ゼロ年代なんて知らない『ライト・ノベル』滝本竜彦
昨日読んだ滝本竜彦さんの『ライト・ノベル』がすごく好きだったのでノートにも感想を載せます。
あらすじ(公式ホームページより)
「こんにちはーにゃ!」―貴重な青春を無難に過ごすだけの高校生・ふみひろの前に出現した光のゲート。そこを潜り抜け出てきたのは、猫耳やしっぽを持つ美しい女の子だった。以来ふみひろの前には、美少女という名の天使たちが次々と現れる。普通の少年に突然訪れるハーレムな日常。そこに隠された驚くべき世界の真実とは―!?
感想
滝本竜彦。この作家さんの名前は僕にとってとてつもなく特別なものです。中学三年生の頃、今から7年前に「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」を読み、そこから「NHKにようこそ!」「僕のエア」「超人計画」そして「ムーの少年」という順番で著作を読みました。多分全てを読み終わったのは高校二年生の時。間違いなく僕の青春であり、鬱屈とした青春感情を全身で感じた作品でした。ゼロ年代なんて知らない僕が「ゼロ年代」を感じたのが滝本竜彦さんという作家さんであり、その作品でした。
さて、今作は僕の十代に鮮烈かつ絶大な印象を与えた作品より少し大人びた滝本竜彦さんの作品という印象でした。明確な敵はいない、死にたくならない、主人公を全肯定する女の子はいない、日常の中の光を手に入れようとするものでした。
ふみひろは普通の高校生です。でも、ミーニャとの出会いで変わっていきます。幼馴染の耶麻川はカジュアルなセックスを部室でするようになり、母親は実はふみひろを恋人にするために処女懐胎して育てあげ毎日セックスを迫るようになり、エリスはハーブを育てる謎の女の子で、メタトンは機械のような動きをする不思議な女の子で…そんな女性たちがふみひろの日常をかき乱していきます。
その背後にあるのは闇の迷宮を始めとしたオカルトとも魔術的ともとれる存在。世界の真実と深く結びついたそれは物語の中で読み手に問うように様々な問題を投げかけては変わらないふみひろの等身大の高校生活に戻っていきます。あるんだけどない。ないんだけどある。そんな世界がこの物語を魅力的に輝かせていました。
一見すると断章のようでまとまりのない物語も最後まで読めば綺麗にまとまっていて、ふみひろの物語であることがわかります。滝本竜彦さんの作品を読んでいるという高揚感がラストでマックスになるこの瞬間は最高の読書体験と言えるでしょう。
平成が終わる前にまさか滝本竜彦さんの作品が読めるとは、二十代になって、大学を卒業する前に、まさか滝本竜彦さんの作品が読めるとは思えませんでした。青春でした。この作品は本当に青春でした。