家へのカルト宗教の侵食というのは結果であって、原因ではないと考えます。
例えば全国に散らばった少数の票であっても選挙結果を左右できてしまう比例制の欠点や、個人にとって政治活動・選挙運動があまりに時代錯誤で、さらに高リスク・低リワード過ぎて近寄りがたいこと、選挙に絡んで人材の育成や安定的な雇用が守られないこと、複雑怪奇で瑣末事にこだわり過ぎる手続きの割に全く実態を調査しない行政、唯一実力を持って調査できる警察の運用に統一性がないことなど、様々な諸問題の複合の結果であり、これらを一つずつ潰していくなり、時代と技術にあった新しい制度に刷新してしまう方が良いのではないかと考えます。途中に紹介した監査を担当する税理士の意見にも監査人を特例公務員にするという提案がありましたが、本当に政治をクリーンなものにするのであれば、会計責任者などを公務員として明確な権限を与え、責任を取らせるような必要もあるでしょう。現状あまりにも収支報告の真実性について実態がなさすぎます。
さらに言えば、たとえ気持ちよく接待される側のボランティアだったとしても、実際に選挙運動に参加する人たちが増えないことには、同じ問題が繰り返されると思われます。建前だけでなく国民が主役にならない限りは、政治家が国民の方を向くというのは難しいのではないでしょうか。
私にせよ偶然数年関わっただけで今は離れた業界ではありますし、今後戻るつもりも一切ありませんが、故人の冥福と、少しでも根本的な解決に筋道が立つことを祈ってやみません。
2022年8月11日