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ピーターラビット:チンピラとサイコのガチンコバトル

※英語版を視聴したためシナリオの詳細を理解しきれていない可能性あり。
また、詳細なシナリオ展開には触れないがネタバレを気にする方はすぐ映画館に行くことをお勧めする。 (と書いているが後々読み直したら結構シナリオに触れていた。)
非常に独断的な感想なのでまじめな方は読まないほうがよいかもしれない。


もとヤンキーが更生してまじめに働くパパさんとかになっていると、各メディアで美談として語られることがよくあった。(今もあるかもしれない)
ピーターラビット実写版を見て思ったのはそれだった。

ピーターラビットの実写版と聞いて日本人の我々が考えるのは『野ウサギたちと人間のハートフルな触れ合い』『自然の厳しさに立ち向かう野ウサギたちの勇気』みたいなお涙頂戴物語ではないか。
正直なところ私もそう思っていた。
しかし、予告編で流れるやたらに軽快かつ連携のとれたアクションや、CGによるモフモフなウサギたちを見るにつけ『これは観ておかなくては』と思うようになった。

残念ながら映画館で見るタイミングがなかなか取れずどうしようかと思っていたのだが、我慢できなくなって海外の有料配信で英語字幕版を観ることにした。
そのため、シナリオの詳細について勘違いをしている部分があるかもしれないことを明記しておく。


この映画、人間も動物もクズかキチ◯イしか出てこない。
ピーターラビット一味(敢えて一味と書こう)ははっきりいって欲望に身をまかせるチンピラでしかない。
北斗の拳で言うところのヒャッハー君たちでありマッドマックスで言うところのやっぱりヒャッハー君だ。(順番が逆か)

ピーターは過去に自分たちの縄張りに勝手に家を建てたクソジジイ(こいつもかなりキチ◯イでありサイコ)に父親を殺されている。
まぁジジイ側からすれば『オレ様の敷地に無断侵入し庭の作物をかすめとるウサギなんざパイにして食ってやるぜガハハハ!』な訳であるが、ウサギ側からしたら『勝手に柵建てて所有権主張してんじゃねぇよ。みかじめ料払えや。』でありどっちもどっちである。
そんなわけでピーター一味は常にジジイの庭の作物を狙っているし、ジジイはジジイでウサギパイの材料を見つけては殺そうとしている。

日本でのピーターラビットのほのぼのとした小学校の推薦図書みたいなイメージはこの映画には一切ない。
そこにあるのは『チンピラウサギ一味vsサイコジジイ』による命がけのガチンコバトルだ。

なんといっても私が気に入ったのはピーター一味を筆頭に動物たちがただただ本能に忠実なだけのカオスなクズとして描かれているところだ。
彼らにあるのはいかにも人間的な所有欲と破壊衝動。
作物が目当てであれば野菜だけ奪ってさっさと巣穴に帰ればいいものを『ここがオレたちの新しい根城だぜ!ヒャッハー!』とばかりにジジイの亡くなったその日にジジイの屋敷を荒らし放題荒らしまくる。
ハングオーバーも真っ青なカオスっぷりは腹を抱えて笑った。
そこには秩序も何もない。
ハロウィンの渋谷と同じだ。
とにかく集団の無法ぶりだけが延々と描写されていく。
最初はピーター一味に同情的だった観客もさすがにこの辺で気づくだろう。
『これは自分の子供には見せたくない映画だ。』と。

そこで登場するのがサイコの遺伝子を継ぐジジイの孫である。
こいつもかなりやばい。
勤務先(ハロッズ)の便器を自ら掃除した上にストローでその水を飲もうとするくらいの意識高すぎ系サイコだ。
出世の道がライバルに奪われたとなると店で暴れまくり自分がこだわりにこだわったディスプレイを破壊しクビになる。
欲しいものを買ってもらえなかった幼児が癇癪を起こしたかのようなその姿はまさにサイコ。
クズカオスアニマルズの相手として不足はない。

ピーター一味とサイコ2号のバトルは最高だった。
英国ではウサギは害獣(英語字幕でも度々verminと出てきた)であり、パイの材料としての側面を持つ。
もちろん可愛らしい小動物であるには違いないが、農村部では作物を荒らす害獣である。
巣穴を掘りまくることによる地盤への影響も大きいらしい。
だからサイコ2号は本気でピーター一味を殺しにかかる。
彼にとってはただのウサギに過ぎないし、なにより会社をクビになったストレスのはけ口でもある。
対してピーター一味も負けてはいない。
ヤられる前にヤる、そうお互い本気なのだ。

そんな中、双方の潤滑油となるべきはずの存在が近所に住むアマチュア画家のビー姐さん。
彼女は一見ウサギや自然を愛する心やさしき女子(そこそこお年は召されている)のようだが、彼女の作品を見る限りきっと『都会で何か嫌なことがあって人間に絶望して田舎に引っ込んできた』のではないかとさえ思える。
きっと彼女も元サイコだ。
もしかしたら手首に傷の一つや二つあるかもしれない。(あくまでも私の想像)

彼女はサイコ2号とイチャイチャしてピーター一味の闘争心に火をつけるだけたと思ったら、唐突に戦争を終わらせる。
しかも争いは何も解決はせず、『あたしもう嫌だから田舎から出てく。』である。
最低の無責任女と言わざるを得ない。
まぁ、家をぶっ壊されてキレない人はいないかもしれないが。

そんなわけでピーターラビット実写版はクズとサイコしか出てこない最高のアクションバトル映画であった。
話は最初に戻るが、ヤンキーは更生しただけで褒められると書いた。
この映画でも同じだ。
クズとサイコがしかたなくまともになろうとした結果なんとなくハッピーエンドになる。
ふつうのウサギとふつうの大人に戻っただけだ。
なんとも腑に落ちない結末ではあったが児童文学だし最後くらいは綺麗にまとめるのも仕方ないかもしれない。

なんにせよ、最高に楽しめた。
みなさんもぜひ劇場で。
私も日本語字幕版をちゃんと見に行きたくなった。

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