アビスパ福岡新監督就任に寄せて―夢の終わりに迎えた茶色の朝


はじめに

 初めてnoteを書いています。アビスパ福岡を四半世紀ほど応援しているものです。特に面白アルファツイッタラーでもなく、取り立てて世の中に影響のある人間でもありません。
 学生時代に相手チームの代表選手を見に行くつもりで初めて行った博多の森の雰囲気に魅せられて、アビスパを応援するようになりました。
 ゴール裏で跳ねているタイプのサポーターではありませんが、年間チケットを購入し、よっぽどのことがない限りホームゲームはほとんど応援してきました。アウェーにも時折赴いています。

今年の来場履歴です(広島アウェイが含まれてないので+1)

 弱くてもため息が出そうなゲーム運びでも選手が何回入れ替わっても観客が少なくてもそれなのに(それだから?)チケット代は上がっても、アビスパは私の愛すべきチームでした。家族のような存在になっていたので、子供の足が遅いからという理由で運動会を欠席する親がいないように、どんな成績でも応援しないという選択肢はありませんでした。
 時折見せてくれる目の覚めるような勝利の瞬間が大好きで、特にこの五年間は「時折」が「たびたび」になり、現実味のない夢のようだったタイトルまでこの目で見ることができました。
 それが今初めて、来年の応援を躊躇っているという話を個人的に記録しておきたくて、このnoteを書いています。

クラブ側に感じる疑問点

 今回新監督に就任した氏については、過去に未成年者を含んだ複数の方にパワーハラスメントを行い、S級ライセンスを剥奪されています。

 先程のようにアビスパのことを家族のように感じているため、この人に関わってほしくない、という生理的な嫌悪感はあります。「この人もう反省したから大丈夫だよね」と判断されたとしても、パワハラで処分された人が自分の子供の上司として配属されたら不安になるようなものです。
 ただ、個人的な感情を差し置いても、「前監督が早めに退任を申し出て準備する時間は十分にあったのに、2025年度中に債務超過を解消しなければJリーグのクラブライセンスを維持できないチームが、おそらく前所属チームに違約金を払ってまでこの監督を選択したのは何故か?」「報道後に起こった反発を全く予想していなかったのか?ただでさえJ1最下位の観客数なのにこの人選で観客離れが起こるかもしれないリスクを負ってまで何故この人選なのか?」「スポンサーやホームタウンに十分説明はできているのか?」という疑問が残ります。このnoteを書いている時点でクラブから一切説明はありません。16日に記者会見が行われる予定ですので、そこで説明があるのかもしれませんが、この疑問を解消できる完璧な回答が用意されているようにはとても思えません。
 また、アビスパ福岡は、ここ数年「スポーツを通じて、子どもたちに夢と感動を地域に誇りと活力を与えます」という基本理念を掲げてきました。

 基本理念と矛盾する人選だと思わざるを得ません。

監督側に感じる疑問点

 「過去の一度の過ちを反省している人間にチャンスを与えないのは良くない」という意見があることは理解しています。そもそも複数年にわたり、被害者も複数人いる現象を「一度」で括ってしまえるのは個人的にあまりに乱暴だと感じますが、それを置いても本当に反省しているのかについて、いくつかの理由から疑問に思っています。
 パワハラの罪の本質は暴言や暴力、その隠蔽などの表面的なことではなく、被害者の心を傷つけ人生を台無しにしたことにあるはずです。氏がそこを本当に理解しているのか不明に思う理由は下記の通りです。

被害者への謝罪が(報道されている限りでは)見られない

 就任報道が流れ始めたころ、よく反省している証拠として提示されていたインタビューがありました。

 本来真っ先にあるべき被害者への謝罪が見られないことで、逆に不信感を抱きました。有料部分は読んでいないので無責任な意見になるかもしれませんし、記事の編成の都合かもしれませんが、それでも「サッカーの名誉」などと曖昧な物より被害者一人一人の人生を傷つけたことに言及がないのはあまりにも不誠実だと感じます。
 内々に謝罪しているのかもしれませんし、そもそも被害者は顔を見たくもないし謝罪を受け入れたくもない方もいるでしょうが、それでも公の場で謝罪することに意味があると思っています。

未だに選手の外見に口を出している

 氏の指導を受けた経験のある選手へ今でも頻繁に連絡があり、「髪を切れ」と言われたという情報を見ました。(選手の発言が間接的にでも氏を批判する材料となることで、選手自身に心痛を与えるのは本意ではないので詳細は避けます)
 上記パワハラの報告書にも「髪が長い」と暴力をふるったという内容があります。暴力がないから、被害者ではなくて自分を慕っている教え子だからとはいえ、サッカーとは全く関係のない外見について命令するのはパワハラ加害者としてあまりにも軽率だと感じています。また、各社が業務に関係ない部分では個人の服装や髪形のルール緩和の傾向にある昨今において、「髪が長いのは良くない」という旧態依然とした価値観から脱出できていない部分も不安に思う点です。

鳥栖に近い福岡で監督に就任すること

 パワハラを起こした鳥栖市と今回監督に就任するアビスパ福岡のホームタウンである福岡市は、特急だと20分程度の距離です。また、フレンドリータウンである久留米市は鳥栖の隣に位置します。福岡の多くのローカルテレビ局も、福岡・佐賀を放送エリアとしています。被害者が今も暮らしている可能性がある場所に加害者の報道が流れ、ポスターが張り出されます。被害者とその家族としては二度と見たくもない顔に触れる機会が格段に増えます。
 一般的な意見が知りたくて、全くサッカーに興味がない福岡在住の友人にこの件を伝えてみたところ、「そんな近場でパワハラしてるのにたった数年で福岡に戻ってくるの?」「被害者のことを考えたら、オファー出す方も出す方だけど、受ける方も受ける方」との反応でした。完全に同意です。
 
 アビスパ福岡は今年プロモーション費用のクラウドファンディングを行い、来年には博多駅にフラッグが掲載されます。

 長年「博多駅にアビスパを感じさせるものが少ない」と言われ続けたこともあり、私もクラウドファンディングに参加し、来年アビスパのフラッグが掲載されることを本当に楽しみにしてきました。今はそれが被害者の心情を傷つけることになるかもしれないと、忸怩たる思いでいます。

来年度以降応援するかどうか

 冒頭にもお伝えしたように、私は何の影響力がある人間でもなく、私の意見がクラブを動かせるとも思っていません。それでも小さな意見が集まれば何か動かせるかもしれないと、「監督が就任すれば来年は応援しない」「年間チケットも購入済みだが全てリセールに出す」というスタンスでクラブに意見も送りましたし、X上でポストもしてきました。「何を言ってもこいつは来年も応援するんだろうな」と思われると反対の意志が伝わらない気がしたからです。
 本当に就任した場合、勝っても素直に喜べず、負けてもざまあみろと愛したチームに思ってしまいそうなのが嫌で、応援し続けると強く言えなかったという理由もあります。今まで弱いチームを応援していると思われても、人気がないチームを応援していると思われても全く構いませんでしたが、パワハラを容認しているチームを応援しているとは思われたくもありませんでした。
 ただ、先日杉山スカウトのInstagramで全治8か月の怪我を負ったばかりのアビスパ一筋のバンディエラ、城後選手の後姿を見た時に、「城後が私達を置いていかなかったのに、私が城後を置いてはいけないなあ……」と感じた自分に気が付いてしまいました。本日(12/14)現在城後選手の来季契約は発表されておらず、その動向によってはまた賛否両論巻き起こるとは思います。それでも私は城後選手が去年の優勝報告会で過去の自分にかけた「お前の選択は間違ってなかったんじゃない?」という言葉が変わらないでいてほしいですし、城後選手が選び続けて好きだと公言してくれているチームを城後選手の動向にかかわらずこれからも応援したい気持ちを捨てきれませんでした。
 もちろん今いる選手たちは大好きで、新しく来てくれるであろう選手も含めて応援し続けたい気持ちはあります。でもそれとは別に、全然支持できないフロントと監督の下に置かれたアビスパを置いて去るのは性に合わない気がしてきました。以前も「憎しみで人が○せたら私は殺人犯になってしまうのではないだろうか」と危惧するレベルでフロントと監督が嫌いなままそれでも応援していたことがありますが、その時に戻ったような気持ちでいます。散々理屈を捏ねて置いて最後は感情論ですが、今はそのような境地です。フロント非支持のまま応援する方法が今のところ「金は出さないが声は出す」くらいしか思いつかず、モンスタークレーマーになるのは嫌なので開幕までに方法は検討したいと思っていますが……
 もちろん個人的なスタンスで、誰に強制するものでも、支持を求めるものでもありません。そもそも単なる趣味なのでひとりの一般人がここまでお気持ち表明するのも滑稽に見えるのは分かっていますが、それにしてはアビスパ福岡が私の人生の一部になりすぎたのだと思います。

おわりに


 今までネガティブな意見を発言することで空気を悪くしたくなくて、あえて楽しいことばかりをポストすることを心がけていました。観客が少ないことや勝てないことに怒っていても状況は改善せず、「何か知らないけどいつも楽しそうな集団」になった方が新しい人は近寄ってきてくれるのではないかと思ったからです。
 ただ、違和感を覚えた時はネガティブな意見でも、小さなアカウントでも表明したりクラブに意見した方がよかったと、今強く思っています。
 横断幕が事前審査制になった時でしょうか。ソシオと後援会が解散してすべてクラブ主導になった時でしょうか。クラブに意見を言うならトークンを買うべきという風潮が流れ始めた頃でしょうか。そもそも自分たちに全く関係ないと思っていた、S級ライセンスがあまりにも安易に再度氏に付与された時でしょうか。私が何を言っても変わることはなかったとは思いますが、それでも何か言っておけば今ここまでの無力感に捕らわれることはなかったのかもしれません。
 老害と言われても空気を悪くすると言われても、今後は納得できない内容についてはきちんと意見を伝えたいと考えています。

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