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SmartHRの新バリュー モチーフ制作のウラガワ

はじめに


SmartHRのブランディング統括本部ブランドコミュニケーションデザイン部ブランドデザインユニット(長い!)のnawaaan(なわーん)です。

私たちブランドデザインユニットでは、「SmartHRブランドを、クリエイティブの側面から考え、育てて、広げて、SmartHRのファンを増やす体験をつくる。」ことを目的とし、日々活動しています。

2024年7月に、SmartHRのバリューがアップデートされました。

バリューの構造:モチーフは「光」「偉業」「象」を指します。

実はこのモチーフ、2週間程度で制作したのです。
今回は、そのモチーフ制作の裏側を紹介します。
初めてのnoteへの投稿なので、ドキドキですが、少しでも誰かのなにかしらのヒントになるととても嬉しいです。


モチーフ制作に至るまで

まずは、モチーフ制作に至るまでの過程を簡単に説明します。

SmartHRは、自社をスケールアップ企業と定義しています。
SmartHRという「スケールアップ企業」について 〜スタートアップにも大企業にもなれないわたしたち〜|株式会社SmartHR
スケールアップ企業である企業フェーズにフィットしたものにしてくために、バリューをあたらしくする動きが始まりました。

新バリューの言語化については、会社の未来像や現状の課題などからCxO陣+VP+PJメンバーで議論を行いました。
詳細はSmartHRの新しいバリューを公開します。|株式会社SmartHRの記事をご覧ください。

モチーフ制作

新バリューのモチーフに求められるポイント

モチーフ化するものは「光」「偉業」「象」の3つです。
「偉業」のみ2文字という絶妙な違いが気になりつつも、求められる(クリアすべき)ポイントを整理しました。

新バリュー発表後の社内外での浸透性や伝達性などを考えると、「インパクトがあり愛着が湧く」というのは大きなポイントになります。
加えて、モチーフ化するワードを絵として表現しますが、「文字としても視認できる」も大切です。
その他に、デザイン観点での影響範囲を見極めました。

様々なものに影響はありますが、制作当時に大きな影響が発生しそうだったなのは「採用サイトとの整合性」です。

採用サイトは、旧バリューをプリミティブな造形の組み合わせでモチーフ化し、それらがサイト全体に広がることで、バリューが会社に根付き、ひいてはカルチャーとなっていることを表現しています。
そのような観点から「採用サイトとの整合性」もポイントになります。

よって、求められるポイントは、「インパクト・愛着」「採用サイトとの整合性」「文字としても視認できる」の3つになります。

デザインの方向性

方向性としては様々なものが考えられます。
今回は前述したポイントを踏まえて、「A図形の組み合わせ」「B文字の背景にグラフィック」の2方向としました。

この段階で頭で考えすぎても凝り固まるだけなので、作業しながら手で考える行為も同時に行いました。

各方向性の妥当性をザックリ検証

同時に、各方向性の検証をやっていきます。
モチーフとして成立するのか妥当性を探るためのザックリとした検証です。

この段階で得られたA方向の考察は下記のとおりです。

  • 「光」はいけそう

  • 「偉」「業」はギリギリのライン

  • 偉業は一文字のサイズだと難しい

  • 「象」はまだ探れそうだが、家にも見える

  • 総じて、画数が多いものは難しい

この段階で得られたB方向の考察は下記のとおりです。

  • 一つ一つが魅力的にみえない

  • モチーフを説明している印象が強すぎる

  • 細かなシェイプの組み合わせだと、結局なんなのかわからない

  • 書体のママだと、めちゃくちゃ普通な印象

この時点で、AとBの中間の方向性の匂いを感じつつ、次に移りました。

作字の検証

それぞれのザックリとした検証の考察から、漢字の複雑性が解消され、文字のみでも魅力的に見えると良い結果に繋がりそうだと考え、作字の検証を行いました。

作字は、Aの検証段階のものとの親和性が高く、これをベースに作字しています。

作字後の文字のほうが今回のモチーフ制作との相性が良さそうだと判断し、これを文字として使用することにしました。

作字した文字との組み合わせで、B方向の検証を続けます。
ザックリ検証よりもダイナミックに図形を組み合わせ、「なんとなく想起できる」くらいまで抽象度を上げます。
それと同時に、色による印象の違いも検証しました。

この段階で得られた考察は下記のとおりです。

  • 一つ一つが魅力的にみえない

  • どうしても説明的に見えてしまう

  • 背景と文字の一体感の必然性や統一感がない

  • 色の違いは大きくは影響しない

  • 当然ながら文字はスミの方が際立つ

ここまでの検証を重ねて、このままAとBの2つの方向性進んだとしても、求められるポイントをクリアすることが難しく、妥当性を感じられません。
この方向で進むのは限界だと判断し、次の手を考えました。

方向性のアップデートから決定まで

これまでの検証結果から、2つの方向性の中間が筋が良さそうだと感じました。

その中間を新たなC方向である「文字とシェイプの組み合わせ」として、妥当性の検証を行います。
並行して、シェイプのみで使用する採用サイトの整合性の検証も行っていきました。

これまで各方向性でかなりの数を検証を経ているので、この段階でのC方向の妥当性の検証にはあまり時間を割かずに済みました。
感覚的ではありますが、明らかにC方向が求められるポイントをクリアする可能性が高く、良くなりそうな雰囲気を醸し出しています。

絞り込みと進捗共有を行うため、PJメンバーとのディスカッションの場に持ち込みます。
ディスカッションの結果、やはりC方向の「作字文字とシェイプの組み合わせ」で進めることに決まりました。

この段階である程度の完成形は想像できているので、あとは時間の許す限りでブラッシュアップしていきます。

ブラッシュアップから完成

C方向でブラッシュアップを行います。
ひたすらに検証を重ねていくのみなので、時間の許す限り検証していきます。
ブラッシュアップは以下を中心に行いました。

  • ベースとなる作字のブラッシュアップ

  • 「偉」と「象」をより文字として読めるようできないかの検証

  • 「光」「偉業」「象」の全てが正方形にキッチリ収まるように調整

実際に検証していく中でわかったこととして、このモチーフの難しいところは、想像と実際に作った見え感が違う点と、少し弄っただけで印象がガラリと変わる点です。
そのため、考えてから作るというよりも、作りながら考えるという方法にしました。
図形を置き換えたり、色を変えたり、トライ&エラーを繰り返します。
それと同時に採用サイトへの適応も考え、スミ部分をなくしても正方形になる点を考慮します。
加えて、3つのモチーフ全体のスミとカラーのバランスも整えます。

それで完成したものがこちらになります!!

パっと目にした瞬間に印象に残り、弊社らしさもあり、モチーフとしてのポイントもクリアしたものに仕上がっていると思っています。
完成後に、Slackのemojiにもしました。
Slackのemojiは小さいので、モチーフと作字の両方を用意し、読みづらい見づらい人をカバーしています。


最後に

今回のバリューは、半期に一度の全社キックオフで発表するために、約2週間で制作しました。
当初の想定スケジュールとは異なり、制作期間もかなり短かったため、スケジュールの交渉、一部のみ制作、一旦仮のものとして制作など、他の選択もできたのですが、社内への浸透などを考えた際に、このタイミングを逃す選択はしたくないと考えました。
皆さんで練り上げたものを、温度と鮮度を落とさずに、スピード感を持って、ベストなタイミングで届けることはとても重要なことです。

全社キックオフで発表した際には、好意的な反応が多かったです。
一方で、一部そうではない反応もありました。
至極当然な反応だと思いますし、同時に会社のコアとなるものを作ることへの責任を痛感した瞬間でした。

あくまで私の捉え方ですが、デザインされたあらゆるものは、すべての人にとってベストなものだとは思いませんし、それゆえに様々な指摘を受けることもあると思います。
ですが、多くの方に受け入れてもらえたと感じられるならば、その時点での解としては、最適に近しいものになっていると思います。
ただ、あくまで「その時点」の、です。

届けた瞬間から過去のものになっていき、ある程度の時間が経過すると新たな課題が生まれます。そうすると、「最適だった」ものに変わっていきます。
デザインとしてアウトプットされたものは「その時点」での解を導いたものであり、常に経過の中に存在しています。
さらに、あくまで「その時点」の「その制作者の解」であり、絶対的なものではないと考えられます。

そう捉えると、指摘=批判ではなく、指摘=糧になります。
指摘される恐怖のようなものは一定どなたでもあると思います。
それでも、考え続けその時点での最適解を導くこと、それを続けることが大切だと考えています。

みなさんのデザイン活動へ、なにかしらのヒントになることを願ってます。

長文を読んでいただきありがとうございました!

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