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【2024年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの140字小説特集! 2024年も笑い、足りてる? ※無断転載および転載は原則禁止です。
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#親子

140字小説【それらを包むのは愛】

140字小説【それらを包むのは愛】

 誕生日を迎えた我が子に、ずっとご所望だったカードゲームをボックスで買ってあげることに。それは大層喜んでくれたんだけど……

「よかったね。これだけあったらしばらくは要らないでしょ?」
「何言ってんの。カードを守るスリーブと、デッキケースと、それが全部入る箱と……」
「マトリョーシカか」

140字小説【白線の内側まで】

140字小説【白線の内側まで】

 今年で6歳に我が子と一緒に、駅で電車を待っていたら……

「さっきから何してるの?」
「『白線の内側まで』って言われたでしょ」
「(だから両足を白線の部分に収めようと、壁画みたいなポーズを取ってるんだね)そういう意味じゃないよ。みんなが真似したらお客さんが降りられなくなっちゃうでしょ」

140字小説【これが我が家流・レシピの増やし方】

140字小説【これが我が家流・レシピの増やし方】

 仕事終わりに、家族から食材の写真が送られてきた。
 ピーマン、ベーコン、ケチャップ……はは〜ん、今夜はナポリタンだな?

 ……答えはピーマンとベーコンの寿司だった。

 翌日、また新しい写真が送られてきた。肉、ニンジン、ジャガイモ……肉じゃがか?

 答えはやはり肉じゃが……の寿司だった。

140字小説【嬉しいけどモヤモヤしちゃう】

140字小説【嬉しいけどモヤモヤしちゃう】

「美味しそうな料理がいっぱいあるね〜。何が食べたい?」
「もやし炒め!」
「えっ、ビュッフェに来てまで?」
「もやし炒めが食べたい! ママのもやし炒めが一番美味しい!」
「(嬉しい……嬉しいんだけど、今は大声で言わないでほしい……でもやっぱり嬉しい……!!)帰ったら作ってあげるからね〜」

140字小説【ごさい】

140字小説【ごさい】

 道端で偶然友人と出会って……

「娘ちゃん大きくなったねぇ。今いくつ?」
「ほら、『今いくつ?』って」
「ごさい」
「五歳かぁ〜! 大人になったら何になりたいのかな?」
「ごさい」
「いや、年齢じゃなくて、えっと……」
「ゴメンね。ウチの子、私とドラマ見てるうちに『後妻』って言葉覚えちゃって」

140字小説【こだわり抜かれた花鳥風月】

140字小説【こだわり抜かれた花鳥風月】

「長女の花です」
「次女の小鳥です」
「三女の風香です」
「なるほど、花鳥風月ね。ということは……」
「長男のゲッツです」
「ゲッツ!?」
「ママが一回離婚したんですけど、どうしても四人目を諦めきれないからって、すぐにドイツ人のパパと再婚して、それでボクが生まれました」
「そこまでするか……」

140字小説【薬と思えば薬】

140字小説【薬と思えば薬】

「アンタ、ちゃんと野菜も食べなさい!」
「だって美味しくないねんもん」
「栄養価が高いんやから、薬やと思って食べなさい!」
「こないだ言うてたことと違うやん! 本物の薬を飲まなアカンときは、ゼリーに包んで『薬やと思わんかったらええねん』って……」
「揚げ足取ってやんと、はよ食べなさい!」

140字小説【髭という字が書けるまで】

140字小説【髭という字が書けるまで】

「パパは何で、おひげ生やしてるの〜?」
「王様と同じさ。偉い人はみんな、おひげ生やしてるだろ?」
「騙されちゃダメよ〜、パパはそれがオシャレだと思ってるだけなんだから。本当に偉かったら、会社で窓際なわけないもんね〜?」
「ママ、『まどぎわ』って何〜?」
「さぁ? パパに聞いてみたら〜?」

140字小説【チビッた車】

140字小説【チビッた車】

 買い物帰りに一台のスポーツカーが通り過ぎると、「今の車、面白い!」と言った五歳の息子。私は『住宅街の中でうるさいな』としか思わなかったけど……

「だって『ブォンブォン、ブリリッ!』って! おもらしみたいだった!」

 子どもの視点になってみると、全てが面白く感じられるのかもしれない。

140字小説【ネガティブ教育】

140字小説【ネガティブ教育】

 オギャアアアアアッ!!

「おうおう、どうしたどうした? ミルクか? ウンチか? それとも社会へのやるせなさか? そうだよなぁ……生きてりゃ意味もなく無性に泣きたくなるときもあるよなぁ。パパもな、今日会社で……」
「パ〜パ〜、よちよち」
「アナタが赤ちゃんにヨシヨシされてどうすんのよ」

140字小説【今日に限った話じゃない】

140字小説【今日に限った話じゃない】

 息子との買い物中……

「よいしょっ……と」
「持つよ」
「いいわよ、これくらい。もう慣れっこだから」
「いいから。母の日くらい手伝わせてよ」

 いくつになっても我が子は我が子。私を気にかけてくれるのは嬉しい。
 あとは、せめて毎日お手伝いしてくれたらもっと嬉しいんだけどねぇ……三十路なら。

140字小説【人ん家には人ん家のルールってもんが以下略】

140字小説【人ん家には人ん家のルールってもんが以下略】

 断れない性格のせいで、お隣に住む奥さんの仕事が終わるまでお子さんを預かることになった。あいにく子どもの相手は苦手なんだが……

「……何だ、お菓子か? だったらその箱から適当に取ればいい」

 ガサァッ!

「『掴み取れ』とは言ってないぞ」
「いつもママがやってる」
「ここはスーパーじゃない」

140字小説【カクシツ専門医】

140字小説【カクシツ専門医】

「もうすぐ父さんが還暦を迎えるんだけど、今さらどうやってお祝いしたらいいのやら……」
「そういうときは、やっぱ旅行でしょ。こことかオススメだよ」
「何これ、ドクターフィッシュ体験?」
「水槽に足を入れるだけで、お魚さんたちが角質を食べてくれるんだって」
「それで父さんとの確執も取れる?」

140字小説【栄養か健康か】

140字小説【栄養か健康か】

「お菓子ばかり食べてないで、少しは勉強したらどう?」
「お姉ちゃんも食べてるじゃん」
「お姉ちゃんは勉強してるからいいの! まったく……お姉ちゃんの爪の垢を煎じて飲ませたいわ。あとお姉ちゃんもいつも言ってるけど、ちゃんと手は洗ったの?」
「お姉ちゃんより私の方が爪垢キレイな自信あるわ」