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パンドラの箱を開けろ<転>


「問題点は1つも無かったです!」

男は自分の本当の気持ちを押し殺し言い放った。

だってしょうがないじゃないか、社長命令なんだし(えなり調心の声)

もう冗談を言っていないとやっていられない状況だ。


コンサル先生
「はぁぁ?!」
「問題点1つも無いの?」


「はい・・・。」

男は想定通りのリアクションに心を構え、その隣の「新社長」の顔を覗き込んだ。

「新社長」は真顔だった。

コンサル先生
「この数日間、あなたは何をしていたのですか?」

コンサル先生
「色々な企業の方を見てきましたが、現場に1つも問題が無いと言ったのはあなたが初めてですよ」

「真剣に問題点を洗い出しましたが、問題レベルの物は無かったのです」


男は苦しくなってきた。

こんな「企業系のテレビドラマ」のような展開が実際に起こっている。

不毛地帯。

本当に反吐がでそうだった。

コンサル先生
「日常現場に慣れてしまって思考がマヒしているのか、もしくは何かを隠しているかどっちかだな」

男はドキッとした。


そうだろう・・・。

自分が逆の立場でもそう思う。

「新社長」は早くこのやり取りが終わることを祈っているかのように、無言を貫き「コンサル先生」の出方を伺っていた。

コンサル先生
「ではこうしましょう。」
「現場に意見箱を設置して下さい。」


「は、はい。

コンサル先生
「その意見箱には今から説明する内容を書かせて入れさせて下さい。」

■現場作業者意見箱
・現在現場で困っている内容を書く
・要求/要望その他気になる点も書く
・名前は記入しない

コンサル先生
「管理者のあなたが分からないなら作業者に聞きましょう。」
コンサル先生
「次の報告会までに意見箱の内容を報告して下さい、以上!」

「わかりました・・・。」


男の報告会が終わった。


まだこの不毛なやり取りを続けるのか・・・男は憤る。

俺の仕事は「役者俳優」なのか?

本当に馬鹿げている。

しかしこの会社に所属している以上、やるしかない。

やることやらないで「ブーイング」しててもしょうがない。


男は早々と「意見箱」を簡易的ではあるが「ダンボール」で作成し、現場に設置をした。

その後、作業者を集めこの「意見箱」の説明を行った。


「この意見箱に匿名で現在困っている事やその他の内容を紙に書いて入れて下さい。」


この「意見箱」がのちに恐ろしい「パンドラの箱」に変わり、男を苦しめることになるのだった。

<結へつづく>


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