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バースデーサプライズwithキャベツ

今日は私の誕生日だった。

いつも通り仕事から帰ってきて、玄関のドアをを開けると旦那と子供達がニコニコしながら立っていた。

「今日はお母さん誕生日でしょ?お母さんは座ってて!好きなテレビでも見ててね!」

そう言って私をソファに座らせると、3人はキッチンでゴソゴソと準備を始めた。

あ!洗濯機を回さなきゃ!

慌てて洗濯機を見に行くと、カゴいっぱいに溜まっていた洗濯物がなくなっていた。

「洗濯干してくれたの?!」
「うん!ほらお母さんは誕生日なんだから、何もしなくていいんだってば!」

落ち着かない気持ちで録画していたドラマを見る。

しばらくするとキッチンから美味しそうな香りが漂ってきた。

「お母さんできたよー!」

下の子に呼ばれるとテーブルの上には私の好物が並べられていた。

コーンスープにサラダ、ちょっといびつな形をしたハンバーグにはケチャップで顔が書いてある。

テーブルのご馳走を眺めていると、後ろからクラッカーの音がした。

「お母さんおめでとう!!」

そう言うと、上の子がケーキを運んできた。

チョコレートのプレートにはお母さんおめでとうと書かれている。

ロウソクに火を付け、夫と子供がハッピーバースデーの歌を歌ってくれる。

こんな誕生日が来るなんて…嬉しさで胸がいっぱいになった。

「ありがとう!お母さん嬉しい!」

そう言って私は火が灯ったロウソクを勢いよく消した。




辺りが暗くなる。




ふと目を開けるとそこは見慣れたスーパーの駐車場だった。

私は深くため息をつくと車のエンジンをかけた。

家に帰ると子供が学校から帰ってきていた。

上の子はゲームして、下の子はテレビに夢中だ。

旦那はまだ仕事から帰ってきていない。

カレンダーの今日の日付には、子供の字でおかあさんの誕生日と書かれている。

お腹が空いたとお菓子を食べようとする息子を戒めつつ、洗濯機のスイッチを入れた。

買い物袋の中身を冷蔵庫に入れ、今日使う食材を取り出す。

いつもと同じ光景、いつもと同じ日常。

まな板の上に横たわる1/4カットのキャベツが少し憎らしくみえるのは、心の隅っこにあった1%の期待のせいかもしれない。

現実とはなかなかシビアである。

変わらぬ日常は幸せの証拠だということにしておこうか。

キャベツに罪はない。

いつもより力強く、高速でキャベツを千切った。

いつか私の妄想が現実になるといいなと願いを込めて。

皆さんにクスっと笑ってもらえるような、文章を綴っていきたいと思います。