知られざる作曲家・ダマーズの魅力を世界に──ピアニスト・山田磨依 アルバム発売記念インタビュー
これまで、イギリスやフランスの作曲家の作品の日本初演を担うなど、知られざる作品の発掘に尽力してきたピアニスト・山田磨依(やまだまい)さん。
インターネットラジオ「OTTAVA」のプレゼンターとしての活動をご存じの方も多いでしょうか。
このたび、新たな活動として、山田磨依さんご自身のレーベル「Mollis Records」を設立。2023年4月28日、記念すべき1stアルバム『ダマーズ: ピアノ作品集』がリリースされました。(CDおよび世界配信)
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このアルバムに収められているのは、全作、ジャン=ミシェル・ダマーズ(1928-2013)のピアノ・ソロ作品です。
山田磨依さんにとって、もっとも思い入れが深い音楽家のひとりであるというダマーズ。いったい、その魅力は何なのでしょうか。
山田さんご本人にお話を伺いました。
※本記事は、メールでのインタビューを再構成したものです。
ジャン=ミシェル・ダマーズとは?
──「ダマーズ: ピアノ作品集」のリリースおめでとうございます。
(山田磨依、以下“山田”)ありがとうございます!
──このアルバムは、山田磨依さんのライフワークであるジャン=ミシェル・ダマーズのピアノ・ソロ作品の演奏を収めています。
ダマーズとは、どのような作曲家なのでしょうか?
(山田)ジャン=ミシェル・ダマーズは、フランスの作曲家で、現代の響きを取り入れながらも、伝統的なフランス音楽の流れを汲んでいるのが特徴です。美しいメロディーと、キラキラとした細かい音、そして鮮やかなハーモニーが彼の作品の魅力です。
──ダマーズは誰もが知るような有名作曲家ではありませんが、どのように彼や彼の音楽に出会ったのですか?
(山田)私は幼少時から、親の影響でダマーズの音楽に親しんでいました。私のパリ留学中の2013年にダマーズが亡くなり、葬儀に参列した時、ここからは私がダマーズの作品を広めていきたいと強く思いました。
ダマーズの作品を演奏していると彼の温かい人柄に触れているような感覚があり、その点が私がダマーズに憧れ続ける理由でもあります。実際に彼と交流のあった方は皆、彼の人柄の素晴らしさを語ってくれました。
今回のレコーディング/アルバムについて
──レコーディングは1日で一気呵成に行ったということですが、実際に録音されてみた感触はいかがでしたか?
(山田)短時間のレコーディングだからこそ、ライブ感を込めることができたと思います。
また、録音を残すこと自体に意義を感じていたため、世界初録音の作品や、既存の録音が極めて少ない作品をどう解釈して演奏するか、準備段階で悩みながらも完遂することができました。
──ダマーズは、すでに存在を知っている方にとっては、親しみやすい曲を書く作曲家というイメージがあると思います。今回のアルバムにもそうした曲は収録されていますか?
(山田)はい。トラック1の「献呈」は、そのイメージに近い作品だと思います。透明感があり優しさに満ちていて、気品漂う作品です。
でも、それだけがダマーズの魅力ではありません。前衛的で意外性を感じられるのが、トラック20の「ピアノ・ソナタ Op. 24 - 第1楽章 アレグロ 」です。ダマーズが21歳の時に作曲した、情熱漲(みなぎ)る作品です。
ダマーズにかかわる今後の予定について
──ダマーズを広める活動を今後も続けていかれるとのこと、ぜひご予定をお聞かせください。
(山田)5月5日に、私とダマーズの作品を愛好するアマチュア・ピアニストの皆様とで、ダマーズの全ピアノ作品を演奏するコンサートが行われます。
将来の大きな夢は、ダマーズのピアノ・ソロ全曲録音と、ピアノ協奏曲の演奏です。
ダマーズは日本でコンサートに出演したことがあり、日本にも縁のある作曲家です。本アルバムの世界配信が始まりましたが、これから先も日本を拠点に積極的に発信し続け、ダマーズの知名度を更に上げていきたいと思います。
──このインタビュー記事をお読みの方に、ひとことメッセージをお願いいたします。
このアルバムは、様々なキャラクターの作品を収録しており、短編集のような構成になっています。是非、ダマーズの世界をお楽しみください!
──ありがとうございました。
アルバム『ダマーズ: ピアノ作品集』は4月21日、CD一般発売に先立つ形で世界配信リリース。Apple Musicでは「朝のクラシック」「ピュア・ピアノ」ほか多数の公式プレイリストでフィーチャーされ、日本を含むアジア、アメリカ、ヨーロッパほか世界100カ国以上で再生されています。
自主レーベルの設立と録音によって、愛する作曲家を世界に広める。ストリーミング時代ならではの取り組みにぜひご注目ください。