マガジンのカバー画像

【2024年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

332
読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? ナゾリの140字小説特集! 2024年も笑い、足りてる? ※無断転載および転載は原則禁止です。
運営しているクリエイター

#夫婦

140字小説【好きレベルで言うとどれくらい?】

140字小説【好きレベルで言うとどれくらい?】

 かつて俺のことを「好き」と言ってくれた妻。その妻に高級な服やバッグをプレゼントすると「大好き」と言ってくれた。
 さらに銀婚式のお祝いで別荘をプレゼントしたら、今度は「大大だ〜いすきっ!」と言ってくれた。
 ここであらためて、俺のことが好きか妻に聞いてみた。

 ……くしゃみをされた。

140字小説【だからこその常用漢字】

140字小説【だからこその常用漢字】

「不倫はお断りします」

 小学生の我が子が突然そんなことを言い出したので、夫婦揃って思わずビクッとしちゃった。
 何かと思えば、買い物先の駐輪場にある看板か。『不法駐輪はお断りします』の『法』と『駐』が読めなかったのね。
 私は周りの目を気にして驚いちゃったけど……旦那のそれは、何で?

140字小説【振り返らないと決めたのに】

140字小説【振り返らないと決めたのに】

 ずっとすれ違いが続いていた俺たち夫婦は今日、二人で離婚届を提出した。

 そして別れ際、元妻は俺に言った。このまま振り返らず、うつむきもせず、お互いの道を真っ直ぐ突き進みましょう、と。

 だから前を向いて歩み始めた矢先、俺は犬の糞を踏んだ。そしてその瞬間を元妻にバッチリ見られていた。

140字小説【隠しきれない関係】

140字小説【隠しきれない関係】

「あのさ、カップ麺を隠そうとしたら、たまたま君のヘソクリらしきものを見つけちゃったんだけど……」
「何アンタ、また私に隠れて食べようとしてたの?」
「いや、まぁそれはそうなんだけど、問題は君の――」
「問題はアンタの健康でしょ! あれほど『食べ過ぎるな』って言ったよね!?」
「……はい」

140字小説【因縁⇄御縁】

140字小説【因縁⇄御縁】

「俺たちも結婚して、もうすぐ五年かぁ……」
「回転寿司で私が注文してたイクラを、向かいの席のアナタが間違って取っちゃった、あの日からね」
「それまだ言う? でも、あれがキッカケで今があると思ったら、あの間違いもある意味正解だったよね?」
「あの日のことを許してないから今も続いてんのよ」

140字小説【泣きの一回】

140字小説【泣きの一回】

 ウチの妻はとにかく涙もろく、映画やアニメなどの作品に限らず、ご近所の不幸話にもおいおいと涙を流せる。そんな妻の感受性豊かな所も好きなんだけど……

「お願いっ、もう一回……もう一回だけぇっ!」

 ……ゲームで負けた際の《泣きの一回》が本気のそれになるのだけは、毎回勘弁してほしいかな。

140字小説【一生ついて行くと決めた日】

140字小説【一生ついて行くと決めた日】

 新婚旅行先にて……

「入場料、大人二人で」
「ありがとうございますっ、姐御!」
「ご当地アイス、どの味にする?」
「ごちそうさまですっ、姐御!」
「会社へのお土産はこれでいいの?」
「それで構いませんっ、姐御!」
「……新婚の旦那としてのプライドはどこへ行った?」
「道の駅に捨ててきました!」

140字小説【目的はすでに果たされた】

140字小説【目的はすでに果たされた】

「ディナーまでまだ時間あるし、これからどうする? どこから見て回る?」
「俺はいいから一人で楽しんできなよ」
「それじゃ新婚旅行の意味ないでしょ! ホテルで寝てないで、一緒に楽しもうよ!」
「正直ここに来る途中の道の駅ではしゃぎ過ぎたのと、あと散財し過ぎて、もう何もできないんだよ……」

140字小説【ボソトパティッ虹】

140字小説【ボソトパティッ虹】

 妻から『帰りにこれ買ってきて』という文言と共に、買い物メモが送られてきたのだが……

 ボソ
 トパ
 ティッ
 虹

 ……なるほど、ボディソープにトイレットペーパー、ティは『ッ』が付いてるからお茶(ティー)じゃなくてティッシュの方ね。だけど最後だけ分からないな。

「虹って何?」
「ニンジン」

140字小説【アナタが鍛冶屋なら私は鉄】

140字小説【アナタが鍛冶屋なら私は鉄】

「息子にはもっと家柄のいい人と結ばれてほしいと思ってた。でもあの子がどうしてもと言うから、私はアナタがあの子の妻として相応しくなるよう、この手で苛め抜いてきたつもりだったのに……よく途中で心が折れなかったわね」
「私の心はお義母様に折られる前にもう……息子さんに溶かされましたから」

140字小説【脳内音楽祭】

140字小説【脳内音楽祭】

 最近、イヤホンつけながら寝ている旦那を見ていると、その寝相でどんな曲を聴いてるのか分かるようになってきた。

 ちなみに昨日は両手を胸の前で組んだ白雪姫スタイルだったから、クラシック。

 そして今日は……頭を左右に、足はバスドラムを叩くようにしてリズミカルに振ってるから、ロックかな。

140字小説【私は美味しくないよっ!?】

140字小説【私は美味しくないよっ!?】

「おはよ。起きるの早いね」
「お腹空いちゃって」
「そっか、じゃあ何か作る? それとも……私を食べちゃう?」
「食べていいの? 骨の髄まで余すことなく?」
「えっ、リアルな方?」
「俺は君の全てが好きだよ」
「全てって、体の各部位って意味?」
「これからはずっと一緒だね」
「それって食後の話?」

140字小説【かといって褒めるつもりもない】

140字小説【かといって褒めるつもりもない】

「おぅい、ただいま帰りましたよ〜んっ! お土産にラーメン買ってきたぞ〜いっ!」

 と、陽気にアルコール臭を撒き散らしながら帰ってきた旦那。

 怒りたい。けど怒れない。

 何ならむしろ、ちょっと関心してる。千鳥足のくせに汁を一滴もこぼさずテイクアウトしてきた、そのバランス感覚のスゴさに。

140字小説【これでも食らえっ!】

140字小説【これでも食らえっ!】

 相方の鳥肌が立つほど苦手なもの――それは、金属製の食器が擦れる音。
 だから家で私に構ってくれないときは、わざわざ[金属 食器 不快]と検索して、ASMRの動画で聴かせてやる。

 だけどこれは決して腹いせなんかじゃない。だってこうすれば、相方は必ず私に抱きついてプルプル震えるから。