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(34)2024年秋、近況。マンガの章

呪術廻戦

終わっちまった呪術廻戦。最終話まで一気に読みました。
アニメリアタイの頃はあまりに話題すぎて少し距離を取っていたが、ほとぼりが冷めた頃になんとなくネトフリで観て、そのまましっかりハマった。
続きが気になる~!と騒いでいたら、ちょうど原作の完結カウントダウン企画で、全話無料公開がはじまるという。これは嬉しい。

アニメではMAPPAが手がける美麗な画面に終始感激したが、原作の漫画はこれはこれで。勢いのある描線が気持ちいい。
ほとんどセリフのないアクションシーンでは特に、芥見下々先生の画力が際立っており、息を飲む緊迫感、バトルのスピード、映画のようなドラマチックなカット割りの技術が凄まじい。

マンガは総合芸術だと誰かが言っていたが、まさにその通りだと思う。絵と文字を一定の規則で並べるだけで、ここまで出来るのか~と感動する。脚本家がシナリオを書くようにお話を作り、映画監督が画角を決めるようにコマを割り、役者が演技をするようにキャラの表情を描く。

読み終わった時にいつも思う「漫画が上手いっていいな~~」という気持ち。
僕は漫画家では無いが、漫画を読むと自分も漫画を描きたくなる。漫画が上手くなれば、大抵の創作が上手くなる気さえする。それくらい、漫画はあらゆるスキルを必要とすると思う。


漫画の教科書

「漫画」という表現形式について勉強することがマイブームなので、「Dr.マシリトの最強漫画術」を買った。
Dr.スランプやドラゴンボールを大ヒット漫画にした漫画編集者の鳥嶋和彦が、売れるジャンプ漫画の極意を論じた本。

鳥山明が手がけた表紙。絵が上手い。
特色の蛍光ピンクが映えるね

鳥嶋和彦といえば、週間少年ジャンプ編集長を経て集英社の専務取締役まで上り詰めた、トップオブマンガ編集者。ご本人もなかなかにキャラが濃く、「最強漫画術」もジャンプマンガからそのまま出てきたような文体で書き綴られる。

自著でこれくらい言えるようになりたい。

本書は、マンガの絵の描き方を説明するというより、良いマンガの条件やセオリーを文章ベースで論じるものだ。「漫画術」というタイトルからは想像できないくらい文字がびっしりで、読み始めは面食らったものの、読んでみると隅々までありがたい話ばかり。もちろんマンガの絵の引用も多いので、文章量の割には読みやすかった。仕事でモノを作っている人は皆、大いに得るものがあると思う。

以下、覚えておきたいエッセンス。個人的な印象で記述しているので、詳しくは本書を参照されたし。

  • ストーリーはとにかくわかり易くしろ。読者に説明が必要な演出、凝った設定にならないように。

  • キャラクターを立てろ。シナリオを進めるためにキャラクターを操るのではなく、魅力的な主人公が物語を勝手に動かす。

  • 編集者は最初の読者。媚びすぎてもいけないが、読者視点の分析は大いに参考にすべき。

  • 鳥山明は最初からヒットメーカーだったのではなく、Dr.マシリトの指示で渋々直しているシーンが多い。漫画家と編集者がしのぎを削ってようやく名作は生まれる。

  • 「ドラゴンボール」を丸々1話掲載して、コマ割りや演出を解説するパートが良すぎた。こういうのはいくらあっても嬉しい。

とにかく伝わりやすく、シンプルに。魅力的なキャラを作れ。独りよがりにはなるな。
お話を作る基本は分かっていたつもりでも、自分が作りたいように作ったらいい物になるし、いつか誰かが好いてくれると、信じていたい気持ちがある。しかし、トップオブ編集者に改めてこれだけハッキリ言われると、「やっぱりそうなのか~」と認めざるを得ない。

他にもたくさん感動ポイントがあった。心の底から「覚えておきたい」と思い、ノートにいろいろメモった。学生の頃よりも熱心に本を読んで勉強している実感がある。拝啓十五の君へ、これこそが真の勉強だ。


バクマン

「最強漫画術」には、ジャンプ編集部の内情もかなり詳しく記されており、バクマンの描写を引き合いにあれこれ説明されていた。

ちょうど我が家の本棚(電子書籍)には、バクマンが全巻並んでいる。デスノートと同じ、原作大場つぐみ・漫画小畑健の最強タッグの作品だし、何しろマンガを描く話ときた。教養として履修しておこうと、セールの時に衝動買いしていたのだ。1話だけ読んで、そのまま1年以上放置していたのだが。

「最強漫画術」では、惜しみなくバクマンのコマが引用されていて、中には物語上重要そうなコマも。「最強漫画術」を半分くらい読んだところで、これ盛大なネタバレくらってないか?とようやく気づき、慌てて同時進行で読み出した。

全20巻。あまり長編を読んでこなかったので途中諦めそうになったものの、ギリギリ読みきった。
普通に娯楽として面白いし、漫画ビジネスにも詳しくなって、毎話ためになるなぁと思いながら読んだ。

登場人物が(ほぼ比喩ではなく)血反吐を吐きながら不眠不休でマンガを描くシーンが何回も出てくる。物作りする人達はちゃんと寝てくれ~~~と思うし、寿命は削らないで欲しい。しかし、それほど狂わないと到達できない領域は確実に存在する。
この世は無理をおして生まれた名作ばかりだからだ。

話が逸れたので戻す。
間で大場つぐみの原作ネームと、それを小畑健な割り直したネームが差し込まれているのだが、マンガが上手すぎて度肝を抜かれた。コマ割りがあまりにも上手いし、原作を膨らませてより面白く見せる工夫をしている。ネームの時点で出来が決まっておる。はやくこれになりたい。

バクマンの主人公 亜城木夢叶は、バクマンの作者と同じ、原作の高木と作画の真城のコンビ。
役割分担の範囲はあいまいだが、ノーチのしっぽ研究所も概ね似たような体制で創作しているため、自分たちに重ねて読んでしまう部分も多かった。うちの原作(F.しっぽ)は衝動とフィーリングで作っているので、バクマンでいうとライバルの新妻エイジタイプだが。

亜城木くん達は時々ぶつかりあいながらも切磋琢磨して、作中では10年も描き続けている。同級生が合コンやら就活やら、マジョリティ人生を謳歌しているときでも、迷わずにジャンプ一番の漫画家を狙い続けた。本当に偉い。

我々は一番になるために死に物狂いの努力をする覚悟はまだないが、せめて長く続けたい。創作のやる気を出させてくれる、いい作品だった。

ピンポン

アニメを観た。

面白すぎて衝撃だった。

短いのに壮大。終わり方も完璧!

映像の面白さと動きのコミカルさ、小気味よさに驚き、調べると大好きな湯浅監督のアニメ作品で、二度驚いた。どうりで。

アニメの絵の良さ以上に、ストーリーとセリフ回しがあまりにも良い。
個人的にスポ根作品はあまり好きではなく、特に題材が卓球とあって期待せずに見始めたが、こんなにも面白くなるとは。スポ根嫌いの人にこそぜひ見て欲しい。

主人公のスマイル、親友のペコのキャラが良い。
特にペコのセリフ。

俺、高校ハネったら、ヨーロッパ行く構えよ。

我 思うにオババ。 最近のチョコレートときたら、軟弱の極みだよね。

なんて強烈なセリフ!
マシリト(鳥嶋和彦)の言う「魅力的なキャラクター作り」を体現したようなキャラだ。こんな台詞回しが描けたらどんなに良いか。セリフを磨く練習をしよう…

遅ればせながら、松本大洋作品を意識し始めた。「東京ヒゴロ」を読んで気になってはいたが、ピンポンも原作を読んでみようと思った。

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