外の世界を見たいのよ
ストックホルムでワルツを
監督:ペール・フライ(2013/スウェーデン)
出演:エッダ・マグナソン スペリル・グドナソン
芝居のセリフだって、その土地の言葉でしゃべると気持ちが伝わるものだ。
これは「自分にしか歌えない歌」を模索し続けたスウェーデン人女性歌手の実話である。
電話交換手の仕事をしながらジャズクラブで歌う彼女は、「世界的な歌手になる」という夢を鼻で笑われたり、父親からは母親失格だとなじられたり。
そう。時は1950年代。そして彼女はシングルマザー。歌手としての成功だけでなく育児と仕事の両立にも悩みながら、それでも道を切り拓こうともがく女性は珍しかったはず。一体どんな情熱が彼女を突き動かしているのだろう。
大きなチャンスを逃してしまったことで、彼女が思いついたアイデアは、母国語であるスウェーデン語でジャズを歌うことだった。
そんな風に既成概念を打ち破ろうとするあたりは大胆な冒険家のようだが、彼女にはもはや迷ったり怖気づいたりしているヒマなどなかったのかもしれない。
どんな人でも全てを手に入れることはできない。でも、彼女が自分勝手でワガママな母親になるのか、それとも夢を追い続ける素敵な母親になるのか、それはやり方次第だ。
現代にも通じる女性ならではの葛藤に共感し、物語を彩るスタンダードジャズにワクワクする。
北欧デザインのインテリアやファッションもオシャレなので、北欧的な透明感と軽やかさも楽しめる作品である。