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初めての博ふぇす!ガクタメ制作日記
こんにちは。
ノーチのかたっぽ、¥0sukeです。
今日からいよいよ博ふぇすですね。
この記事は会場に向かうまでの電車の中で書いています。
大荷物を抱えてドキドキです。
何を隠そうノーチのしっぽ研究所のおふたり、博ふぇすは初出展なのです。
参加にあたって
自然科学系の作品を作っている作家さんや研究者の方々などが一堂に会す大型即売会イベント、博物ふぇすてぃばる。
我々も生き物好きなので、何度か足を運んだことがありますが、出展したことはありませんでした。
だって、怖かったんですもの…
見渡せばガチの生き物クラスタの皆さんばかりで、正直おなじ土俵で闘える自信がなくて…
しかし、月日がたち、我々も成長しました。
僕は理学部の生物学科を卒業しました。
日本人平均を基準にすれば、それなりに生き物に詳しい部類に入るでしょう。
この数年も絵を描き続けてきたので、少なからず作品のクオリティも上がっているはずです。
生物学×絵という自分の強みを最大限に発揮できるいい機会です。
物販参加者に課される宿題、ガクタメ
そんなこんなで、今年は参加を決めました。
博物ふぇすてぃばるは、様々な学術ジャンルに興味のある人達が、趣味も仕事も関係なく、交流できるイベントです。
そのため、ただ自分の好きなものを好きなように売るのではなく、イベントの目的に沿ったブースを作る必要があります。
そこで課されるのが、「ガクタメ」という課題。
ガクタメとは、「ガクモンからエンタメ」の略で、たくさんの方に学問を楽しんでもらうための企画のことです。
自分が好きな学術ジャンルは、こんなに面白いんだよ!と伝えるために、参加者の皆さんは様々な工夫を凝らしています。
※ガクタメについては下記参照
我々は絵を描く人なので、ガクタメで作品作りと関係する学問について紹介する必要があります。
ガクタメのテーマはどうしよう?
我々ノーチのしっぽ研究所は、生き物のイラストをメインに描いています。
過去に描いた絵本には、地学やその他のサイエンス要素も散りばめられていますが、基本的には生物学がベースにあります。
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自分がいちばん詳しい分野についてのガクタメ企画を作るという手もあります。
僕は、生物学の中でも「発生生物学」というジャンルが特に好きで、専攻していました。
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発生生物学というのは、簡単に言えば、「赤ちゃんはどうやって産まれてくるの?」という学問です。
受精卵というたった一つの細胞が、分裂を繰り返しながら、複雑な体を形作っていく過程を探究します。
粘土細工のように、誰かが意図的に細胞の塊をこねているわけでもなく、単純な遺伝子のプログラムで、自動的に体が組み立てられていく様は、神秘的といえるでしょう。
その神秘性に強く惹かれて、僕は発生生物学を勉強していました。
しかし、発生生物学の知識は、まだノーチのしっぽ研究所の作品作りには活かせていません。
あまりにもマニアックですし、ある程度生物学の知識がないと理解が難しいので、なかなか作品に還元することが難しいからです。
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困りました。
自分がいちばん語れる分野のものを、作っていないのです。
ノーチのしっぽ研究所の看板を掲げているのに、作品と関係なしに語るのはただの押しつけになってしまいます。
何をテーマにしようか…
そもそも、発生生物学が何なのかすら、あまり知られていないと思います。
大学に入って、生物学にもたくさんの研究分野があることを知りました。
研究室によって、扱っている対象が全然違うのです。
分子レベルの遺伝子やタンパク質を扱っているところもあれば、大きな山や森全体の生態系を調べているところもあり、本当に多様なジャンルがある学問です。
大学では、それらをひと通り学びました。
どれも突き詰めていけば奥が深い分野で、学生生活で見ることができたのは、それらの入口のほんの少しだけだったと思います。
しかし、いろいろな入口を見て回ることができたのも、貴重な経験だったと思います。
…広く浅くでも、この経験は十分「エンタメ」になり得ないか?
大学1年生の頃は、生物学という学問の全容を垣間見ただけでも、その世界の広さに胸が高鳴りました。
この気持ちをエンターテインメントにしたい。
思えばノーチのしっぽ研究所の活動だって、自然科学の面白さなんて考えたこともなかった人が、最初に興味をもってくれるきっかけになったら良いなと思って続けています。
ガクタメは、何も難しくてマニアックじゃなきゃいけない訳では無いし、知識の多さ深さが優劣ではありません。
といった考えに至ったので、今回のノーチのしっぽ研究所のガクタメのテーマは、
生物学にもいろいろあって、めちゃくちゃ色んなことを研究してるのよ〜
これになりました。
テーマをイラストに起こそう!
テーマが決まったので、どうやってそれを皆さんに分かりやすく伝えるかを考えます。
我々の表現方法といったら、絵です。
他の絵描きさん方を見ると、イラスト図解をフリーペーパーにして配布するという形態を取っている方が多いようなので、我々もそれで行きます。
さて、生物学の全貌を、どうやって図解するか…
1枚のイラストをひと目見ただけで、「生物学のいろいろ」の全貌をざっくり把握できるようにしたい。いろんなところでいろんな疑問が沸き起こっていて、それぞれの疑問が生物学の各分野に繋がっていたらどうかな…
などとイメージを膨らませ、以下のような絵を描くことに決めました。
自然豊かな風景を俯瞰したアングル。
いろいろなところでいろいろなことが起こっている、視覚探索が楽しいイラスト。
たくさんのキャラクターが、それぞれ異なる視点から身近な生き物を観察している。
それぞれのキャラクターが浮かべた疑問は、生物学の学問の種となっている。
ラフ〜線画
イメージを実際に描き起こします。
作業環境はiPad ProとProcreateです。
舞台は、森の中にある研究室と、そのお庭。
生物学のミクロからマクロまでのスケール幅を1枚に収める必要があるため、研究室の室内と屋外が共存した構図にしていきます。
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どの学問分野を採用するかを考えながら、全体的にバランスよく描き進めていきます。
マクロ視点は空から見下ろし、ミクロ視点は顕微鏡を覗いている感じに。
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位置を調整しながらペン入れしていきます。
キャラだけ別レイヤーに分けて作業しました。
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一部分だけフォーカスして紹介します。
これはスロリ先生が研究室で顕微鏡を覗いて、細胞を観察しているところです。
細胞の中はどうなっているんだろう?という疑問が、細胞生物学という学問を生んだことを表しています。
余談ですが、このイラストは遠近感を無視した「アイソメトリック」という画法で描きました。
上空から斜めに景色を見下ろすと、現実では遠くのものは小さく見えますが、この画法では小さくなりません。
したがって、描いていて「このキャラはもっと奥の方にいたほうが良いな〜」となったときに、パースによる変形を無視して移動させても成立します。
複雑な絵を描く時にとても便利な画法ですね。
Procreateの機能で表示させたガイド(うっすら見えている細かいマス目)に沿って線を引けばいいので、簡単に描くことができます。
色塗り〜仕上げ
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さっきのところに色を仮置きしました。
大体の配色が決まればいいので基本ベタ塗りです。
吹き出しとキャラは視認性を高めるために白く縁取りました。
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さらに描きこんで、色味を調整。
細かくレイヤーを分けているので、後から別々に色を調整できて便利です。
デジタルの強みですね。
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ガクタメは表裏同じイラストで、表がイラストメイン、裏が解説メインという構成にしました。
解説も文字ばっかりだと難しくなってしまうので、できるだけ文字は少なくして、ビジュアルでイメージが伝わるようにイラストを描き入れました。
博ふぇす会場でお待ちしてます!
完成したガクタメイラストの全体像は、ぜひガクタメ会場でお確かめください!
こちらはフリーペーパーなので、ご自由に持って行ってもらって大丈夫です。
この記事には博ふぇす終了後に全体像をアップしておきます。
ノーチのしっぽ研究所のブースはE-20。
ちょうど真ん中らへんです。
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それじゃそろそろ会場も近づいてきたので、今回はこの辺にしておきます。
それでは、行ってきます!!!!
2022/10/10追記:博ふぇすお疲れさまでした〜
イベントの感想をまとめた記事を公開したので、こちらも見てみてくださいね。
最後に、ガクタメの全貌を公開します。
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