パンドラの箱を開けろ<承>
コンサル先生
「現場の問題をまとめて来てよ!」
「ねぇ、男さん」
前回、男は「QC活動」として自分の管轄内の現場をリサーチして「問題点」を検出し、上司とコンサルの先生の前で発表をした。
だが
コンサル先生
「これは問題じゃないよ」
「問題を持ってきてよ!」
と突き返され再度やり直しとなった。
次の報告会まで後20日。
それまでに再度書類をまとめなければならない。
数日後
男
問題だと思ったことを「ありのまま」報告しよう・・・
男は前回「忖度」したことを悔やんでいた。
では、この「忖度」というのは何なのか?
男の会社を簡単に説明すると「感受性が高く刺激に敏感な社風」なのである。
少しの刺激に取り乱し、平社員はそれにいつも疲弊していた。
男がいう「忖度」とはつまり「刺激=問題の隠ぺい」なのであった。
男は次の報告会に備え、現場の作業者の聞き込み(取材)や人間の行動分析を入念に調べ上げていた。
顕在的/潜在的な問題点まで分析を繰り返し、その中から「問題点」を洗い出し、まとめ上げた。
今回の「忖度なし」の問題点は10件ほどとなった。
報告会当日
男は報告会まで1時間を切る時間帯に、急遽発表する書類を持って「新社長室」に来るよう呼ばれた。
「新社長」は周りの社員から、男が気合を入れて「問題点の洗い出し」を行っていると耳にしたようだった。
新社長
「今回の書類を見せてください」
男は言われるままに書類を渡した。
新社長は渡された書類を確認し、その後ペンを取り出し書類に「レ点」を付け始めた。
新社長
「これもダメ、これも・・・ダメ」
「これは・・刺激が強いからダメ」
男
いったい何をしているんだ・・・
報告前に目を通すなんて・・・
新社長は頭をボリボリと書きながらブツブツと何かを言っている。
そして全てを確認した後、衝撃的な言葉を口にした。
新社長
「コレ、すべて発表しないで下さい」
男
「はい?」
新社長
「どれもこれも刺激が強い内容なので会長の耳にでも入ったら厄介です」
男
「で、では報告会ではなんといえば良いのですか?」
新社長
「現場の分析結果、問題点は無かったと言って下さい」
男
「わかり・・・ました」
(誤解の無いよう説明しますが、男がまとめた「問題点」の中に法に触れるような内容はございません)
(自己啓発という視点から浮かび上がった問題点です)
男は憤る。
「問題を持ってこい」と言われたので再度「忖度なし」で「問題点」をまとめた。
だが今回は「刺激」が強すぎて新社長の上司「会長」のストレスになってしまう。
だから「問題は無い」と発表しろ、、、と。
だったら・・・これほどまでに「刺激に弱い」社風なら、始めから「QC活動」などやることはなかったのだ。
自己啓発でQC活動をして、問題点を洗い出したら「刺激が強い」から隠ぺいしろ・・・。
これは完全な不毛だ!
男は深く憤りを感じたが、それと同時に自分自身のサラリーマン人生をも呪った。
報告会の時間になった。
男は何も持たず、丸腰状態で面談室に入った。
男
「失礼します!」
「コンサルの先生」は相変わらずニタニタと笑みを浮かべて男を見ていた。
その隣には「新社長」おり、先生の機嫌を取るかのように笑っている。
男の発表の時間になった。
男は前回の再放送バリに問題点の前置きを話し、コンサル先生「新社長」の前でこう述べた。
男
「問題点は・・・問題点は何1つ無かったです!」
<転へつづく>