食欲減退
スウィーニー・トッド(2007/アメリカ)
監督:ティム・バートン
出演:ジョニー・デップ ヘレナ・ボナム=カーター
イギリスでは古くから小説や舞台の題材にされてきた猟奇殺人鬼スウィーニー・トッド。
その知名度は、日本で言うと「石川五右衛門」みたいなものか。以前ベン・キングズレーがトッドを演じたこともあり、日本では宮本亜門が市村正親&大竹しのぶで再舞台化。作家にとってスウィーニー・トッドは、どうやらかなりそそられるモチーフらしい。
とにかくものすごい出血量である。凶器がカミソリってとこが怖い。痛い。絵になる。
しかし、パイはとことんまずそうで幸せな人は一人も登場しないが、歌のメロディが朗らかなので陰惨なのにどこかノーテンキ。
「もったいないから人肉でパイを作ろう。一石二鳥だしね♪」と暗い顔して歌う2人が面白かったのは、私だけ?次々と喉を切られて地下に放り込まれる死体もだんだんコミカルに見えてくる。さすがティム・バートンだ。
ジョニー・デップが達者なのは予想通りだが、今回はヘレナ・ボナム=カーターのうまさを再認識。そして、アラン・リックマン(ファンです)の存在感あってこその成功であろう。
悪役バンザイ!
いのちの食べかた(2005/オーストリア、ドイツ)
監督:ニコラウス・ゲイハルター
「かもめ食堂」以降「食堂かたつむり」だの「南極料理人」だの、ストーリーよりもおいしそうな料理が話題になる映画が流行っているが、 このドキュメンタリーを見て、命を奪い、それを食らうことが一体どういうことなのかをたまには思い出した方がいい。
淡々と屠殺する人。
淡々と屠殺される家畜。
そこには何の感情もなく、プロフェッショナルに徹している信念や情熱も伝わってこない。
仕事だからやっている。まさにザ・仕事。
しかしそれよりも衝撃的だったのは、彼らの個食シーンである。
食べる楽しみ?喜び?何それ?生きていくのにそんなもんが必要なの?
食材を世に送り出している彼らのまずそうな食事風景からは、そんな声が聞こえてきそうだった。
すごいもんを見たな~という感じ。しかしこのシーンによって、この作品により深みが出ているのは確か。