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観劇:感想:TeXi's『ファジー「yours」』@ BUoY

観劇に行ってきたので感想を書きます。
観てきたのは演劇ユニットTeXi'sの、"男女二元論が生み出す「加害性」について考える"『ファジー』という連作の最終部『yours』。

※ネタバレとかにはならないと思いますが、ものすごく個人の感想なので、ぜひ実際に劇場で観てみてくださいね。

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実は第1作の『theirs』は観劇できてないので、かなり偏った感想になっちゃうかも。

2作目の女性の加害性を社会的構造と共に考える『ours』は登場人物があまりにみんな怒りに満ちていて、それを誰かにぶつけ続けるのが面白かった。
(私にはできないことなので)

で、今回3作目。

作・演出のテヅカアヤノさんは、自分がどこまでいっても女性(生物学的に)ということを嫌というほど分かっているのではないかなと思う。だから連作も『彼ら』で『私たち』で『あなたたち』なんですね。(どう訳すのが正解かわからないけど『yours』は『お前ら』という感じもする)

作品に出てくる人たちはみんな「主観の塊」みたいな、それぞれ誇張された「意志の妖精」みたいで、お互いに幼少期の純粋さ、残酷さでもって対立し合う。
それはもはや男女の二元論を超えた人間そのものの持ってる原罪とか邪悪さとか利己的な部分がぶつかっているように見えるんだけど、こういう欲求をおそらくみんな捨てたり隠したりして大人になっていくのではないかなと思い、素直にその感情を行使し続ける、幼稚な振る舞いを見せる彼らは青々しくて痛々しい。
そしてそれを伝え合う言葉は、時に単純ではなく詩的で抒情的な雰囲気をまとう。

私は座席でずっと面映かった。

途中、もうやめなさいよバカと言いながら登場人物一人一人に平手打ちをしたくなった。(最低)
何これなんでこんなに辛いんだ、って思っていたら、これ、チラシなどに書いてあるTeXi'sの紹介文の一説。↓↓

「劇作の中で俳優・観客の安全を確保する線引きを行うことを前提に、身体・上演空間への独自のアプローチを図り、異なる視点を持つ人間同士の対立や堂々巡りのフラストレーションをうず高く積み上げることで、ストレスフルだがワンダフルな作品を生み出す」
(前後文略)

…書いてあるやんけ。

つまり見事にそのフラストレーションに巻き込まれていて、身体の中にそれが積み上げられていたというわけでした。
それで私の加害性の具現化が平手打ちだったと。あーらら。

でもやっぱり私には瑞々しいがすぎた…。
俳優さんたちがみんな超真剣で、声で、フィジカルで撒き散らしてくるからキツかった。なのに具体的な傷をつけてもらえないもどかしさ。(それはもう1,2作でやり終えたということなのか??)いまこの口論に結論も出ないまま急にファンタジーで楽しいだけの妄想に無理やり引きずるこまれるうざさ。
終始「ダメージを喰らう」というより、煩わしい・恥ずかしいものから目を背けたくなる感覚があり、それを意図的に仕掛けられているのかもと思い始めた時に、自分の体勢が変わった。これ、ちゃんと観ていなくてはいけない。かも。

男女二元論の加害性を考えるってことは、つまり同時に「被害性」も考えるってことになると思うし、同じくらい向き合わなくてはならないことだと思う。
だから(だから?)もっと具体的な言葉も欲しかった。抽象的で概念的なもの、普遍的なものに行き着く前の、もっと個人的でわがままな「加害意識」「被害意識」。勇気のある作品で、作家で、演出家で、俳優陣だと思うので、勇気を持って傷つけられたかったなと。
現実では人間一人一人にもっと複雑な社会性、つまり「事情」があって、それが欲求じゃなくとも表出してしまうことがあるよねってこと。
…その思い当たる節を自分で考えろってこと、なのか…?

そんなことを考えながら観始めていたら、何が強く糸口になったのかはわからないまま、物語の主軸?が抱えていた問題がふんわり解決の方向へと向かう。ここは「ああ、現実と似ているなぁ」と思う。

やってきた仕事がら、実際に小学生のこどもたちと接することが多い。ほんとにちゃんと邪悪なんだ彼らは。もっと。ただ無邪気で残酷ということもあるし、こんなに切実でなく、ただなんの理屈も通さずに傷ついてたり悲しんでいたりする。問題解決に必ず効く言葉なんてない。ひょんなことから問題が始まったり終わったりもするし、気づいたらきっかけさえなく、残した傷もわからないままうやむやになったりする。
だから、見ていなくてはならない。観察し続け、理解してみようとし続けなければならない。


「一回観ただけではわからないつくり」とのことなのでもう一度行きたかったけど、時間もお金もなく断念しました、申し訳ない。

話が飛ぶけど、
9年ぐらい前に劇団TRASHMASTERS の
『猥り現』(みだりうつつ)を観た時、作中で

「争いは全て"男"と"女"の代理戦争だ」

というような台詞があって、
ものすごく刺さって、ぎゃあその通りかも…!って当時なったんだけど、

TeXi'sの『ファジー「yours」』を観て
男女というどうしようもなく分断されている性質を「立場」として殻のように被ってしまうことが、一番争いを他責化しやすいだけなんじゃないかなって思い始めました。
だから結局争いに参加したがるのはその人間一人一人の内なる加害性だよね。。。

はちゃめちゃに主観の塊みたいな感想ですが、自分的に「どれだけたくさんの人からどれだけたくさんの言葉を引き出せるか」が良い作品かどうかのバロメーターなので、
良い演劇体験をしたと心から思います。

2024.12.22

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