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ぼくらがケンカをしない理由

彼と付き合って三年が過ぎた。
私は出会った頃の彼と同じ年齢になり、彼は40代後半に突入してアラフィフの仲間入りである。
どちらもフットワークが軽い方ではないのでデートはもっぱら馴染みの店での昼飲みばかりだが、等身大の自分でいられる彼との時間は非常に居心地が良い。

先日、久しぶりに夜に会えることになったので三周年記念がてら焼肉を食べに行ってきた。
彼はじゅうじゅうと肉を焼きながら(私達の食事は基本的に取り分けなどは彼がしてくれる。私は食べるだけ)
「三年間も一緒にいてケンカしないなんて初めてや。俺、ホンマに瞬間湯沸かし器やのに紺さんに対しては一回もイラッとしたことがないねん。これはもう奇跡としか言いようがない」
と言っていた。
瞬間湯沸かし器どころか、これほど心が広い人を知らないくらいなのだけど(この辺についてはまた別の機会に書くつもり)。
ちなみにこれは付き合って三ヶ月くらいの時にも似たようなことを言っていた。
今まで一体どんな人と付き合ってきたのだろうと思う。

そういうわけでケンカも別れの危機も何もなく凪な三年が経過したわけだけど、双方が常にご機嫌だったかと言えば勿論そうではない。
私は何度か彼に対して雷を落としている。
と言っても半年に一度あるかないかくらいなので、本当に数えるほどではあるが。
これが何故ケンカにならないか。
彼がハナから全面降伏で白旗を挙げているからだ。
つまり、ケンカではなく私の説教。
「紺さんが怒る時は言い訳出来ひんくらい俺が悪い時やから。怒り返したところで負け戦なのが目に見えてる」
とのこと。

私はいかなる角度で検証しても彼に非があり、仮に何か言い返してきたとしても論理的に言い返せる自信がある状況でないと雷を落とすことはしないので、彼の判断は賢明だと思う。
(そして自分のこういうところが性格悪いし可愛くないなとも思う)

焼けたお肉を頬張りながら
「どうして私達はケンカしないのだろう」
という話をしていた。
上記のようにガチガチに論理武装出来る状態じゃないと怒らない私と、私に対して怒るネタがないという彼だから、というのは大きな理由ではある。
お互い歳をとって丸くなったというのもある。

が、一番の理由は
「ルールがない」
ことではないだろうか。

例えば、一日○回は連絡するとか。
異性がいる飲みの席はダメとか。
○○して欲しい。
或いは○○して欲しくない。
私達の間にはそれがない。
彼はどうだかわからないが、少なくとも私は彼が女性と二人で食事に行くのも構わないと伝えている(行ったことはないけど)。
唯一明確にしてるのは
「浮気がわかれば即別れる」
だけ(浮気の線引きも明確にしてる)。

ルールがあると、守られなかった時に不快になる。
それなら最初からルールなどない方が精神衛生上には良い。

まぁこういうことを考えてノールールにしたわけではなく、単にエエトシした大人にアレをやれコレはやるなとか言うのもアホみたいやなと思っただけなんだけど。

以上、私達がケンカをしない理由を考えてみた結果でした。

が!!!
これは私達が現在
「別々に暮らしているカップル」
だから成り立ってる話。
一緒に住んだらこうはいかないことは百も承知ですよ。

じゅうじゅうと音を立てて肉が焼けていく。
一杯目はお互い生ビール。
二杯目からは瓶ビールを一緒に。
「これ、焼けてるで」
彼は焦げてない方、美味しそうな方、大きい方を私に食べるよう促す。
いつだって、そうなのだ。

※追記※
実はこの日、強制はしてないけど
「出来れば連絡は毎日して欲しい」
と、お願いした。
理由は束縛でも寂しいからでも何かを疑ってるからでもなく
「長時間連絡がないと突然死とかしてないか気が気でないから」
不摂生なアラフィフの一人暮らしは色々心配…





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