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鳥海アートフェス2024

終わりましたよ、鳥と海のアートフェスティバル2024。今年もいろいろな人と出会えて楽しかった。
今回も準備期間〜本番までを、サクッと振り返っていきます。

モチーフ決定

前年の鳥海アートフェスに引き続き、「4色の色鉛筆だけでカラフルな絵を描こう」というワークショップを今年もやりました。
(前回の様子は以下の記事)

今年のモチーフは学習館スタッフ様のご提案で、コメツキガニになりました。
今年は5月のゴールデンウィーク中に開催となったため、三番瀬にたくさんのコメツキガニが見られる時期であり、オスの胸〜腹が鮮やかな色がモチーフとして相応しいのでは、とのこと。
当日は観察用の生体もご用意いただけることになり、なかなか他ではできない面白そうなワークショップになりそうです。

鮮やかな紫と赤は容易に三原色だけで作れますし、微妙にマダラ模様になっていて、塗りムラが出ても味が出そうです。砂に同化する背側の茶色も、三原色全てを使った混色の練習になりそう。

しかし、いくつか懸念事項も浮かびます。

  1. 形が複雑すぎる。
    子供たちにスケッチしてもらうのは難しそう。

  2. 観察が難しそう。
    体長2センチ程度の小さなカニで、しかも色が綺麗なのはひっくり返さないと見えない腹側。

1の問題点は、塗り絵形式にしてしまえば解決しそうです。ただ、塗り絵だけだと形を観察する面白さがなくなってしまうのが新たな懸念。
2の問題点は、とりあえずはお手本を用意して、塗り方や色の参考にしてもらいます。学習館スタッフ様にご相談したところ、一つだけなら鏡で底面が見られる観察ケースをご用意いただけるとのこと。至れり尽くせりで本当にありがたい限りです。
まだ細かい部分でいろいろ不安な点はありますが、まあ作り始めてしまえばなんとかなるだろうという気持ちで、キット制作を開始しました。

キット制作

色鉛筆の準備

鳥海アートフェスのワークショップは、参加費にキット代が含まれる形式です。前回同様、色鉛筆のセットやケント紙、ワークシートなどをキットとして配布し、それらを含めて参加費1000円として設定することにしました。

使用する色鉛筆は、去年散々悩んで選定したトンボ鉛筆の「色辞典」。1本100円前後と安価ながら、発色も良く、適度な硬さもあって、子供にも塗りやすい色鉛筆です。

カラーバリエーション豊富で、混色もしやすい

今回は6組×2枠の予定なので、最低でも12セット必要になります。前回の余りだけでは足りそうにないので、世界堂オンラインショップで早めに注文。

お手本を描く

次にワークシートを作ります。
大人数の子供たちに一斉に口頭で手ほどきするのは不可能です。ワークシートに説明を書いておけば、各組で付き添いの親御さんが僕の代わりに先生になってくれるという寸法です。

まずは塗り絵の下絵になる線画を描きます。
あいにく、三番瀬に赴いて生体を観察する機会を設けられなかったので、資料をたくさん集めて頭の中に構造を叩き込みます。ご支給いただいた写真プラス、YouTubeで動画を探したり、ネットでカニの解剖図を調べたりしながら描いていきます。

線画はiPadで描いています。
カラフルなお腹が見えるよう、真正面から見た構図にしてみました。色塗りの時の混乱を避けるため、できるだけシンメトリーに。
まつ毛が生えてるのがかわいいですよね。

線画が仕上がりました。
画面上の資料だけでは構造がよく分からないところは、学習館スタッフ様に質問し、理解が曖昧なまま線を引かない!と肝に銘じています。

「線を引いたということは、そこに境界を見出したということだ」

大学時代の研究室の先生の、強烈に印象に残っているこの言葉。今でも生き物の絵を描くとき、頭の中にこの先生の教えが響きます。

三原色だけで塗ってみました。これがお手本になります。成熟したオスは歩脚と爪の先が赤く色づき、第三顎脚の下半分が紫色を呈しています。やはり思った通り、三原色画法と相性がいい。
参加者にも目で見て感じた色で塗ってほしいので、あえて誇張気味にカラフルにしています。

正面から見た図だけだと、実物をプラケースに入れて観察した時と見え方が変わってしまうため、背側と腹側の図も描いてみました。
ワークシートで使えそうです。

余談ですが、以前学習館の企画展示用に、コメツキガニのイラストを描いたことがありました。

今改めて当時のイラストを見ると、観察が足りていない部分が多いな〜と反省がたくさんあります。
砂団子を吐き出している時の顎脚の開き方はそうじゃない!とか、眼柄の付け根の構造理解が甘い!とか、腹部の「ふんどし」の部分がもう少し分かりやすいアングルで描くべきだ!とか…
反省点を挙げだしたらキリがないですが、それだけ今回はきちんと観察して描けたとポジティブに捉えましょう。

イラレでワークシートづくり

デザインソフト(Adobe Illustrator)を使って、ポチポチワークシートを作ります。

ワークシートはこんな感じに仕上がりました。
前回はA3サイズ2つ折りで情報量が多くなってしまいうまく活用できなかったので、今回はA4片面でシンプルにまとめてみました。

混色の練習パート、コメツキガニの観察パート、色塗りパートというシンプルな3部構成にし、できるだけ文字の説明を少なくしています。

実際に参加者に色を塗ってもらうケント紙に線画を印刷してポストカード大に断裁し、ワークシートの切り込みにはめ込む形式にしてみました。ケント紙のカードを外すと、ワークシートに印刷されたお手本が現れます。

ケント紙と紙ペラを別々に配れば済むことなので、こんな小細工は必要ないのですが、こういう「キットっぽさ」がわくわくして良いよね。

ついでに会社のPCとプリンターを借りて、ブース用のキャプションも作りました(職権乱用)
イベント前は休み時間返上です…

当日

搬入

いよいよ本番。
去年は僕(ヨースケ)1人で挑みましたが、今年はF.しっぽと2人での参加でした。より設営が二倍速で進む!と思いきや、持っていった小作品の数が多かったため、てきぱき設営してもギリギリでした。

実は今回のためにたくさんミニ原画の新作を描いたのです。我ながら働き者だよ本当に。

ブース設営も無事終わり、あとは11時からと14時からのワークショップに備えるのみ。
学習館スタッフ様が「コメツキガニ採ってくるね〜」とバケツを持って消え、「お願いします〜」と見送りながら設営していたところ、その数分後に20匹くらいコメツキガニが届いてびっくりするなどしました。

ホワイトボードもお貸しいただいたので、ワークシートの説明が足りなかった部分を板書で補完します。
色鉛筆の上手な塗り方と持ち方、カニとエビの体の構造の共通点と違いを比較する図を描きました。

ワークショップ本番

満を持して開始したワークショップ。
予約分に病欠があったため、席が埋まるかちょっと不安でしたが…

盛況盛況!
当日飛び入り参加していただいた方もいらっしゃり、ご覧の通りの盛り上がり。
午後の部は満席で、急遽椅子と机を追加するほどでした。多めにキットを用意していて良かったです。

ひとたびワークショップが始まればフル稼働で動き回りっぱなし。あまりにも短時間でいろいろなことがあり書ききれませんが、印象的だった出来事を書きます。

・前回の色鉛筆を大切に使ってくれていた男の子

昨年10月のワークショップにも参加いただいた親子がお越しくださいました。自由研究のスケッチを見せてくれたのをよく覚えていたので、「前回もご参加いただきましたよね?」と話しかけると…
お母さんが「まだ持ってるよね?」と息子さんに目配せ。息子さんはがさごそとリュックから筆箱(硬くてパタンと閉まる懐かしのやつ!)を取り出し、ちびちびの青い色鉛筆を取りだして「黒は使い切っちゃったんです」と見せてくれました。

そんなに短くなるまで使ってくれるなんて!なんという!!

そしてお母さんが「この子前回持って帰った色鉛筆を大事そうに使って、小さくなっても筆箱に入れてるんですよ」とフォロー。「また新しい色鉛筆欲しくて来ました!」にかっと笑う男の子。

嬉しくて鳥肌がたちました。そんなことってある?本当にやって良かった。そして今年も開催できて良かったと、心から思いました。
よし、先生張り切っちゃうぞ〜〜〜〜〜〜

・カニを触りたい姉弟、触るのは怖いけど描きたいお母さん

姉弟とお母さんで参戦した親子。お子さんたちはコメツキガニを手に乗せて観察するのが楽しいらしく、ケースから出してじろじろ見ていましたが、カニは逃げ足が早いので、お母さんは少し仰け反り気味。
子供たちはカニに夢中で、後半は色塗りよりもカニの時間になってしまい、「すみません、子供たちカニばっかりで…」と代わりに塗るお母さん。講師の僕も「色塗りはお家帰ってからでもできるから、いっぱいカニみてていいよ〜」と一緒になってカニを触っていたところ、脚を自切するハプニング!
しかし、「脚取れちゃった!」「カニも痛いの?」と話が膨らみ、「危ないと思ったら、決まったところから勝手に切れるんだよ」「脱皮したらまた生えてくるよ」と自切の説明もできました。ゴメンねカニさん。
最終的には、子供たちがカニを持ってお腹側を見せ、お母さんが一生懸命色塗りするという面白い構図に。
終了後にお話を伺うと、お母さんが「実は私がこういうの好きで。SNSフォローしてます!」との事。親子でお楽しみいただけて良かったです。

・ニクニクする〜
お腹側を覗くため、みんな手にカニを乗せたり、指でそっと掴んでひっくり返したりしていました。わざわざお腹を覗く手間をかけないように、写真を用意するべきだったな〜と反省していますが、かえってその不便さがカニを良く観察するきっかけにもなって良かったのかも。
カニは手のひらにのせると、砂の中に潜ろうとして、指の間に体を突っ込んできます。それがすごくくすぐったく、子供たちはみんなケラケラ笑っていました。なんて尊い時間。
1人の女の子が、カニが手の中でうごめくさまを「ニクニクする〜」と表現していました。親御さんや学習館スタッフさんはじめとする大人たちが「ニクニクするって何〜」と笑い、それが可笑しかったのかしきりにニヤニヤしながら「ニクニクするよ〜」と繰り返す女の子。彼女がまとう空気感に、この子は大物になるぞと思いました。その独特の言語感覚、大事にしてくれな。(これを書いていて、大人は子供の将来を勝手に評価しては大いに盛り上がって、当の本人の子供は置いてけぼりになっている構図をよく見るなと思った)

・大人のくせに大胆だね

両親と子供2人の4人で1セットずつ挑戦してくれた親子がいました。
子供ふたりは子供らしく(→大人の勝手な評価以下同文)、恐れを知らず大胆に色を塗り、お腹の紫を綺麗に作れていて、びっくりするくらい上手でした。かたやお母さんはうっすらうっすら色を重ね、かなり優しめの色合いでした。「ママの薄い〜」「あれ〜ほんとだ」という会話が聞こえてきたため、「だんだん力を強くしていっても大丈夫ですよ」と声を掛けたところ、「大人になるとリスクばっかり気にしてダメですね笑」とお母さん。深い…。
そんな会話の横で、誰よりも集中して黙々と塗るお父さん。ワークショップ時間終了後、家族4人の作品をそれぞれ見せてもらいましたが、お父さんの作品がいちばん濃く、はっきり、力強く発色しており、なんて大胆な…!と感心しました。それを見たお母さんと子供たち、「パパ大人のくせに大胆だね」と一言。家族みんなで塗り方に性格が出て、面白いなと思いました。その絵をお家に持ち帰って、並べて飾って見比べたりして…と勝手な想像ですが、少なからず家族のいい思い出づくりのお手伝いができたのかなと思います。

その他にも、たくさんの方にお楽しみいただき、そして誰よりも僕がいちばん楽しむことができました。子供たちと話すと本当に色々な発見があり、創作のためにもいい刺激になっています。

またワークショップやりたいな〜
おわり。

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