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レディプレイヤーワン:東映特撮とサンライズアニメとガンプラで子供時代を過ごした中年が感じたこと(ネタバレ有り)

スピルバーグ監督のレディプレイヤーワンを公開日に観に行った。
正直言って泣くかと思った。
今までの自分の人生が全て肯定された気がしたからだ。

子供の頃、私は家のなかで独りで遊ぶのが大好きだった。
特に虐められていたとかいうこともないのだけど独りで部屋で何かをしているのが好きだった。
さほど多くないながらも友達もいたのだけど独りが好きだった。
テレビで変身ヒーローやヒーロー戦隊が大型ロボットに乗って悪のロボットや怪獣と戦うのを口を開けて見ていた。
そして、そのヒーローやロボットの絵を画用紙に描いてハサミで切り出して人形を作って戦わせて遊んでいた。
小学生のころにはガンプラブームが直撃。
アニメそのものよりもガンプラが流行っていた。
もちろん私もわずかな小遣いを全てプラモにつぎ込んでいた。
ガンプラだけじゃない、その前にはロボダッチやヤマトやアトランジャーやら本当に数えきれないほど作っていた。

そうやって子供時代を過ごしたみなさんのほとんどは今は普通のおじさんとして生きているのではないか。
当時の熱をそのまま仕事に活かして漫画家やら映画監督やらそういったコンテンツに関わっていきている人の方が少ないのではないか。
自分自身、そういったオタクコンテンツにかけてきた時間、熱量、お金といったものは自分の心の平穏と満足のためだけにあって、それで充分だと思っていた。
金銭的にも社会的にもそういったコンテンツにコストをかけるのは無駄、といった考えの方も少なからずいる。
でもそれでいい。
自分が楽しめるものがある。
こんなに幸せなことはないと私は思っていた。

そこで今回のレディプレイヤーワンである。
公開前の情報としては『日本を始め世界中のゲームや映画やそういったオタク的コンテンツがふんだんに盛り込まれた娯楽大作』とのことだった。
公式のトレーラーでもガンダムやらアイアンジャイアントやらデロリアンやらが活躍していた。
おそらくこの映画を観に行かれた方のほとんどは、そういったコンテンツが登場するという部分に惹かれていたのではないか。
私もそうだった。
正直なところスピルバーグの映画を観るのもいつ以来か、といったぐらいに特別な期待はしていなかった。

そして映画が始まりマインクラフトやバットマンや様々なキャラクターが登場し作品内のVR世界であるオアシスが説明されていく。
私は一瞬でオアシスの中にいた。
スピルバーグはやっぱりすげぇとか映像がどうとかではない。
そんなのは後から思ったことだ。
『この世界最高だ!』
それだけ。
自分の子供の頃の脳みそに入り込んだような興奮があった。
様々なコンテンツがモブとして登場する贅沢さ、はあくまでおまけの部分でしかなかったのだ。
かなり豪華なおまけだが。
ケーキでいったら上に乗っている砂糖の人形や飴細工のようなものだ。
それ自体精魂込めて作っているのは確かだが、作り手であるパティシエが本当にお客さんに味わって欲しいのは土台となるケーキそのもの。
レディプレイヤーワンで言えばパティシエはスピルバーグ。
飾り付けは様々なコンテンツやキャラ。
ケーキそのものは映画の根幹となるストーリーとメッセージだ。

やっと本題に入る。
私はこの映画を観て泣きそうになった、と冒頭で書いた。
自分の人生が全て肯定された気がした、とも書いた。
映画後半、主人公パーシバルはオアシスの作り手であるハリデーと言葉を交わすことになる。
『僕のゲームを遊んでくれてありがとう。』
ハリデーはそう言い残す。
その時、このシンプルなセリフに込められた膨大な想い、メッセージが私の中に一気に流れ込んできた。
一瞬で私はあのころ独りで部屋で黙々とロボットの絵を描いていた小学生の頃に戻った。
全く役に立つことのない、そしてそれでも構わないと思っていた特撮、アニメ、映画、ゲームへの私の想いや熱が一気にここで現実のものとして認められた気がした。
この映画はスピルバーグから我々への感謝状だったんだ。
様々素晴らしいエンターテインメント作品を作ってきたスピルバーグからの。
『僕たち(や先人たち)の作ってきた映画(や様々なコンテンツ)を愛して楽しんでくれてありがとう。その気持ちが僕たちを前に進ませるんだ。だから僕たちの作ったものが君たちの人生を少しでも楽しくすることができているなら嬉しいよ。』
44歳の中年オヤジは勝手にそう受け取った。
実際スピルバーグはそこまで想っていたかどうかは知らない。
脚本家(原作者)がどう想っていたかもわからない。
でも私は嬉しかった。
子供の頃からずっとオタクコンテンツを好きでいた自分の人生をこんなところで全肯定してもらえるとは思わなかったんだ。

この映画は観る人の世代、環境、人生経験によって楽しめるポイントも受け取るメッセージも全く違うものになると思う。
たぶんこの文章を読んでも『何盛り上がってんだよ、おっさんキモい。』と思う人も多いだろう。
でもそれはそれでいい。
ただひとつだけ、あと10年、20年後にもあなたがまだこういったコンテンツを愛する人であるならばもう一度この映画を観て欲しい。
その時にはキモいおっさんの気持ちも少しはわかってもらえるかもしれない。

こんな素敵な感謝状を作ってくれたスピルバーグに一言。
『この映画を作ってくれてありがとう。』

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