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自分の気持ちを歌いたいの

歌え!ロレッタ 愛のために(1980/アメリカ)
監督:マイケル・アプテッド
出演:シシー・スペイセク トミー・リー・ジョーンズ ビヴァリー・ダンジェロ

家事や育児の合間に歌を作り、それを子どもたちに聴かせる。生活の中から生まれた歌は子守歌であり、労働歌であり、愛の歌。

名曲というものは、そんなリアリティの中から生まれる。

独学で作詞作曲して演奏までこなし、のちカントリーの女王と呼ばれた実在の歌手ロレッタ・リン。出会ったばかりの男性と13歳で結婚した彼女は、もともと音楽を聴くのは大好きだったが、ひょんなことから自分も歌ってみたら歌えた。

そんな軽やかさで歌手になる。ちなみに主演女優の歌声は、吹き替えなしだという。

彼女の歌は身近な愛情や葛藤をモチーフにしているのが特徴で、6人の子供を産んだ体験から避妊を訴えたり、夫の浮気に対する怒りを込めるなど、リアルな女心を歌詞に乗せる。そのオリジナリティが面白い。

しかし、大スターになった彼女は忙殺されるあまり、神経をすり減らしてしまう。

彼女の才能を見出し、業界に必死で売り込んでくれたのは、粗野で不器用な夫だった。

妻を愛しながらも自分の居場所を見つけられない彼と、成功の陰で孤独にさいなまされる彼女。そんな複雑な夫婦関係が、破綻と再生の間を揺れ動きながらどこに着地するのか。

緊張感のある展開なのにどこか呑気な空気が漂っているのは、80年代の映画だからだろう。歌は人生だと教えてくれる作品。


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