ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男
1972年に製作され、のちに映画史に残る傑作となった『ゴッドファーザー』が完成するまでを描いた伝記ドラマ。
主演は『セッション』『トップガン マーヴェリック』のマイルズ・テラーですが、彼をサポートする秘書で後に伝説的キャスティング・ディレクターとなったベティ・マッカートを演じるジュノー・テンプルの70年代ファッションが毎回素敵だったので描きました。
『ゴッドファーザー』は説明するまでもないぐらい超有名な映画ですが、例に漏れずわたしにとっても特別な作品です。
もちろんリアルタイムではないですが、映画にハマり始めた10代の頃に名作と言われる映画を片っ端から観ていた(本当に文字通り、レンタル店の名作コーナーの端から順に借りて観てた)頃に出会い、衝撃を受けました。
それまでわたしは映画っていうのは話を追うだけのものだと思っていたけどそうではなく、有名な描写ですがドアが閉まるだけの描写にもとてつもなく深い意味が込められていたり、セリフになくても画面の端々から情報を得られる…というのを初めて意識した映画でした。
あと年を重ねて観返すと毎回感情移入する登場人物が変わっていくのも深いんですよね。
そこらへんの事については2019年の「ぴあフィルムフェスティバル」パンフレットに寄稿したマンガにも描いたので貼っておきますね。
で、今回紹介する『ジ・オファー / ゴッドファーザーに賭けた男』は、日本ではU-NEXTで独占配信されているドラマシリーズになります。
U-NEXTな〜〜会費が他のサブスクと比べると高いんですが『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』のために入会しましたよ!!
けどなんやかんや、他で配信されてない古い映画たくさんあるのでありがたいです。
ドラマはまず、マリオ・プーゾが原作小説の執筆に着手し、大ヒットするところから始まります。丁寧!
大ヒット小説が出ると速攻で大手映画会社が映画化権を買い付けるところは今と変わりませんね。
買い付けたのはパラマウント社。
ずっと安定して良作を配給し続けてるイメージがありますが、当時はあまりパッとせず、『ローズマリーの赤ちゃん』が久々のヒット作だった…という時代です。
パラマウントの伝説的なプロデューサーであるロバート・エヴァンスは当時アリ・マッグローと結婚していてその繋がりで『ある愛の詩』が生まれる…などなど、70年代初頭のハリウッド業界話がゴロゴロ出てくるのでここらへんの映画好きな方にはたまらないと思います!
ざっと説明すると、今でこそ名作中の名作である『ゴッドファーザー』は常に「一難さってまた一難」状態の、出だしから公開直前までとにかく伝説級の難産映画だった!!というおはなし。
その難産ぶりについてはわたしも少しぐらいは知っていたつもりでしたが予想以上でした。
まずすごいのが映画関連でまあまあ人死んでる。
これは撮影中の事故で…とかじゃなく、製作者が本物のマフィアと関係していたため製作上のちょっとしたトラブルもマフィアが勝手に脅迫とかして解決したり、マフィア同士の抗争に発展したから。
「反社」とズブズブなんですよ!!どっかの国の政権みたいに。
そしてそんな反社よりもっと厄介なのがよりによって自社の上層部という理不尽さ。
まあどこの会社も大なり小なりこんな事あるんでしょうが、視聴者は『ゴッドファーザー』のその後の成功と映画の完璧さを知っているので、上層部がいちいち「こんな俳優は使えない!」「こんなセットは要らない!」「シチリアロケとか要らん!」…ってケチをつける度に思うわけです。
お前らはなんも分かってない!!!
さらには当時まだ映画では無名に近かったアル・パチーノのキャスティングに対して「あんな貧相なチビ!!」って大反対。
正気か?パチーノやぞ!!?
やっとフィルムが出来上がったと思ったらとんでもなく駄作の匂いしかしないポスターデザインを持ってきたり…。
それらの筆頭である幹部のバリーを演じたのはトム・ハンクスの息子コリン・ハンクス。
まあ〜こいつの顔が憎たらしいんですよ。
良くない感情に傾いてるときの『トイ・ストーリー』のウッディにめっちゃ似てる。
けど最後にとっておきの(興行収入のための)秘策を授けてくれるのが何ともにくい。
主人公のアルバート・S・ラディはまだ現役で、昨年のイーストウッド映画『クライ・マッチョ』でも製作に名を連ねている、というのが驚きです。
金銭的な面もあるだろうけどハリウッドの仕事は一度その熱と興奮に飲み込まれたら他の仕事なんて退屈すぎて一生抜けられないんだろうなと思う。
そんなお仕事ドラマでもありました。おすすめです!