IRについての基礎知識[更新2021/8/9]
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■IRとはそもそも何?
IRとはIntegrated Resortの略であり、カジノ・ホテル・大規模会議場・展示場・アリーナなどが密集して存在するリゾートのこと、すなわち統合型リゾートのことである。カジノで得た収益を主に会議場や展示場などに回すことで地域経済に貢献するというイメージである。他にも、アリーナで演劇やコンサート、イベントを行うなどし、市民も楽しめるようになる。カジノで会社が得する分、他の施設を作って都市の経済や市民に還元しようという考え方である。
■なぜ日本でIRをするの?
観光推進のため、そして日本が弱いとされている国際展示会での競争力を高めるためである。
・観光推進
現在、そして将来長年に渡り、日本では人口が減少していくことが考えられる。インバウンドに頼る経済はバブルのような経済であり、コロナのような世界規模の災害で観光客数が減るリスクを考えれば、インバウンドに頼る経済は止めるべきであると考える人もいる。しかし、人口が減少し、内需がどんどん減っていく日本において、これからも経済を発展させていくためには、人口が増加していくと考えられる海外からの観光客を誘致することは不可欠であり、またその受け皿となる観光スポットを作ることは非常に重要であると私は考える。政府がどのように考えているかは計りかねるが、大筋では同じであろう。国も観光が重要だと考えてIRを作ることを決めた。
・展示場
他にも、国際競争力が低い展示会開催での日本の競争力を上げたいという思惑もある。展示会とは、製品やサービスなどを展示するビジネスのショーケースのことである。モーターショーなどを想像してもらえるとわかりやすい。この展示会を開くための、国際規模の展示場をIRに作ってもらおうと考えているのである。この背景には、特に日本では大規模展示会が開かれることが少なく、日本の展示場の規模は世界と比較して小さいことがある。日本展示会協会によると、日本で最大の展示場である東京ビッグサイトであっても世界では38位の面積である。オリンピックで拡張したため、これでも順位が上がったのである。以前は78位であった。インテックス大阪は123位である。このように量的に不足した展示場を作るということもIR誘致の目的の一つである。
■日本のIRの現状は?
・日本版IRの特徴
日本版IRの大きな特徴は、カジノの面積に大きな制約があることである。具体的には、IRの延床面積のうち、カジノの面積は3%以内に抑えられることになる。これは、シンガポールのIRのカジノ規定にならったものであり、IRのうちカジノ以外の部分に企業がしっかり力を入れるように決めている。
また、日本版IRではIRが計画されている候補地1つにつき、1つのグループしかIRを作ることができない。1グループが、ある候補地全てを開発するのである。
・IRの候補地
日本版IRでは、IRは日本国内で最大3箇所しか開業できない。「候補地」と先ほどから言っており、なんのことか不思議に思っている人もいるかもしれないが、この3箇所に選ばれるために現在立候補している場所のことを、「候補地」と言っているのである。
候補地は現在「長崎」「大阪」「和歌山」「横浜」の4つがある。長崎はハウステンボスの近くに、大阪は夢洲に、和歌山はマリーナシティの近くに、横浜は山下埠頭にそれぞれIRを誘致しようとしている。「東京」や「名古屋」も立候補するかもしれないと書いているホームページがあるが、正直もうあり得ないと考えて良いだろう。今から候補地に正式に立候補しても時間が足りない。
上記の4地域が候補地であり、ここから3地域が選ばれる。どこが選ばれるかについては違うページで述べる。
・IRが開業するまでの道筋
IRが開業するまでの道筋は
1. IR候補地がIR事業者を決定(2021年9月頃)
2. IR候補地が国に事業計画書を提出(2022年4月頃)
3. 国が候補地のうちから3箇所を選定(2022〜2023年)
4. IR事業者が工事開始
5. IR開業
といった流れである。
現在はそれぞれの地域で、IR事業者が選定されている。事業者が複数いるところもいれば、1グループしかないところもあるが9月ごろまでに、それぞれの候補地が事業者を決定する公算である。