空腹は最良の調味料、好奇心は出会いの種まき
人生には何通りもの初めてましてが存在するし、早い遅いは人による。
まあそんなに大げさな話じゃないのだけど、先日「月見バーガー」の初めましてを無事果たし、その人気ぶりにおおいに納得し、もう少し早く食べてみれば良かったなぁ、と己のチャレンジ精神の無さを反省した。
秋の風物詩としてもう何年も続くマクドナルドの月見バーガー。今年もそんな季節か、とテレビCMやお店のノボリを眺めつつ、いつも購入までは至らなかった。
ハンバーガーに目玉焼き。約束された組み合わせ、逆にある程度味の想像がついてしまって食指が動かなかったのだが、やけにファンが多いのが気になっていた。王道なのはわかるのだけど、季節限定だから話題になるのもわかるのだけど、それにしてはラブコールが熱烈だ。
はやりすたりの目まぐるしい現代社会、飽きもせず根強く支持される理由とは。
今年、とうとう食べてみた。
秋晴れなのでテイクアウトでお願いし、クラフト紙の紙袋とアイスコーヒーをそれぞれ両手に持って木陰へ移動。気持ちいい風が吹いている。晴れ晴れとした天気にピクニック気分でぱくつくお昼ご飯。なんとなく月見バーガーにふさわしく思えた。
袋をのぞきこむと外気に負けない揚げ油のジャンクな香り。お供のポテトは我慢できずにLサイズ。急に空腹を思い出し、いそいそと付け取り出すと見慣れぬ青い包み紙。あぁ、夜空をイメージしているのかな。くしゃくしゃめくってご対面。目につくのは飛び出たベーコンのパステルピンク。本命の卵は、おお、結構厚みがある。てのひらに熱気をを感じながら、いざ一口。
わふっ!とふわふわしたバンズの次に感じたのはスモークの香りとむちっとした弾力。ベーコンが結構主張する。ぐぐっと顎の力を強めると月見たるゆえんの卵に行き当たった。
うわ、ぷるっぷる。ふわっふわ。
まず白身に感服した。そうか、完全に思い違いをしていたな。卵トッピングといえば卵黄をソース代わりにコクを足すものだとばかり思っていたけど、これは白身を立派な具の一つに仕立てている。
ぷるん、ぷるるんっ。厚みのある白身の層、蒸したようなぷるぷる、ほろほろと崩れる黄身。すごい。白身はこんなにぷるぷる柔らかいのに、黄身は固ゆでの塩梅だ。
うん、確かにこれは自分で再現できるってものじゃない。ここまでうまく焼け、茹で?蒸し?調理できない。心なしプレーンなハンバーガーよりバンズも柔らかい気がするし。
でもまあ、思い描いていた味だなぁ。
納得したような物足りないような気持ちで、もふ、と大きく頬張った次の一口。
舌に広がるトロっとした塩気。濃厚なソースがぐっと味に深みを与えている。
あっ。急にピントが合ったみたいだった。
これだ。オーロラソース、オーロラソースが決め手だったのか。
ぷるぷるの白身の淡白さとオーロラソースの塩気とコクがいつものハンバーガーの印象をガラッと変えている。いささか強く感じたベーコンまですっかり取り込み調和させてしまった。
うーん、おいしい。 組合せの妙というやつだ。
ふわふわのバンズと相まって完成度がすごく高い。個人的にはもう少しソース増量だと嬉しいけれど、そうするとしょっぱくなるんだろうか。全体に薄く塗り広げるとか?
わふっ。ふわふわでぷるぷるのハンバーガーの合間に揚げたてポテトをつまむ。
しゃくしゃく。しゃくしゃく。あっ、セットだとポテトのしょっぱさが月見バーガーを引き立ててちょうどいい。全体的に柔らかなバーガーにカリカリホクホクのポテトも非常に合う。ここにもまた組み合わせの妙だ。ハンバーガーの構成要素を調和させるだけでなく、セットのバランスも秀でている。
気になっていたけれど踏み出してこなかったお店やメニュー、新発見が最近とても面白い。
それに次の機会があるのかどうか、誰にもわからない世情だものね。