ミーワムーラ 5thアルバム『種』
久しぶりにミーワムーラの『種』を聞いた。2020年、コロナ禍がピークの最中に発表された5枚目に当たる5曲入りミニアルバム。コロナ禍によって街から人が消え、多くの飲食店、老舗有名店が潰れ、ライブハウスでのクラスター発生によって通りから音楽さえも消えてしまったあの時、アルバムは文字通り隔離された部屋のポストに差し入れられた葉書きのように静かに届けられた。
既成曲で未発表のものをこの機にまとめた、と、いつかのライブのMCでさらりと言っていたと記憶するが、上のような状況で聞いたせいか自分は収められたそれぞれの楽曲を、作者たちが込めた以上のものに感じて当時聞いたかもしれない。
それは例えば、1.『暗闇のオレンヂ』に希望への格闘を、2.『イルミナシオン』に、喪失の哀しみを、3.『しあわせもりもり』に草野心平からのDNAを、4.『種』に、命が変転しながらも果てしなく循環していく様を、そして、5. 『天の然り』に、死は決して終わりではないという啓示を。。。と言うように。
いずれにせよ個人的にこのアルバムはあの出来事と不可分で、それは今も変わらぬまま。
以下、主要2曲について。
表題曲『種』はファンなら知っての通り2ndアルバム『道』に収められていたナンバー。そちらはアンプラグドで、本アルバムのこれはバンドバージョン。『道』でのベアナックルなアコースティックバージョンがグレイの美しい砂絵のアニメなら、こちらは極彩色のクレイアニメという印象。フュージョンライクな演奏が次第に高まって行き、頭の中でオリジナルなMVがみるみると展開していくよう。代表曲の一つだが、このアルバムの制作の目的にはこの曲をこのアレンジの演奏で正式に記録しておきたいという意図が一つあったのではないかと想像する。何度もリピートしたくなる名曲。
※未聴の人にはYouTubeに2種類の動画がある↓。
こちらがアコースティックバージョン
こちらがバンドバージョン
そして『天の然り』。調べると然り(しかり)とは「そうである、そのようである、その通りである」と言う意味を持つことば。アコースティックギター2台(内1台は10弦)とヴォーカルだけの、言わば二人の真骨頂のような演奏でギターの録り方が素晴らしい。そして自分がここで注目したいのはそのことばについて。菅原が稀有な詩人であることは以前にも書いたが、この歌のそれはまるでネイティブアメリカンの祈りのようだ。
天と地が逆さになって
命が終ったとしても
この両手が頼りないものだとしても
今ここに在ることからまた始まる
この歌の中の視線と思想(と言ってしまう)に自分は覚えがある。なので曲の終盤へと向う途中の彼女のネイティブ・スキャット(?)を初めて聞いた時は鳥肌がたった。自分はかつてこれと同じ声をナバホのリザベーションで聞いたから。これはまるで病んだ大地を治癒するためのヒーリングチャントのようではないか。この曲をライブではまだ一度も聞いたことが無い(やったことあるのだろうか?) いつか然る時、然る場所で聞いてみたいと思う。
追記
。。。。と、この記事を書いた数日後の8月4日、学芸大近くAPIAにミーワ―ムーラを見に行って、終演後、この『天の然り』について友人に聞くと、コロナ禍のど真ん中、2020年3月27日に行われたいわきCulb SONICからの配信ライブでビートルズの『ディア・プルーデンス』に続き歌われたと教えてくれた。この日、自分も見ていたのにすっかり忘れていた。そしてこのライブ動画、改めて見ると当時のコロナ禍の重苦しい空気とそこを乗り越えようとする様が記録されていて貴重なドキュメントだと思った。この記事を書いてこのアルバムをコロナと結びつけて聞き過ぎたと少し反省していたが、やはりこれはこの時期のものだったと思いを強くした。
You tubeチャンネル 「SONIC TV」 第一弾配信LIVE ミーワムーラ無観客配信ライブ club SONIC iwaki 2020年3月27日
演奏は10分55秒頃から。『ディア・プルーデンス』~『天の然り』は1時間30秒頃から。できれば全編を是非。
このアルバム、またミーワムーラの他のアルバムも聞いてみたいと言う人はこちら↓
ミーワムーラ - Discography (tumblr.com)