デコポン賛美
春先、果物といえばデコポンが愛おしい。皆さんよくご存じの、サイズはグレープフルーツと同じか一回り大きいくらい、ポンとこぶのついた大きいミカン。ざらっとした皮は赤みがかった橙色で、形状と相まって売り場の中でよく目立つ。
なにがいいって、その食べやすさ、剥きやすさ。
ポンとしたこぶに指をかけて、ぽきっ。ハリのある厚めの皮はオレンジを連想させるくせに実離れがよく、鮮烈で華やかな香りを漂わせながら丸くぽっかり穴が開く。夏みかん類などのように綿をむしる必要もなく、メリメリというよりペリペリとした手ごたえも小気味よい。
白い産毛をまとった房はしっとりしていて、ジョウノウという薄皮も柔らかく、そのまま食べられ手間がない。薄い皮に歯を立てると、ぷつりとかすかな音とともに瑞々しさがほとばしる。粒感がほとんどない果肉はたっぷりの果汁を秘めていて、ごくごく、まるで飲むような食べごたえ。これがまた、すごく甘いのに爽やか、華やか。
華やかな味わいや、びっくりするくらい甘い果物ってどこか圧倒されてしまう部分があるものだけど、デコポンはいくら食べても疲れない。
そして嬉しいことに、デコポンでハズレに当たったことがない。それもそのはず、デコポンとしてお店に並んでいるのは選別されたエリートなのだ。
「デコポン」は「不知火」の中で、糖度13度以上である事やクエン酸1.0以下など柑橘類のなかで唯一全国統一された基準「全国統一糖酸品質基準」を満たさなければ「デコポン」として出荷することができません。また、日園連に加盟する全国のJAのみがこの"デコポン"という商標を使用でき、加盟していない農園などでは使えません。
果物の当たりハズレに一喜一憂する身としてはこの品質保証は頼もしいかぎり。手軽な価格なのに美味しさのお墨付きって、ちょっと他では思い浮かばない。
みかんのような剥きやすさ、オレンジのような甘みの強さ。
ちょっとだけ困るのは、美味しすぎてついつい1個ぺろりと食べちゃうところ。
あっ、もう買い置きがない。また買いに行かなくては。