見出し画像

ポスターのお仕事「夏の特別展 浅い海と深い海展」

今回は、ふなばし三番瀬環境学習館さまで開催中の特別展『浅い海と深い海展―今日からキミも研究員―』のポスター制作のお仕事ついて振り返る記事です。

ふなばし三番瀬環境学習館は、三番瀬の自然について遊んで学べる博物館。体験型展示がたくさんある常設展も魅力ですが、積極的にワークショップや企画展を行っており、地域住民に愛されるスポットです。

ノーチのしっぽ研究所では、過去に何度も学習館さま主催のイベントに参加させていただいており、展示に関するイラスト制作等にも携わらせていただきました。
平素より大変お世話になっております!!

↓過去のイベント、お仕事

今回も学習館スタッフさまからお話をいただき、特別展ロゴ、ポスター用イラスト・デザインを制作させていただくことになりました。

制作の流れはこんなかんじ。

  1. 特別展の企画書を読み、ラフ案を3案制作

  2. 学習館さまに1案を選定いただく

  3. 決まった1案を本制作し、提出1回目

  4. 学習館さま初校

  5. 修正、提出2回目

  6. 学習館さま再校

    完成、データ納品

さくっと振り返っていきましょう。

ラフ

学習館スタッフさまから共有いただいた企画書とデザイン依頼内容を要約すると、以下のような感じでした。

  • 展示エリアは浅海深海の2エリアに分かれており、2つの研究所を巡って海のスペシャリストを目指すという展示ストーリー

  • 浅海の研究所は別次元の未来(イメージはスチームパンク)、深海の研究所は整然とした近未来的なイメージで展示空間をつくる予定

  • ポスターにも浅海と深海の生物群を掲載したい

この要望をもとに、イメージを膨らませます。
今回のご発注では2-3案のラフを見たいとのことだったので、ちょっとした思いつきでもボツにせず、とにかく形にしてみることにしました。

まずパッと思いついたイメージは、浅海と深海という対極的な2エリアから成る展示設計なので、ポスターも大きく上下2分割にしてデザインにしてみること。
ポスター全体の構成は、海面から海底までの景色を1枚におさめ、各所でいろいろなことが起こっている感じにしたら面白いんじゃないかと思いました。

次にロゴのデザインを考えます。
「スチームパンク」と「近未来」と聞いてまっさきに連想したのが、TDSのポートディスカバリーとTDLのトゥモローランドです。

ディズニーシーのポートディスカバリーエリア(F.しっぽ撮影)

ポートディスカバリーエリアは過去の人々が思い描いた架空の未来都市という設定。ストームライダーがあったところ(今はニモのシーライダー)です。
まさしく今回の展示の「別次元の未来」のような景観です。銅を貴重とした色味や風変わりな造形が参考になります。

一方トゥモローランドは(現実の)近未来の都市をテーマにしたエリアで、スペースマウンテンがあるところです。白を基調とした景観、宇宙や電脳世界を感じさせるネオンカラー等が参考になりそうです。

…というようなファーストインプレッションをそのまま絵にしたのが下記のラフ案。
ちなみに作業環境はiPad Pro、Procreateです。

自分で言うのもなんですが…

いや、自信をもって言うぞ!めっちゃかわいくないですか?????
まだラフ段階ですが、なかなか楽しげな感じになりました。

ゴミ問題についての展示や、深海調査艇のロボットアームを操作して生き物を採集するような体験展示もあるようなので、ポスターにも反映させてみました。
ロゴ案は、浅海はゴテゴテのスチームパンクデザイン、深海はネオンサインのようかイメージで作っています。浅海のほうは時計の歯車のパーツで文字を形作ってみましたが、ロゴとしての視認性を高められるかな…というのが懸念。

続いて2案目を考えます。
1案目を描いていて、「今日からキミも研究員」というサブタイトルをあまり重視していなかったなと思い、研究員っぽさを際立たせたデザインもいいかなと思いました。
そこから膨らませて、海の生き物を棲息深度ごとに図示したアンティークな博物画風にしてみたらどうかな~と思い、描いたのがこちら。

子供向けの展示にしては少々渋めですが、いかにも学問チックな感じが逆にウケたりしないかな…?というねらいです。
線のタッチもハッチングを入れたりして、銅版画っぽい感じを出しています。

「アンティークな博物画風」というアイディアから派生して、オシャレなビンテージポスター風のデザインのパターンも作ってみました。
イラストに番号が添えてあって余白にちっちゃく学名がかいてあるやつ。こういうの良いですよね~
タイトルのリボンが無駄にびろびろ長くて波打ってるのも好きです。

この3案のラフを提出して、校正結果を待ちます。
前回の記事でもちょっと書きましたが、本件はSCP大百科2との同時進行。戻り待ちの時間もノンストップです。


清書

学習館スタッフの皆様にご確認いただいた結果、1つ目の案が採用になりました。やっぱりそうですよね!だって一番かわいいもの。
どの案も自分の好みと展示のイメージに合致する感じにかけたかなと思っていましたが…やはり最初に出したアイディアがいちばん輝くもんですね。モノづくりの常。

上の画像は、ラフのイメージを損なわぬよう、線を整えた初校バージョン。
文字組や画像の配置は全てAdobe Illustratorというデザインソフト、イラストや写真の色補正はAdobe Photoshopという画像編集ソフト使用しています。裏面のレイアウトは支給データと表面用に描いたイラストを使ってレイアウトしてみました。


ロゴについて詳しく見ていきます。

描き込みを増やしてスチームパンク感を強くしてみたのですが、結果「浅い海」が読みづらくなってしまいました。

そしてこれが修正後のバージョン。
可読性の高い既存のフォントをIllustrator上で組み合わせ、ロゴを作り直しました。結構すっきりしたんじゃないでしょうか。
ありもののフォント打ちっぱなしではなく、明朝系とゴシック系を繋ぎ合わせたり、各パーツの大きさやバランスを調整するのがちょっとしたこだわり。
色味も全体的に明るくして、暗い深海の絵でも沈んだ感じにはならないように微調整しています。


生き物のイラストについて。

特別展期間中のワークショップ(ぬり絵)にも使用いただく予定なので、種の特徴がわかりやすいよう気をつけて描きます。塗り絵用イラストは輪郭線が太くはっきりしている必要がありますが、ただ漫然と形をなぞるだけではいいイラストになりません。
線を引く=境界を見出すということ。本当にそこに線を引くべきかどうか、線1本ずつの意義を考えながら選択していきます。

学習館さまとのお仕事では、必ず生き物のイラストは科学コミュニケーターのスタッフさまにご監修いただいています。子供たちの学習に関わるイラストなので、種の特徴が正しく表現されているか、実際の生態と齟齬がないか等、特に細かくチェックいただきます。

上の線画は、科学コミュニケーターのスタッフさまに添削いただいた後に、修正したものです。
赤を入れていただいた箇所をいくつか紹介すると、マイワシの背びれは方向転換の時しか開かないことや、ミツクリザメのヒレの形、吻(?)の太さ・長さの修正など。

魚のヒレについては前にも同じような赤が入った記憶が…ネットで資料を集めて描くと、どうしても水揚げ後の姿に寄ってしまいがちなので、ちゃんと頭にいれておきます。

完成

そんなこんなで、ポスターができあがりました。
ここまで書いておいて残念ながらまだ展示は見に行けていませんが、期間中にぜひ遊びに行こうと思っています。
自分のイラストが使われているシーンまで見届けたいのももちろんですが、
何より展示がめちゃくちゃ面白そうなので!!

おわりに

ふなばし三番瀬環境学習館夏の特別展「浅い海と深い海展 ―今日からキミも研究員―」は、9月1日まで開催中!!!

ノーチのしっぽ研究所制作のイラストを使った塗り絵の他にも、期間中たくさんのワークショップが開催中されています。

夏休みの自由研究に、家族やお友達との思い出に、ぜひ「浅い海と深い海」の世界にダイブしてみてはいかがでしょうか?

いいなと思ったら応援しよう!