パンドラの箱を開けろ<起>
これはある男の話である。
男の会社は数年前に、社長が会長に、常務が社長に就任した。
この度新社長就任として真っ先に行われたことがあった。
それは現場での「QC活動」であった。
「QC活動」とは簡単に言うと
QC手法というロジックを活用して現場の問題点等を洗い出し、分析して改善案を出し、問題の歯止めを行うことを差します。
男の会社は小さな中小企業でありながらも「コンサルの先生」と契約を結んでおり、月に1度社員面談をおこなっている。
この面談が、男を含む社員の気持ちを毎回憂鬱にさせていた。
新社長
「各部署のQC活動を行うので、まずは現場の問題点をできる限り多く見つけて書面にまとめておいて下さい。」
新社長
「○○月○○日に各部署のブレストを行い、各部その中から1つを選びます」
「QC活動」とは主に品質の分野で取り上げられる活動であるが、今回は品質管理部含め「全ての部署」の「問題点」を「QC手法」を使って改善させようとするのが主旨だそうだ。
男は言われた通りに男の担当する現場の問題点を分析し、まとめた。
因みに「問題」とはより具体性が必要である。
例えば
<例>腹が減って困っている←これは問題ではなく「現象」である。
<例>仕事が忙しくご飯を食べる時間がない←これが「問題」である。
「問題」の視点のブレに十分に気を付け、また不必要と判断した内容に関しては伏せておく。
つまり男は「忖度」し面談に臨もうと思っていた。
面談当日
男は面談室に呼ばれた。
軽い緊張感に包まれながら、A4の書類を片手に面談室に向かった。
面談室に入ると、そこには「新社長」「コンサルの先生」の2人が上等な椅子に座っており、ニタニタと笑みを浮かべながら男に視線を送っていた。
コンサル先生
「ではまとめてきた問題点を説明して下さい」
男はやや緊張気味ではあったが、自らの視点でまとめた問題点を説明した。
事前に「できる限り多く」を言われていたので、約10項目の問題点をまとめた。
その中には今は良いが今後どうなるか分からない「潜在的」な物まで含んでいた。
男の説明が終わった。
この時、男は「どうだ!」と心の中で呟いていた。
だが実際はそれに反したリアクションだった。
コンサル先生
「なんなのこれ?」
「全然問題じゃないじゃない」
コンサル先生
「困ってないよねコレ」
「問題をまとめてキ・テ・ヨ!」
「カンカンカン!」とボールペンで紙を叩く音が響いた。
隣では「新社長」がウンウンと頷いていた。
新社長
「男さん、ちょっとこれは評価できないね」
どうやら「ブレスト」を行う「材料」にもならないと判断され、この後コンサルの先生からまるで「国語」の勉強のような指導を受け、男の自尊心に「赤ペン」をつけられた。
コンサル先生
「次の面談までにもう一度まとめてきて」
「問題をもってきてよ!問題を!」
隣では「新社長」がまたウンウンと頷いている。
新社長はまるでコンサル先生の「腰巾着」のように映っていた。
男はある意味反省をした。
「問題点」の洗い出しに「忖度」など必要なかった。
「忖度」などしたら会社の為にならない。
「問題」だと思っているのに「隠ぺい」してはいけない。
それは主旨である「QC活動」に反する行為だ。
男は面談室を退室する前に、2人にこう述べた。
男
分かりました。
それでは次回までに、カ・ナ・ラ・ズ「問題」を持ってきます!
「遠慮なくいかせてもらう」と、男の心は漆黒の炎に包まれた。
<承へつづく>