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山登りがすきということ

小さい頃、家族で旅行に行った事がほぼないと旅のページで書いたが、何をしていたかというと近場ドライブがほぼだった。

中でも多かったのが"えびの高原"。

ただ行って帰るだけだったり、池めぐりコースを歩いたり、当時は行けた硫黄山の火口の中に行ったり。雪が降ればチェーンがなくても行けるところまで車で行き、(みなさん行けるところまで来ている方も多い。南国なので)広い路肩で雪で遊び、車のフロントにちっさな雪だるまを乗せて帰る。

家に着くまでにだんだん少しずつ溶けていくのを、楽しいような勿体ないような気持ちでみていた。

ある日例のごとく雪だるまを積んで帰る途中、山道でカーブに差し掛かったところで対向車とすれ違うために父がブレーキをかけ、乗せていた雪だるまが落ちてしまったことがあった。対向車に乗っていた運転手には子どもが乗っていることがわかっていたのか、すまない、という申し訳なさそうな顔で手をあげたのをはっきり今でも覚えている。もしかしたら私のあぁ!雪だるまが!という顔がみえたのかもしれない。

今でも雪が降れば小学生の姪っ子よりも私の方が余程喜んでいる自覚がある。

ただえびの高原にはよく行くものの、じゃあ山登り、と言うのは一度もなく、山登りらしい山登りを初めてしたのは小学五年生の確か宿泊研修で高千穂峰に登った時だった。

実を言うとどんな気持ちで登ったか、あまり覚えていない。高千穂河原までの細い道を、よくおっきなバスが通れるなぁと思った記憶はある。また、写真が残っているのでミヤマキリシマの時期だったのはわかる。写真はその時の記憶を掬い上げる手がかりになることもある。


次に登ったのも高千穂峰で、やっぱり学校行事。中学一年の宿泊研修での企画だった。こちらは結構覚えていて、高千穂河原から御鉢を通り、御池小学校の方へ降りた。御鉢は登っている途中下を見ると恐ろしく、怖がりながら登った。御池側へ降りる時、木の根でぐりっと捻挫してしまい、夜なかなかに腫れた。

そんな感じで今思い返してみると、山登り自体そこまでプラスの記憶がある訳ではないのに何故か今、体力は怪しいが山登りが好きな自分がいる。不思議だ。


写真を撮るようになって、綺麗なものを撮りたい、花を撮りたいと思ったところから昔よく行っていたえびの高原が浮上して、池めぐりコースを歩いているうちに大浪池に行くようになって...というのが山登りに興味を持ち出したきっかけだが(なんと言っても山は青空と緑、花が素敵)、もうひとつ小児喘息だったのも、行くようになった理由のひとつかもしれない。

小さい頃と違って坂を登っても喘息が出ない、発作のように苦しくない、喘息が出ずに運動できるのって気持ちがいいんだ、という感動。小学校の時の高千穂峰を覚えていないのも、もしかしたら苦しかったんじゃないだろうか。

と、実体験として小さい頃に登山にいい記憶があったわけではないのだが、先日、お世話になっているアウトドアショップの集まりで先生をされている方の学級通信を書くに当たってのお話を聞いていて、ひとつ思い出した記憶がある。私の中学校の担任の先生は手書きで学級通信を書かれていて、その中にはご自分で書かれたイラストもあれば、新聞にあるような四コマ漫画も載せていらした。私はその学級通信を毎回読んでいた。四コマ漫画が載っていたのを覚えているのは、当時から今に至るまで私が好きなバンドの四コマ漫画が一度載ったからであって理由が理由なのだが、何故かあと一記事、いつまでも覚えている記事がある。

何かと言うと、そんなに興味がなかったはずの山登りのお話。山登りを趣味にされている先生だったようで、韓国岳から高千穂峰(と、記憶しているけど高千穂河原だったかもしれない)まで縦走した、という話が載っていた。覚えているのはこのふたつの記事のみだが、山を続けて何個も登るの、とびっくりした覚えがあって、またそこを歩く先生の姿が想像できた。どんな素敵な景色が見えるんだろうと。

池めぐりコースや山に登るようになりそんな学級通信の記事があったなぁと思い出すことも多かった。こんなに長く覚えているのは、先述のようにえびの高原が割と昔から身近な存在であったためもあるかもしれないが、意外と当時から山登りに対して楽しそうと感じるものがあったんじゃないかと思ってしまう。

カメラから入った山登りだけど、カメラを持って山登りに行ってみようと思った元の元はもしかしたらこのひとつの学級通信なのかもしれない。

今は、噴火の影響から先生が歩いたであろうコースを辿ることは出来ないし、出来るようになったとしても新燃岳にはもう湖はないから全く同じ景色を見ることはない。でも、登ってみて感じる山登りの楽しさ、山の景色の綺麗さ、達成感は多分、先生が学級通信で生徒に教えたかったことと同じなんじゃないかなと思う。そしてきっとそれは、どの山でも感じることができるものではないかなと。

今改めて、その先生と話してみたい気もする。先生が書かれたものを20年程たった今も覚えている生徒がいますよ、しかも山登ってます、と言ったらどんな顔をされるのか。


現在は体力のないなりに山登りと写真を楽しんでいる。もう少しの体力と登るための知識を持って、気になる山に登れるように、雪のえびの高原を楽しめるようになることを当座の目標に、更に楽しめたらいいなと思っている。

山は登っているとしんどい時もあるけれど、素敵な景色と出逢えると夜眠れないほどテンションがあがる。もうひとつ、登ったという疲れがまた、心地よかったりする。


次はどこに登ってみようかな。

そこではきっとまた、素敵な景色と達成感が待っている気がする。


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