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【2024年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの140字小説特集! 2024年も笑い、足りてる? ※無断転載および転載は原則禁止です。
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140字小説【祝ってくれる人は、ちゃんとそばに】

140字小説【祝ってくれる人は、ちゃんとそばに】

「さぁ祝え、我が生誕祭を! そして捧げよ! 神への供物を――」
「お夕食できたよ〜」
「あっ、ちょっ……配信中に入ってくんなし!」
「ああっ、ごめんごめん! でも早めに降りてきてね。今日はお誕生日ケーキも買ってあるから」
「はいはい、わかったから早く出てってよ! もう……ありがとうっ!」

140字小説【コメント回収はほどほどに】

140字小説【コメント回収はほどほどに】

 食事するだけの生配信をしたら、一部の視聴者から『食事中くらい帽子を取れ』と言われ、帽子を撮ったら『髪の毛ボサボサ』と言われ、整えてきたら『長いから切ったらどうですか』と言われ、坊主にしたら『似合わない』とか『前の方がよかった』とか……お前らのせいで料理が冷めちまったじゃねえか!

140字小説【これでも食らえっ!】

140字小説【これでも食らえっ!】

 相方の鳥肌が立つほど苦手なもの――それは、金属製の食器が擦れる音。
 だから家で私に構ってくれないときは、わざわざ[金属 食器 不快]と検索して、ASMRの動画で聴かせてやる。

 だけどこれは決して腹いせなんかじゃない。だってこうすれば、相方は必ず私に抱きついてプルプル震えるから。

140字小説【都合雨 −ツゴウ−】

140字小説【都合雨 −ツゴウ−】

「恋愛系のドラマとかでさ、失恋したときに雨が降るのって、もはやド定番だよね」
「空も泣いてるとか、気持ちを洗い流してくれるとか、いわゆる都合のいい雨ね」
「そうそう。でもいつも思うけど、わざわざ傘なしで雨に打たれる必要ある? 演技とはいえ風邪引くよね」
「降られた方が清々しいじゃん?」

140字小説【毎日が終わっている家族】

140字小説【毎日が終わっている家族】

 見たかったアニメが野球でお休みと分かると「今日は終わった」と言うお姉ちゃん。
 逆にその野球が雨天中止になると、「今日は終わった」と言うパパ。
 そんな二人を相手にチャンネル争奪戦で負け続けている僕は、毎日終わっているの?

「ママのスマホで見ましょう。本当の勝者は争ったりしないのよ」

140字小説【見損なったわ!】

140字小説【見損なったわ!】

「アナタのこと見損なったわ!」
「また? 今度は何?」
「昨日の番組、アナタがゲスト出演するって言うから録画予約したつもりが、忘れてて……」
「もう何回目だよ。それにまだ見逃し配信があるだろ」
「あっ、そっか。これでアナタのことを見損なわずに済むわね」
「俺も心臓に悪い思いしなくて済むよ」

140字小説【逃したつもりはないんだけど】

140字小説【逃したつもりはないんだけど】

「最近は深夜番組のために無理して起きなくてもよくなったけどさぁ……」
「《見逃し配信》があるからねぇ〜」
「それなんだけどさ、他に言い方ないのかなって思っちゃうんだよね。こちとら別に見逃しちゃったわけじゃないっていうか、むしろ見送ってやってるっていうかさ」
「じゃあ《見送り配信》だね」

140字小説【目標︰スキップされないこと】

140字小説【目標︰スキップされないこと】

 仕事終わりの電車の中、隣の乗客が見ているスマホの動画をぼんやり眺めていたら。やがて自分が出演させてもらっている広告が流れ、少し嬉しい気持ちになった。

 と思ったら。残り5秒を待てないのかして、その若者は右端のスキップボタンを猛烈に連打し始めた。

 ……もっと仕事を頑張ろうと思った。

140字小説【最後ぐらいキュンとさせて】

140字小説【最後ぐらいキュンとさせて】

 とある配信サイトにて、両手の手首をくっつけて可愛い子ぶる《ぶりっ子ポーズ》が売りの、一人の若い女性配信者がいた。

 そうやって視聴者からの人気も投げ銭も稼いでいた彼女だが、どうやら裏では一部のファンに大金を貢がせていたらしく……

 逮捕時の彼女は、やはり両手の手首がくっついていた。

140字小説【期限切れ商品】

140字小説【期限切れ商品】

「最近忙しすぎて、見たいドラマとかアニメとかどんどん溜まり腐っていく……」
「食べ物じゃあるまいし、映像が腐るなんてことある?」
「あるよ! 視聴期限が過ぎるのは、消費期限が過ぎて食べられなくなるのと同じなんだから!」
「たとえ過ぎても課金さえすれば……」
「お金は無駄にしたくないの!」

140字小説【部屋を明るくして離れて見るのと同じ】

140字小説【部屋を明るくして離れて見るのと同じ】

 同居している友人はホラー好きで、よくスマホでホラー系の映画やゲームの実況プレイ動画を見ている。

 しかしそのわりには怖がりで、本人いわく『恐怖でチビってしまう』らしい。

 それゆえか、ホラーを嗜む際は毎回トイレにこもり、やがて中から叫び声が聞こえてくると、スッキリした顔で出てくる。