ヤングNazca海外出張 上海編⑭
僕たちを乗せた車は上海郊外から離れた
だだっ広い工場地帯に到着した。
「中日集団工場」の規模は?
坪数は?
東京ドームに比べたら?
そんなことを考える暇などないぐらい
僕はただただこの広大な土地に圧倒されてしまっていた。
ジャック・モウ「デハ・工場ノ中ニ入リマショウ」
工場の玄関から工内に入ると
部品を運んでいる工員
生地/反物を担いでいる工員等とすれ違った。
我々の容姿が物珍しいのか、ジロジロと凝視してくる。
何かを警戒しているかのような眼差しだ。
ジャック・モウ「コノ中ガ縫製室デス、ドウゾ」
ジャック・モウに誘導されるまま
僕と岩巻課長は縫製室の中に入った。
中に入ると
けたたましいミシンを滑らせたような音が響かっていた。
ミシンは1人1台
約50人以上の工員が同じ方向を向いて
ひたすらミシンを動かしていた。
(50人ぐらいの工員は小規模だとのちの経験で知る)
縫製工場の現場を初めてお目にかかった僕は
またもや圧倒されてしまい
何に焦点を合わせていいのか
分からなくなっていた。
これがアパレル製造の現場なんだな・・・
ようやく現場を見る目も慣れてきた時に
横の席の数十名が椅子に座っているだけで
何もしていない。
ずっと正面を向いて、時たまこちらを見ている。
ジャック・モウ
「彼達ハ、御社ノ仕事ガ少ナイノデ何モスルコトガ無ンデスヨ」
「モット仕事ヲ下サイヨ」
ジャック・モウが我々にプレッシャーを与えるかのように
岩巻課長と僕の顔を見ながら訴えた。
気のせいか、少し口調も荒々しかった。
僕は「生産管理課」に配属されて日が浅く
月にどのくらいの規模の発注を「中日集団」に掛けているのか
まったく把握ができていなかった。
だが、課長である岩巻さんは知っていただろう。
岩巻課長は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
しかし、この工員たちはどのような労働契約なのだろうか?
日当なのか?
それとも1枚縫ってナンボの契約なのか?
もしそうなのであれば
あの工員たちは金を稼げず困っていることになる。
この状況が続けば工員を縮小しリストラか
他社への営業活動を積極的にして
工場の工員の仕事を守るかどちらかになるだろう。
今思うと
アパレル時代に会社の決定事項により
メインとして取引していた工場への発注を
何も説明もないまま翌月いきなり
三分の一に減らし
残りを新規の有力工場へ発注した事があった。
「会社が決定したことだからしょうがない」
「俺は何も悪くない」
そう自分に言い聞かせながら
発注書の数字を少なくして
メイン工場にMAILを送っていた。
こんな紙切れ数枚の数字により
工場で働いていた工員達が
リストラ/解雇されていた可能性があると思うと
自分はよく平気でいられたなと思う。
自分のデスクにある発注契約書
こんなの単なる紙切れだとしか思っていなかった。
紙は軽かったが
その紙の奥底にある血の通った物は
非常に温く、重かった。
それに自分は気づかなかった。
いずれにせよ
我々も現場を視察に来た以上
このことを社内に持ち帰って
フィードバックしないといけない。
岩・Naz「オーダーできるように頑張ります」
そうありきたりにジャック・モウへ答えた。
僕はある意味、工場に視察に来れて
良かったと思った。
その矢先に
先程のカフェで飲んだコーヒーが効いたのか
トイレに行きたくなってきた。
またかよ・・・またコレかよ・・・
「すいません、トイレどこですか」
僕はジャック・モウに場所を教えてもらい
小走りで進み
トイレの前についた。
なんだか・・・いやな予感がするのう・・・
⑮へつづく
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