大人になってから弦楽器を始めて上達するのか(その2)

その1では大人から弦楽器を始めると、素人くさい音からなかなか脱却できないことを書きました。

もっとも3歳から始めても、大多数の子は上達する前にやめてしまいます。吸収力が高いうちに始めてやり続けた子だけが、音大に進学したり、アマチュアでも上手な人になるのです。しかもこういう子は、ピアノも並行して習っていますし…

大人の場合は曲の完成度はともかく、とりあえず形にしようとしますよね。

もしかしたら大人から始めても、毎日5時間練習できる人なら、上記の人達に近づけるのかもしれません。たしかにそれに近い人はいますね。例えばアマオケ命の人で、練習時間を確保したいために、楽な仕事に転職したなんて話はたまに聞きます。

そうではなく普通の大人が、少しでも素人くさくない音で演奏するためのヒントは無いものか。発表会を聴いたり自分の経験から考えてみます。

素人くさい音の正体を分析してみると、こんな感じではないかと。

1、音が小さくて自信なさそうに弾いている
2.歌心のない機械的な演奏である
3.音程が気持ち悪い

1.音が小さくて自信なさそうに弾いている

大人から始めると、総じて音が小さいです。絶対的な音量というより、ちゃんと響かせていないってことですね。

初めのうちは安い楽器だからなんて思ってしまいますが、これが違うんです。試しに先生に弾いてもらうと、「ゲッ、こんなに音が出るんだ!」と気付き、楽器に申し分けないと思うでしょう(笑)

要は弓のスピードが遅い・一定ではない、弓の端から端までを目いっぱい使っていないってことなんですよね。弦楽器って擦ってことを出すというよりは、はじいて出した音を弓で持続するイメージだそうです。はじく代わりに、発音の瞬間に毛を弦に引っかけてから始動する感じ。

ところが大人は響きよりまず間違えないことを気にするんですよ。特にチェロだと、弦は太く長く元々発音が遅い楽器なので、途中から響かせようとして所謂「弓を押す」のをやりがちです。

弓を景気よく使わない弾き方になるのは、だんだん曲が難しくなってきて音を間違えないように気をつかうのと無関係ではありません。人間の習性として、慎重になれば右手の動きは小さくなるのです。(ただしチェロの太い弦のほうは、速く弾いても十分振動しないのでケースバイケースです)

2.歌心のない機械的な演奏である

「楽器で演奏するということは歌の代わりなのだ」という先生は少なくありません。私もチェロのある先生によく言われました。「次回までに課題曲をドレミで歌ってこい」と言われたことも(^_^;

そもそもヴァイオリンのような旋律楽器は、歌えなきゃ意味がないのです。それはチェロやヴィオラも同様。ヴィブラートが苦手でも、最低限長い音にはかけないと単調になりますし。

でも歌って難しいじゃないですか。感情が高ぶるところで叫ぶのは誰でもできます。しかし最初の一節で、聴き手を引き込むなんて私にはできません。具体的にどう歌えばいいのか分からないのだから。歌でできないことは楽器でできる訳がありません
プロの方は、曲全体を物語にして、このフレーズは誰々が登場するところなんてやっていることもあるようです。

私らにできることといえば、音符の並びを機械的に弾かないってことです。
クラシック音楽ってポップスと比べて、かなり強弱をつけるのが特徴です。旋律が上方系ならクレッシェンド、下降系ならデクレッシェンドのような、暗黙のお約束?もあります。最低限、強弱記号がここに付いている意味は考えたいもの。

ところが教本の課題曲は、レッスンまでに何とかこなすので精一杯なのです。社会人は練習時間はあまり取れませんから。

余談ですがかなり練習してきたなってときは、先生は上機嫌ですし、本来はそうでなければならない。ただしその練習時間は、何かを犠牲にして生み出していることが少なくなく、社会人・家庭人としてはどうなの?ということも(笑)

3.音程が気持ち悪い

町の音楽教室の発表会に行ったことがある人はお気付きと思いますが、弦楽器の音程はヤバいです(^_^;
特にピアノとの合同発表会だと、その差が目立つので悲惨ですね(^_^;

ヴァイオリンやチェロは、ギターのようにフレットはありません。そのおかげで微妙な表現が可能なのですが、正しい音程(それなりの音程)を取ることに大変苦労します。プロですらこのフレーズの頭は外したらマズいって箇所は、直前に指で軽く押さえてみて音を確かめる仕草をする人もいるくらいですから。

どの先生も音程は弦楽器の一生の課題といいますね。それはそもそも正確な音程を押さえるのが難しいということと、弦楽器で求められている音程(ピッチ)はピアノのそれ(平均律)とは微妙に違うってことです。後者の話は専門的過ぎて素人には手におえないですが、プロや音大生の間でも、例えばカルテットでそこの取り方は違うだろうなんてよく揉めるそうです。

調性によっても違うようですね。鍵板上では同じ音でも、シャープが付いていれば高目に、フラットが付いていれば低目に取れという先生もいます。

細かい話はさておき、大人は聴いていて自然さを感じる音程を目指すしかないですね。なので自分なりに確信をもてる音を押さえるしかないのです。

それなりに上手に聴こえる人というのは、音程に微妙なところがあるにしても、堂々としているんですよね。音程を探り探りの演奏では、その自信の無さが聴き手に伝わっちゃって素人くさくなるのです。

音程は調ごとに毎日地道にスケール練習するしかないです。一日サボればすぐ悪くなりますから。それと普段から耳を鍛えておくことですかねえ。自分なりの基準が無いと、演奏中早めに微修正できなくなるので。(伴奏のピアノの音や解放弦との響きを頼りに修正することもあります)

つーことで

1.元気よく堂々と弾くクセをつける
2.自分が楽しくなる演奏とは何かを考える
3.スケールの練習は念入りに

を心掛けることで、最近音が変わったねと先生に言われると思います。

さらに上を目指すのなら

1.メトロノームを使ってリズムキープを心掛ける
2.レコーダーで演奏を聴き直して下手さを思い知る

が効果的ではないでしょうか。

私はどちらも発表会直前しかやらないのですが、自分が何もできていないことに気付きます。

弦楽器に限らず、楽器が上手な人はこれらをおすすめしていますね。客観的に聴いてみて、大きくダメな所から直していくのがいいのではないでしょうか。PDCAサイクルを回す感じで。資格関係のブログの派生noteなので、一応PDCAとか使ってみました(笑)

ちなみに私は演奏会で知らない人に褒められたことは、一度しかありません。ヴァイオリンでジュピター(平原綾香)を弾いたのですが、選曲がよかったからからでしょうね。低音弾くのは得意だったし。ただそれ以降は褒められたことはありません(^_^;
きびしい…

いろいろ書きましたが、弦楽器に興味のあるかたは、お試しでやってみることをおすすめします。続けられそうなら楽器を買えばよし、ムリそうならやめてもよしです。どこまで上達するかは、やってみなくちゃ分かりませんから。
それにとりあえず経験してみれば、世界が広がります。話のネタも増えますよ。

当初書きたかったこととちょっと違う展開になった気もしますが、今回はこれにて終了。

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