横浜IRのメリット・デメリット[更新2021/8/15]
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この章では、横浜IRのメリットとデメリットについて述べていく。IR推進派の筆者の視点から書くので、デメリットについてなかなかクリティカルに見ることができておらず、IR反対派の主張に対する反論みたいな内容になっている。
よって、IR反対派の人から見れば「何を甘いこと言っているんだ?」となるかもしれないが、IRをあまり知らない人にとって、IR反対派の意見を知り、それに対する反論を学ぶことはIRを理解するための基盤となると私は考える。何かあればコメントにでも書いて欲しい。
気合いを入れて書いているので全部で6000文字くらいある。興味のあるところだけ読んで欲しい。
■横浜IRのメリット
・観光推進
これがIRの最も大きな目的である。日本では少子化により内需の減少が長期に渡って予想される。日本国内がこれからも経済的に発展していこうとすると、人口がこれからも増加する世界からの観光客を誘致することが不可欠であると私は考える。そのため、海外からの観光客の受け皿となる観光地を作ることが必要であり、そのためにIRを作るのである。
特に、神奈川県は首都圏に近いにも関わらず、海外からの観光客を呼び込めていない現状がある。観光庁の資料によると、コロナ前2019年度の観光客数は9位である。9位と書くと、低くないように感じるかも知れないが、日本でトップの観光地、東京の横にあり、人口規模日本第2位の都市の観光客数が9位である。愛知県や福岡県にも負けている。
2019年度 訪日観光客数
1位 東京都 1410万人
2位 大阪府 1152万人
3位 千葉県 1048万人
4位 京都府 830万人
5位 奈良県 349万人
6位 愛知県 269万人
7位 福岡県 259万人
8位 北海道 239万人
9位 神奈川県 234万人
10位 沖縄県 182万人
11位 兵庫県 180万人
出典:観光庁
神奈川県には魅力がある。しかし、海外からの観光客を呼び込むには、大阪でいう大阪城や道頓堀といった、海外の観光客の「目的」が必要であり、神奈川県にはそれが少ない。その「目的」の1つとなり得るのが今回のIRになる。
IR反対派の一部は、「湾岸沿いの商店がIRにより衰退するのではないか?」と主張する。この主張については、デメリットの部分に書いた。実際元町などの商店では訪問客数が減少する可能性がある。
しかし、観光客に関して言えば、私の考えは違う。なぜなら、横浜の現在の観光地、例えば中華街、を目的に神奈川に来ている観光客は、IRが出来ても中華街にくるからである。つまり、IRができても中華街に今まで来ていた観光客の数は変わらず、むしろIRができることにより、IRがなければ来なかった観光客が新たに中華街に訪れるようになるのである。
式にするとこうなる。
(IR完成後の観光客数) = (IR完成前の観光客数) + (IRにくる観光客数)
これは私の予想である。しかし、「IR内で消費されるモノ・コト」と「IR外の横浜で消費されるモノ・コト」は違うのだから、IRに現在の横浜の観光客が吸い取られるというロジックにはあまり正当性がないと私は考える。横浜の中華街へ観光のために行こうと思っている人が、IRができたからといって中華街へ行くのを辞め、IRのみに行くだろうか?
このようにして中華街付近の観光客数が増えると元町にとっても良い。観光客数の増加で、逆に訪問客数が増加するかも知れない。例えば、(横浜の人はよく分からないかも知れないが、)インバウンドで大阪の心斎橋筋や道頓堀商店街の訪問者数が急上昇したように。
・横浜が展示場、会議場、アリーナの一大集積地に!
横浜はパシフィコ横浜や、横浜アリーナなど大規模展示場やアリーナが存在する。関西圏には、このような都市はなく横浜の大きな強みの一つである。IRができ、大規模展示場や会議場、アリーナが新たにできれば、これらの一大集積地となり、首都圏の需要を掻っ攫うことができる。
・税収入と雇用の増加
IRができると、横浜市に税金が入るようになる。東京新聞によると、その額は860億〜1000億円である。この税収を福祉等に回せば、市民に大きく還元されるのではないだろうか?
また、IRができると雇用が生まれる。横浜の人口、税収増加に繫がるかも知れない。
・単純に面白い
これは、人によって考え方が違うので一概にメリットとは言えないかも知れない。デメリットの部分の最後でも書いたが、変化することは不安を伴うので、不安に感じる人もいる。ただ、私はIRのような大規模で海外から人が集まる施設を作り、今までの都市が新たに進歩するというのは、面白いことだと思う。海外から人が集まるにぎわいある都市が個人的には好きである。
■横浜IRのデメリット
デメリットについて述べていくが、筆者自身がかなりIR推進に偏っているところもあり、IRのデメリットについて、初めに述べたように、あまりクリティカルに見ることができていない。なので、これから述べるデメリット(?)に関する記述は、IR推進派一個人の考え方だと思ってもらえるとよい。記述に問題があればコメントに記載してくれると有難い。
※IRのメリットを述べすぎて、「IRを横浜に誘致したい、どっかの回し者か?」と思われるかも知れないが、私は横浜にIRが誘致されない方が都合が良い大阪の民である。ただ、IR推進派の目線でデメリットを見ると以下のようになる。IR反対派の目から見ると、さらなる反論が生まれるのかも知れない。私はただのIRについてよく知る素人であり、恐らく間違いも多い。私の文章全てを鵜呑みにせず、読者方の思考の土台として使って欲しい。
・カジノで治安が悪くなる。
これに関しては、よく分からない。治安が悪くなるのだろうか?私が実際に見たことがあるシンガポールのIR付近は、非常に人通りが多く治安が良かった。パチンコという賭博があらゆる場所で行われているのだから、そんなに変わらないのではないかという気がする。Back to the Future等の映画で、ビフタネンのカジノにギャングが集まるシーンがあり、そういったイメージがあるのかも知れないが、多分映画の中だけの話である。(そもそも日本人の言う「治安が悪い」は、海外だと非常に安全の部類に入るので良く分からない。)
・カジノの存在で青少年に悪影響がある。
カジノができると、青少年が賭博というものを身近に感じるようになり、例えばIRにショッピングに行った際に、どうしてもカジノの存在を知るため健全な成長に悪影響を及ぼすという主張である。
賭博の存在がどのように青少年に悪影響を与えるのか、私は門外漢なので存じ上げない。ただ、もし悪影響があると仮定した場合でも、パチンコという賭博が日常生活の風景に溶け込んでいる日本では、カジノという日常から少し離れた場所での賭博の影響は、パチンコほど深刻ではないのではないかと考える。
・マネーロンダリングに使われる。
使われる可能性はあるであろう。しかし、市民にはあんまり関係がない。IR整備法などで国がその辺りはきっちり法整備を行っている(はず)。また、MGM RESORTS JAPANの公式ホームページによると、マネーロンダリングの問題は現代のカジノではあまり問題となっていないとのことである。これも正直、門外漢なので分からないというのが本音である。
・カジノでギャンブル依存症が増える?
カジノができると、ギャンブル依存症が増え、不幸になる人が増えると言う主張である。私はゲームでポーカはしたことあるものの、パチンコもカジノも経験したことがないので、詳しいことはわかっていないのだが、恐らくカジノはパチンコよりも高い金額が必要になる。よって、ギャンブル依存症になった際に消費される金額は非常に大きなものとなることが予想され、依存症が個人の人生に与える影響は大きなものになるかも知れない。
カジノ管理委員会によると、政府は、ギャンブル依存症対策として日本人の入場回数を「7日で3回、28日で10回」に制限する。また、入場料を「1日あたり3千円徴収」することが決まっている。ATMをカジノ施設内に設置することも禁止されている。パチンコが日常生活の至るところに存在するのに対し、カジノは日常から離れたIR内にのみしか存在せず、また上記のような規制を行う。依存症の人を0にすることはできないが、パチンコ等に比べれば十分な規制であると私は感じる。
また、依存症になった場合でも、家族による利用制限ができることになっている。
・IRで近くの商店の衰退は起きるか?
IR反対派の一部は、IRができると観光客がIR内でのみモノ・コト消費をするようになり、現在ある湾岸沿いの商店の売上が落ちると主張している。IRができると、現在の商店の客層がIRに吸い取られるという主張である。
IRが完成すると、山下埠頭までみなとみらい線を延伸させるという計画がある。確かに、このようにIRへのアクセスが良くなると、元町やその他の場所で買い物をしていた人達が山下埠頭のIRにショッピングに行き、元町などの商店の訪問客数が減少するかも知れない。元町あたりで商店を営む人達にとっては死活問題であり、これがIRへの反対意見として挙げられる。生活に直結する現状が変わってしまうことは非常に不安なものである。
しかし、これには反対意見もある。1つは、観光客数の増加で、訪問客数が増加するのではないかという主張だ。私の主張でもある。この主張については上記のIRのメリット「観光推進」の部分に書いたので省略する。
シンガポールのIR「マリーナベイサンズ」
もう1つの反対意見は、IRと元町等の湾岸が一体化し、訪問客数に変化はみられないどころか、増加するのではないかとの主張だ。私の主張だ。
私は、シンガポールに行った際、マリーナベイサンズという大規模なIRに行ったことがある。そのとき、もう一つの観光地に立ち寄った。それがマーライオンである。このマーライオン付近に、規模は元町と比べると非常に小さいが、商店密集地があり、マリーナベイサンズとは直線距離で800mほど離れている。海を挟むので、歩くと1.5kmほどある。
この商店は閑散としていたであろうか?否、非常に賑わっていた。何を言いたいのかというと、IRについて話を聞くだけでは、IRで全て完結してしまうのではないかと思いがちだが、思った以上にIRは周りの観光地、商店と一体化している。
今回は、山下埠頭と元町の問題であるが、これらは直線距離で600mほどである。IRと元町で訪問者数の取り合いをするのではない。このくらいの距離だと、恐らく一体化する。しかも海も隔てておらず、すぐそこが大規模IRである。IRへ行く人はついでに元町にも行くはずだ。
IRと直線距離で800m離れたマーライオン付近の商店密集地
筆者撮影
(注:がっかり名所だが、ハードルが下がっていたので思ったより良かった)
「IRで近くの商店が衰退するのではないか?」という主張に対する上記2つの反対意見は、似ており、ややこしいのでまとめる。反対意見1つ目は「IRができ観光客数が増加し、元町への訪問者数も増える」で、2つ目は「IRと元町が一体化し訪問者数が増える」である。
・日本の資本が海外資本に吸い取られる。
IR企業が、カジノ等で儲けた金は日本の資本であり、その資本が海外の企業によって搾取されているのだから、日本の金が海外に取られることになり、日本の衰退を招くという主張である。この意見についてはごく一部の人が述べているだけであり、特に争点にはなっていない。
この主張については、私たちが日常生活で海外の製品を使っていることを考えれば特に問題はないように思う。また、通常の製品やサービスは、主に個人や会社への利益提供なのに対し、IRはアリーナや展示場、観光推進という形で日本国に利益をもたらす。確かに、日本の資本はある程度取られるかも知れないが、税金や上記の施設、観光者の増加などで日本に還元されるので、ある程度は許容するべきではないか。
・IRができると横浜のイメージが変わってしまう。
IRができると、横浜の街がカジノの街という印象になり、横浜が今まで築きあげてきたイメージが、悪いものになってしまうという主張である。IRは大きな施設のため、IRができるとほぼ間違いなく、横浜のイメージの中にはIRというものも入ってくるであろう。しかし、個人的にはカジノの街や、IRの街というイメージまではいかないのではないかと感じる。
想像し難いのならば、大阪にIRができたあとのイメージを考えてもらえると良い。特に他地域からのイメージは変わらないであろう。おそらく、横浜に対するイメージの大きなウエイトの1つとなることは間違いないであろうが、それだけで横浜のイメージが刷新されるほど、横浜は小さな街ではない。
・IRが横浜にでき、変化することへの不安。
IRに反対する市民の中で、最も反対する理由が多いのはこれではないだろうか?
反対する理由として口から出るのは青少年への悪影響であったり、ギャンブル依存症の危険であったりするかも知れないが、その根底には今まで住んできた横浜が大きく変わってしまうことへの不安が存在するのではないかと私は考える。例えば、IRに対して横浜に比べれば前向きな人が多い大阪では、IR事業の候補地が市街地から離れており、住民の生活に大きく関係はしてこない。それゆえ、IRができることにより住民が感じる変化というのは非常に少ない。しかし、横浜市では市街地とIRの候補地が物理的に近く、IRができることによる街の変化が住民には大きく感じられる。現状が変わり、新しく、良く分からないものができる際には多くの人が不安を感じる。その不安がIRへの反対となって現れるのだ。
問題点は、良く知らないことである。知れば、漠然とした不安はなくなり、反対・賛成に対する自分の意見がよりクリティカルになり、自身を持って横浜市長選の投票ができる。漠然とした不安だけでは、後になって後悔することにもなりかねない。市民がIRについて良く知らないことは、先の市長選で、IRについての意思表明を避け、争点化を行わなかった林市長の責任である。しかし、今回幸運なことに、土壇場でIR誘致の是非が大きな争点の1つとなる横浜市長選が行われる。IRについてこの機会にある程度調べ、自身の意見を持つと良い。
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