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【2024年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの140字小説特集! 2024年も笑い、足りてる? ※無断転載および転載は原則禁止です。
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#グルメ

140字小説【認めたら負けな気がして】

140字小説【認めたら負けな気がして】

 バリ、ボリ、ガリ、ゴリ……

「いつもお煎餅食べてるね。好きなの?」
「好きとか嫌いとか、もはやそういう概念で食べてないんだよね。そこにあるから食べる、みたいな?」
「ということは逆に、なかったら食べないってこと?」
「なかったら買いに行くまでよ」
「じゃあ好きじゃん」
「嫌いではないだけ」

140字小説【走りはプロ級】

140字小説【走りはプロ級】

「お待たせしました! こちら、Lサイズピザですね」
「いくら何でも遅れすぎじゃありませんか?」
「すみません、でも聞いてください。こちらのピザ、バイク好きの間で噂される峠の『魔の急カーブ』を地面スレスレの角度で乗り越えてなお、全く型崩れしなかったんです!」
「だから遅れたんですよね?」

140字小説【独り占めの弱点は独り占め】

140字小説【独り占めの弱点は独り占め】

「何か私に隠れて美味しそうな物を食べてるじゃん」
「あっ、いや……これは……ま、まずいまずいまずいまずいっ!」
「『まずい』って何が? 味? それとも私に見つかったこと?」
「えっと……あ、味です……」
「ほ〜う、じゃあ私が確かめてあげるよ」

 こうして密かな楽しみを根こそぎ平らげられた。

140字小説【食レポと見せかけて】

140字小説【食レポと見せかけて】

「トンカツにしっかり出汁が染みていて、歯がいらないんじゃないかってくらい柔らかくて、そこに卵も相まって、口の中で強さと優しさが同時に感じられるというか……」
「カツ丼を一口食べただけで、そこまで喋ることある? あんまり喋りすぎても冷めるでしょ」
「むしろ冷ましてるんだよ、猫舌だから」

140字小説【感想回避方法】

140字小説【感想回避方法】

「新しいコンビニスイーツ、美味しそうだよね」
「それ、この前食べたよ」
「そうなの? 味はどうだった?」
「そうだねぇ……一旦想像してみて」
「想像? う〜ん……とりあえず商品を見たままの想像はしてみたけど」
「想像できた? きっとその通りの味だよ」
「何か上手いこと感想言うの避けてない?」

140字小説【徒労に終わってこそ】

140字小説【徒労に終わってこそ】

「君が『ワインのあてにいろんな種類のチーズが食べたい』と言うから、朝から何軒もスーパーを歩き回って買い集めたというのに、今さら『チーズフォンデュがいい』とか……努力が徒労に終わってしまったよ」
「いいじゃん、チーズフォンデュもトロ〜ッとしていて美味しいよ。はいっ、あーん」
「あふっ」

140字小説【出戻り魚】

140字小説【出戻り魚】

「お前、もしかしてカツオじゃねえか?」
「ブリさん、お久しぶりです」
「久しぶりってお前、出戻りにしちゃ、いくら何でも早すぎやしないか? 北の海で荒波に揉まれて、嫌になったとかじゃあるまいな?」
「いや、ふと家の鍵をちゃんと閉めたか気になっちゃって」
「それで網に捕まってちゃ世話ねぇよ」

140字小説【季節の先取り】

140字小説【季節の先取り】

「食欲の秋! やっぱり秋と言えば栗だよね!」
「栗きんとんもいいよね!」
「サツマイモのスイーツもたくさん出るよね!」
「甘くて黄色いと言えば伊達巻もね!」
「あとはサンマとか、秋鮭とか!」
「分かる! 重箱の片隅で丸くなってるスモークサーモンとか……」
「アンタだけ気分が正月迎えてない?」

140字小説【みがなければそしる】

140字小説【みがなければそしる】

「あれ? 今日の味噌汁、しじみの身が入ってないよね?」
「ああ、昨日買い出し忘れちゃったのよね」
「何だよそれ! 我が家の味噌汁といえば、しじみの身が入ってこそなのに! しじみがないと何か味気ないっていうか、飲んだ気がしないっていうかさぁ……」
「“み”がないからって、そしらないでよ」

140字小説【これが我が家流・レシピの増やし方】

140字小説【これが我が家流・レシピの増やし方】

 仕事終わりに、家族から食材の写真が送られてきた。
 ピーマン、ベーコン、ケチャップ……はは〜ん、今夜はナポリタンだな?

 ……答えはピーマンとベーコンの寿司だった。

 翌日、また新しい写真が送られてきた。肉、ニンジン、ジャガイモ……肉じゃがか?

 答えはやはり肉じゃが……の寿司だった。

140字小説【嬉しいけどモヤモヤしちゃう】

140字小説【嬉しいけどモヤモヤしちゃう】

「美味しそうな料理がいっぱいあるね〜。何が食べたい?」
「もやし炒め!」
「えっ、ビュッフェに来てまで?」
「もやし炒めが食べたい! ママのもやし炒めが一番美味しい!」
「(嬉しい……嬉しいんだけど、今は大声で言わないでほしい……でもやっぱり嬉しい……!!)帰ったら作ってあげるからね〜」

140字小説【拳大は君次第】

140字小説【拳大は君次第】

「美味しそうな揚げ音だね」
「今日はメンチカツに挑戦してみたの。でもレシピには『適量』とか『お好みで』とか、アバウトなことばっか書いてあるから分かりにくくって。とくにこの『拳大』って、自分の拳だけじゃ参考にならないし……ねぇ、ちょっとアナタの拳出してみて」
「いいけど衣付けないでね」

140字小説【お早めに召し上がれ】

140字小説【お早めに召し上がれ】

「《超高速うどん》かぁ……注文したら秒で提供されるのかな? 試しに食べていくか」
「しゃあせーっ!(いらっしゃいませ)」
「(いかにも早く提供しそうな雰囲気……)温玉うどんを一つ」
「へいお待ちっ!」
「えっ? あの、うどんはどこに……いや、待って。この満腹感……もうすでに胃の中に!?」

140字小説【味の三権分立】

140字小説【味の三権分立】

 試しにみたらし団子にマヨネーズを付けてみたら……

「どう、美味しい?」
「う〜ん、団子・たれ・マヨのそれぞれが仕事してるんだけど、どうも調和しないっていうか……」
「要するに不味いってこと?」
「いや、決して不味くはないんだけど。味が三権分立してるっていうかね」
「つまりどういうこと?」