宅建受験から始まった不動産との微妙な関わり(その3:鑑定評価はこのような手順)
さて何とか不動産鑑定事務所に潜り込んだものの、すべての作業は初めてです。
前職の情報システム開発は、打ち合わせ・設計書作成・開発など、ほとんど室内の作業でした。
それに対して不動産鑑定評価業務は、外の作業が7割位でしょうか。取材(調査)して文章をまとめる仕事なので、意外とジャーナリストの仕事に近いのかもしれません。対象物件自体は何もしゃべらないですけどね(^_^;)
■作業手順は
依頼書の目的と内容を理解して
調査の前日は
1.日本不動産鑑定士協会に赴き、対象地付近の取引事例を収集
2.住宅地図をコピーして、対象地・取引事例地・公示地などを書き込み
3.対象地の近隣の不動産店一覧を準備
4.法務局へ提出する申請書の準備
当日は
0.自宅から直接現地へ出発
1.法務局で登記簿閲覧、公図・地積測量図・建物図面のコピー
2.市区町村役場で都市計画法・建築基準法、道路ほかの確認
3.対象地で登記簿との異同、道路の状況ほかを調査。写真も撮る。
4.取引事例地や公示地を回り、対象地との比較
5.不動産店を回って相場や需給動向の話をヒアリング
翌日は
1.前日の調査を元に鑑定評価書を作成
2.先生に一連の調査結果報告と価格決定に至った理由を説明
3.OKなら完了。NGなら先生の指示で追加調査や修正
というサイクルでした。
■とにかくスピードが大切
ひとつの案件は実質2日で完成させるサイクルでした。受注単価が安いので、それ以上時間をかけては利益が出ないのです。
実質2日というのは、上記の前日作業と翌日作業は、実は同じ日だということです。つまり鑑定評価書を作成しつつ、次案件の準備作業も並行しなければなりません。
そもそも取引事例の収集に行くだけでも時間がかかります。さすがに途中からは、パソコンからオンラインで取れるようになりましたが。(ただしまだインターネットは普及していないので、モデムを介した電話回線で送信。受信はFAXでした)
住宅地図は1枚ではなく広範囲を押さえる必要があるため、コピーを数枚を貼り合わせなければなりません。
私はそこに
1.対象地をマーク
2.取引事例地や公示地をマークし、単価を記入
3.色違いのラインマーカーで用途地域別が一目で分かるように工夫
3の工夫は、用途地域=不動産鑑定上の地域とは限りませんが、各地域の価格水準を考える際に分かりやすくするためのものです。先生には好評だったようです。
また当日の役所調査や現地調査は、それぞれの移動距離があると時間との戦いになります。特に冬場は日没が早いので、モタモタしていると撮影ができないですからね。想定外のことに気付き、現地から役所に確認に戻るケースもあるため、時間に余裕をもたせないと対応できません。
■現地調査と相場のヒアリングは大変
まず現地調査において、対象物件の居住者や付近の住民に怪しまれずに、調査や写真撮影を行うかということです。家の前を長時間ウロウロしては、不審者扱いされる可能性が高いですからね。現地調査は書きたいネタが山ほどあるので、また別途詳しく書きます。
もうひとつは付近の不動産店(業者さんと呼ぶ)を回って、相場をヒアリングすることです。これもある意味飛び込み営業みたいなもので、とても憂鬱でしたねー。そもそも若造が、海千山千の業者さんと会話を成り立たせることは難しい。トシを食った今ならだいぶ違うのですが。
業者さんからすれば、知らない人間がいきなり来て、しかも商売に結び付かない話をしなければならないのです。迷惑な話ですよね。これもまた別途詳しく書きたいと思います。
■時を経て現在は
これらは平成元年の話です。現在は平成30年になり、至る所でIT化が進みました。
特に法務局については、現在はほぼコンピュータ化され、登記簿の閲覧に代えて登記事項要約書の交付になっています。またインターネットから申請可能なりました。したがって法務局での調査にかける時間は、かなり減ったのではないでしょうか。
また鑑定評価書の雛型をモバイル機器に入れて、現地で打ち込むことが可能になりました。貼付写真についても、かつては写真屋さんに現象とプリントを依頼する必要がありましたが、今はデジカメの画像を直接貼り付けることができます。
次回は法務局での調査を詳しく書きます。